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HOME > 特集:映画「アイガー北壁」を10倍楽しく見る方法
 アルパインクライミングを知らない人にとって、最大の疑問はきっと、「なんでわざわざこんなキツイことをやるんだろう?」ということではないだろうか。
 そこで現役のアルパインクライマーであり、日本人として初めてピオレドール(※1)を受賞するなど、世界の登山界で注目を集めている「Giri Giri Boys」(※2)の佐藤裕介氏と天野和明氏に話を聞く。困難な登攀に挑戦し続ける“ホンモノ”のアルパインクライマーが語る「山に登る理由」とは?
■クライミングの楽しさは麻薬的? ボクたちが挑み続けるわけ
▲Giri Giri Boysの2人。左が天野和明氏、右が佐藤裕介氏。

――お二人はなぜ困難なクライミングを実践し続けるのですか?

佐藤 僕が山をやるのは、自分の人生を充実させるためです。技術や経験を徐々に積み重ねていって、自分ができる限界を上げていきたい。限界を上げていくことで、未知なるものに出会えます。未知とは、技術的に未知ということもあるし、誰も触ったことのない壁に取り付くという地域的、ルート的未知ということでもあります。
僕は、そういう“未知なるもの”に触れていくことが、好きなんです。そうすることで、僕はドキドキするし、僕の人生はより素晴らしいものになっていくんじゃないかと思っています。僕はいつもドキドキしていたいんです。で、僕が今いちばんドキドキできるのが、アルパインクライミングなんです。

天野 理由はシンプルですよ。楽しいからです。今、自分がいちばん楽しいと思えることがクライミングなんです。だから、俺個人としては、もしこれから先に登山よりも楽しいことに出会えたら、登山をやめてそっちの方をやってもいいと思っています。ただ、今は何よりもクライミングが楽しいんです。

佐藤 物事の楽しさって、きっとやりこまないとわからないと思います。だから、天野さんが言うようにほかのことを「登山よりも楽しい!」と感じるには、今僕たちがクライミングにかけている以上の時間と情熱を傾けないと。そこまでやってはじめて、その行為の本質が見えてきて、本当の楽しさが分かると思うんです。その意味では、クライミング以上に楽しいことは、今の僕らにはないです(笑)。

天野 たしかに、いろいろスポーツがある中で、クライミングは異質というか。最近スキーをしていて、パウダーを滑っていると超楽しいんですけど、楽しさの質がぜんぜん違いますよね。

――何が違うんですか?

天野 何だろう……クライミングの楽しさは麻薬的というか。それと、やりきったあとの達成感が、まったく違うんでしょうね。

佐藤 ためて、ためて、出す、みたいな感じですよね。

天野 ただ、自分たちが特別なことをやっているとは、ぜんぜん思っていないんです。謙遜でも何でもなく。より困難なアルパインクライミングをしたいと昔から思い続けてきたからこそ、さまざまな経験を積んで、その結果だんだんとできるようになってきただけで。誰にでも可能性はあると思うんです。祐介が言うように、相応の時間と情熱を傾ける必要があるので、すぐにはできないかもしれないけど、まったくの別世界、遠い世界ではないですよ。

天野和明
1977年山梨県生まれ。明治大学山岳部出身。ローツェ無酸素登頂をはじめ、6座の8000m峰に登頂。ヨーロッパやカナダ、ヨセミテでも精力的に活動する
佐藤裕介
1979年山梨県生まれ。フリークライミングからアルパインクライミング、アイスクライミング、沢登りまでこなすオールラウンドクライマー。アラスカを舞台に数々の記録を残す


※1 ピオレドール・・・・・1991年にフランスの山岳団体と山岳雑誌が創設した賞で、その年の優れたクライミングに与えられる
※2 Giri Giri Boys・・・・・10名ほどの仲のいいアルパインクライマーが、海外登山をする際に仲間内で使っているチーム名。アラスカやヒマラヤの数々の記録により、いまや世界の山岳メディアも注目するクライミングチームに


※ 2人のインタビューは『ヤマケイJOY』2010年春号にも掲載されています。
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