奥多摩ナビ - みんなが楽しめる東京の奥座敷の山

奥多摩の山々にはどんな魅力があるのだろうか?
地形や歴史などの特徴を知ると共に、魅力や注意点などをお伝えしよう。

取材協力:奥多摩ビジターセンター

奥多摩ってどんなところ?
多摩川に削られて作られた、急峻な山々

関東平野の西端、秩父多摩甲斐国立公園内に位置する奥多摩は、東京都最高峰の雲取山などをを中心に、標高1000〜2000mの山が連なる山岳地帯だ。

火山の多い日本において、火山活動によってできた山は1つもなく、主に花崗岩や石灰岩によってできている。堆積した岩が、多摩川によって削られて現在の地形が形成されている。

奥多摩の山々の特徴を一言で言うと「急峻」。川の流れによって削られた山麓部分はとくに急峻で、登山をする場合は「登山口からいきなり急登」となる。

こうした地形のため、山麓付近に切り立った岩場が多く、クライマーにも人気の山域となっている。

古くから人が住み着いた形跡はあり、縄文時代の遺跡も数多く出土しているが、農耕に適した場所が少ないため、本格的に定住したのは奈良時代以降。江戸時代には幕府の直轄林となり、鷹狩に使う鷹の巣を保護する山林として、木材の産地として、また石灰岩の産地として栄えた歴史も持っている。

奥多摩の様子が現在の姿へとなったのは明治時代に入ってからだ。東京都の水源林としての役割を担うようになったことが大きく、森林整備が行われたこともあって様相は変わった。かつて存在した広葉樹の原生林は、木材として利用できるスギやヒノキ、カラマツなどの植林と変わり、自然林が残るのは標高の高いところが中心。

そのため稜線まで出るとミズナラやブナなどの植生が増えてくるので、新緑や紅葉を楽しむなら稜線歩きが楽しい。山は全体的に木に囲まれ、展望が楽しめる箇所は少ないが、複雑な地形と豊富な植生を楽しみながらの登山が楽しめる。

奥多摩の場所は、どこからどこまで?

「奥多摩」と言われる山域は非常に広大で、どこからどこまでが奥多摩という線引は非常に難しい。一般的に奥秩父と呼ばれる瑞牆・金峰山や、大菩薩嶺方面まで山並みは連なっているので、これらも含めて奥多摩と呼ばれることもあり、明確に線引きできるものではない。

ただ、多摩川の流域=奥多摩という考え方が一般的で、青梅あたりから高水三山を経て雲取山、さらには笠取山あたりまで。南側は御岳山・大岳山を超えて、多摩川水系の支流の一つである秋川流域となる檜原村の山々、笹尾根あたりまでを含んだ山域という考え方が一般的だ。

登山地としての奥多摩
都心からのアクセスは抜群、バス路線も多い

JR青梅線に乗れば、新宿から奥多摩駅までは2時間弱で到着するアクセスの良さも手伝って、首都圏在住の登山愛好者を中心に多くの登山者で賑わう。

またバス路線も充実しているうえに、週末となると増発便も多く出るので、公共交通期間を利用しての登山は非常に便利な山域だ。

一方、マイカーでの登山には適しているとは言えない。登山者用に広い駐車場を整備している場所もあるが、週末などはかなり混み合うことが多い。青梅街道沿いには観光用の駐車場も整備されているが、場所によっては長時間駐車する登山者は歓迎されない場所も多いので注意が必要だ。

マイカー登山者は、青梅街道沿いにある広い駐車場とバス路線を組み合わせて利用することをお勧めしている。

なお、街道沿いにある路肩や、小さな駐車スペースなどに駐車しての登山は厳禁だ。

登山適期は春と秋。冬は雪山入門に適した場所

奥多摩での登山の適期となると、春と秋になる。雪の消える4月初旬以降から梅雨前、そして雲取山頂付近で紅葉が始まる10月初旬から山麓で紅葉が終了する12月初旬が登山のベストシーズンとなる。

夏は標高2000mを超える場所でもかなり暑さが厳しいので、暑さ対策には十分に注意が必要だ。

冬は雪が深く積もるケースは少ないが、1月や2月にまとまった雪が降れば、標高の高い場所では長く積雪が残る。このため、雪が降った直後などを中心に、雪山の入門用の山として登られるケースも多い。

基本的には雪が深く積もるのは条件が整ったときのみだが、気温は氷点下10℃以下になるので、雪対策・凍結対策は十分に行う必要がある。

なお、奥多摩で登山を行う場合は、基本的には日帰りの登山が中心となる。山中で宿泊できる場所は、御岳山の宿坊と、雲取山周辺の4箇所の山小屋(雲取山荘、奥多摩小屋、七ツ石小屋、三条の湯)および、それぞれの幕営地のみとなっている。

避難小屋は各所に整備されているが、避難小屋での宿泊を前提とした登山は推奨していない。避難小屋は、あくまで緊急時の避難場所としての利用を対象としている。

奥多摩の山で安全に登山をするために

先に述べたように、奥多摩の山は急峻で、とくに山麓に行けば行くほど急峻な地形となる場所が多い。登山口からいきなり急登が始まる事が多く、体力的に厳しい印象を与えることも多い。

そのため、スタート直後からコースタイム的につまづくケースが多い。その遅れを取り戻そうとして、さらに体力消耗するケースがある。計画を立てるときは、余裕を持った行動はもちろんだが、そうした特徴も加味しておきたい。

こうした地形的な特徴は、下山時の注意点にも当てはまり、最も疲労がたまる下山目前に急な下り坂が待っていることになる。下山直前の怪我は多いので、十分に注意したい。

また、山麓は人工林で木が密集しているので、日が差し込まず山麓ほど暗く感じる。このため夕刻が迫るのが早く感じる。奥多摩のバス路線は生活用のバスでもあるので、遅くまで動いているケースも多いが、遅い時間のバスに安心することなく、早めに下山して、奥多摩の温泉やグルメなどを、楽しんで欲しい。

網の目のように広がる登山道。地図にない道にも注意

また、奥多摩の山の特徴のひとつに、「網の目のように広がる登山道」というものがある。このため、予定とは違う場所に降りてきてしまった、どこに下山したのかわからなくなってしまった、最悪のケースでは道迷い遭難ということになる。

また、「登山道ではない道」が多いのも特徴だ。奥多摩の山々には、林業用の道、電力や水道局施設用の道、さらには沢登りなどのバリエーションルートに行く人が通る道やけもの道など、登山地図には掲載されていないが、「いかにも通れそう」な道は数多く存在する。

尾根が入り組んだ複雑な地形に加え、樹林帯が多く見通しがきかない箇所が多いのも、迷いやすくする原因でもある。

奥多摩に多く行く登山者はこんな経験がないだろうか? 木の枝に赤いビニ-ルテープが巻いてあり、これについていったら迷ってしまった。樹木が少ない場所でどこでも歩ける場所だったので、適当に歩いていたら迷ってしまったなど・・・。

奥多摩の登山道にあるテープは、アルプスなどの赤ペンキなどの印と違って、登山者を誘導するものであるとは限らない。林業や電力関係の作業の印であったり、バリエーションルートに入るための入口の目印として付けた印だったりなど、登山者を誘導するものではないケースが多い。

登山地図やコンパス、その技術は必須。そして赤テープなどの目印ではなく、地図とコンパスと、自分を信じて歩くことが大切となる。

奥多摩の情報共有の拠点、奥多摩ビジターセンターを利用しよう!

■奥多摩ビジターセンター
TEL:0428-83-2037

奥多摩駅から徒歩2分に位置する奥多摩ビジターセンターでは、登山に関する情報を、数多く発信している。

早朝から行動する登山者は、朝にビジターセンタに立ち寄るのは難しいが、下山後に立ち寄るのも良いだろう。

なお、奥多摩ビジターセンターでは現在、情報共有の拠点としての役割を目指し、登山者からの情報提供を呼びかけている。登山道の崩れや看板などの破損、またクマの目撃情報やスズメバチの巣の情報などの情報は、ぜひ寄せて欲しいとのこと。情報は電話での問い合わせにも応じている。

なお、寄せられた情報は確認ののちに、重要な情報についてはホームページなどで順次発表しているので、登山前はぜひチェックしておきたい。