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特集:映画「アイガー北壁」を10倍楽しく見る方法
今の時代にアイガー北壁に挑戦するとしたら? 命がけとなるのは当然だが、当時よりはずいぶん楽になっているはずだ。その理由のひとつは登山道具の進化にある。当時の登山道具と今の登山道具を比較することで、当時の登攀事情が見えてくるはずだ。
■登山装備、今と昔ではこんなに違う!
▲映画の中で実際に仕様された、当時の登攀用具。登山に精通している人であれば、その貧弱さがわかるはず
『アイガー北壁』を見るとき、ぜひ注目してほしいのが登攀用具だ。リアリティを追求するため、映画では1930年代の登山装備を忠実に再現している(右写真参照)。では、昔と今とでは、登山装備はどれだけ変化しているのだろうか。1938年(映画の舞台となった年の2年後)にアイガー北壁を初登攀したハインリッヒ・ハラーによる『白い蜘蛛』を紐解きながら見ていこう。
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■ロープ(ザイル)
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「30メートルザイルを2本結んで、急な断層を越えて第二氷田まで懸垂下降をする。ザイルが抜き取れない。それはまだ麻縄の時代で、濡れると針金のように硬直してしまう」(『白い蜘蛛』より)。
クライマー同士が体を結び合い、お互いの命を託すロープ(ザイル)。現在ではナイロン製で凍ったりすることはないが、1930年代当時は麻のロープを使用。雨や雪で濡れて、その後の気温低下によって凍ってしまうと、まさに“針金”のようになり、クライマーを悩ませた。 |
■ザック
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現在の登山用のザックは、素材に特殊加工されたナイロン生地を使用したり、背負いやすさを追求したハーネスシステムやフレーム構造を搭載したりと、さまざまなテクノロジーが結集されている。
1930年代はどうか。まだナイロン製のザックが登場する前で、素材には帆布(カンヴァス地)や革などの天然素材を使用し、構造も極めてシンプルだった。 |
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■靴・アイゼン
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現在では雪山や雪壁、氷壁の登攀に不可欠なアイゼン。しかし、1930年代当時は必ずしもマストアイテムとして見なされていなかった。
「ご両人は最近話題の12本爪のアイゼンを持っている。われわれはといえば、フリッツのは10本爪だし、私は何も持っていない。(中略)アイゼンの一組はかなり重い。だからアイゼンを諦めれば、その分だけ他の装備や食糧を持参することができると考えたのだ」(同上)。映画『アイガー北壁』でも、4人ともアイゼンなしで登っている。 では、アイゼンなしで、どのように雪や氷の壁を登ったのか。ひとつには、「私の鋲靴はグラーツで作らせた鉤爪が鋲打ちされていた」(同上)とあるように、靴底に鉄製の鋲を打ちつけることで滑り止めにしていたのだ。 また、ピッケルなどで氷を砕いてホールドをひとつひとつ刻みながら登る「カッティング」が一般的な雪壁、氷壁の登攀の方法だった。 |
■ウェア類
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今と昔では、ウェア類の進化も著しい。ウェアの進化はすなわち素材の進化である。
1930年代は、化学繊維が普及する以前で、当然、綿や絹、毛などの天然繊維が使用されていた。アンダーウェアにはウール素材、防寒着には中綿の入ったキルティングやウールセーターであった。 また、「彼のゴム製のオーバーズボンは裂けて、登山ズボンにまつわっていた」(同上)とあるように、アウターウェアでは天然繊維以外の素材が使われていたようだ。ただ、過酷な登攀をするには、十分な機能を備えているわけではなかった。 現在では、アウターウェアやレインウェアには防水透湿性、防風性、防寒性を兼ね備えたゴアテックスなどの素材が使用されたり、アンダーウェアには速乾性を備えたポリエステル繊維が使用されたりと、機能性に優れたさまざまな化学繊維が開発され、登山の快適性・安全性を高めてくれている。 こうした最先端のウェアが肉体にかかる負担を軽減し、より困難な登山の実践をサポートしてくれている。 |
こうして今と昔の装備を比較してみると、「今の装備は、快適性、機能性に優れて、登山者はかなり装備に助けられているな」と改めて気付かされる一方で、機能的に劣る装備を使いながらも巨大な壁に挑み続けた昔のクライマーたちは、優れた技術と強靭な体力を持ち、そして何より精神的にも相当強かったと想像できる。
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