富士山で感じた山への想い。就職活動の真っ只中に取った行動は
▲北アルプス・双六岳で約50日のアルバイトを経験した挾間さん。双六小屋から双六岳バックに記念撮影。
山小屋で働くスタッフの登山の知識や経験はさまざまだが、「経験なし」で行く人も少ないながらいる。今回紹介する挾間さんは、「知識も経験もなし」でアルバイトを始めた一人だ。
挾間さんが「山小屋で働いてみよう」と考えるキッカケとなったのは前年の夏に体験した富士登山からだ。友人が体調を崩したことで8合目で断念となったものの、そこで魅せられた山の風、空、雲の姿は、挾間さんに大きな影響を与えた。
当時大学3年生、そんな夏が終わると「就職活動」という厳しい現実が待っていた。挾間さんも当然、周囲の仲間たちと同じように活動開始したが、心のなかに引っかかっていたのが富士登山の経験だった。「あんな高いところに住んでみたい」、という思いは日々膨らむばかりだった。そんなことを考えているうちに思いついたのは「山小屋で働く」ということだ。山小屋で働けば、高いところに住むことが出来る、そう考えた挾間さんの行動は早かった。
インターネットで検索して、たどり着いてのが双六小屋だった。双六小屋に決めたのは実に簡単な理由で、「ホームページの写真がきれいだった」というのもあったが、最大の理由は「双六岳の写真が平たい感じで、初心者の私でも大丈夫なような気がした」ということだ。
挾間さんの当時の山の知識というのは、ほぼ皆無に等しかったという。双六小屋が北アルプスにある知識は仕入れたが、北アルプスに登ることの大変さなどはまったくわかっていなかった。当然、双六岳の優しい山容とのギャップなど知らなかった。
▲双六小屋のスタッフと。一番右が挾間さん
7月に山に行くまでに就職先を決めるぞ! と意気込んだものの時代は「超」氷河期。内定をもらって、気持よい気持ちで山に入るはずだった予定は変わって内定のないままで行くことになってしまった。それでも「山で働くことのほうが魅力的で、就職活動はどうでも良くなっていました(笑)」と、スッキリした気持ちで双六小屋に向かった。