奥多摩登山のベストシーズンと言えば、春と秋となるが、四季によってさまざまな表情を見せる山域は、それぞれの楽しみ方があり。
ここでは、季節ごとの楽しみ方・見どころと、読者の投稿による季節ごとの奥多摩の表情を紹介する。
奥多摩で春の訪れを告げるものとしては、スミレの開花。3月中旬には奥多摩むかしみちや、林道の法面の日当たりの良い場所で咲き始める。奥多摩はスミレの種類の多い場所で、50種類以上のスミレが、6月の初旬まで見ることができる。
春の訪れを山中でも感じるようになるのは4月に入ってからで、サクラの季節は都心からは2週間から1ヶ月遅れとなる4月初旬から。奥多摩駅周辺を皮切りに、稜線を駆け上がる。奥多摩の山中ではサクラが群生する場所は少ないが、さまざまな種類のサクラが各所に点在し、5月いっぱい見かけることができる。
また御前山のカタクリの群落は有名で、4月中旬から下旬にかけて、可憐な花が登山道脇を彩る。
ツツジは4月中旬にはミツバツツジが、5月上旬にはシロヤシオが咲き、夏に差し掛かる6月初旬はツツジの季節となる。奥多摩では各所にツツジの花を見ることはできるが、七ツ石山付近・石尾根にある「千本ツツジ」はとくに有名だ。
奥多摩の夏は暑く厳しいので、登山には適さない時期である。標高2000mを超える雲取山でも、かなりの暑さを感じる。
夏の奥多摩で涼しさを感じながら歩けるのは沢沿いの登山道で、百尋ノ滝、栃寄大滝、三ツ釜の滝など、滝めぐりの登山・ハイキングが気持ちが良い。
また、夏季の登山の楽しみとしては、アジサイの種類と花数が豊富なことだ。6月〜7月の花季は、たくさんのアジサイを楽しむことができる。
なお、夏の奥多摩は羽虫の数も多いので、虫刺されには十分に注意したい。アキアカネ(赤とんぼ)が稜線に上がってくる8月になると、虫は一気に少なくなる。
8月中旬から下旬になると稜線ではマルバダケブキの花が彩る。まだ日の長い時期なので、山中に泊まって長く歩く旅をするには良い時期だ。
秋は奥多摩が最も賑やかで美しい季節となる。山麓では植林が多いので、自然林の多い稜線付近まで上がると、より多く楽しめるだろう。
稜線はもちろん、登山道や谷筋にも、カエデやブナなどの樹木は多くあり、登山道沿いで赤や黄色の紅葉が楽しめ、10月下旬が見頃となる。また、三頭山付近・都民の森は自然林が多く残り、都内有数の紅葉スポットとして知られる。
雲取山では、稜線沿いの樹木は多くがカラマツで、とくに七ツ石山〜雲取山間の登山道はカラマツの黄金色の中の登山となる。カラマツの紅葉の見頃は、通常より1週間程度遅れ、10月下旬からとなる。
11月に入ると、山麓でも紅葉が見頃となる。奥多摩湖に映し出される紅葉、氷川渓谷、御嶽渓谷などは観光客にも人気の紅葉スポットとなる。
12月に入ると山中では、朝の最低気温は氷点下まで下がるようになり、登山者・ハイカーの姿もぐっと減ってくる。
奥多摩は降雪はあるが、深く積もることは少ない。それでも標高の高い場所ではしっかりとした冬山装備が必要になる。雲取山付近や長沢背稜などでは、タイミングによってはラッセルが必要になるほど積もることもあるが、基本的には雪が深く積もるのは条件が整ったときのみだ。なお、奥多摩で最も積雪が多いのは、2月中旬から3月初旬となる。
また、まとまった雪が降ると北斜面では長く雪が残ることもあるので、標高の低い山でもアイゼンが必要になるときもある。
初冬の見どころは、シソ科の草木の枯れた茎に氷の結晶が形づくる「氷華」。また1月中旬から2月初旬は、奥多摩の滝の水が凍りつき、氷瀑をみることができる。しっかりとした冬山装備を携行して、冬の風物詩を見るには良いだろう。また沢沿いの道では、木の枝に氷柱が付いたりするので、冬ならではの景色が楽しめる。