高橋庄太郎の山mono語り

春の荒船山で山ごはん山行 プリムス/イータスパイダー[イワタニ・プリムス]

今月のピックアップアイテム

プリムス/イータスパイダー [イワタニ・プリムス]

好評の燃焼効率の高いイータシリーズに、待望の1~2人用モデルが登場。

価格:16,800円+税 / 出力:2.2kW/1,900kcal/h(ハイパワーガス使用時)
ガス消費量:160g/h / 燃焼時間:約84分(IP-250ガス使用時)
収納サイズ:直径16×高さ12㎝
本体重量:655g(本体、1.0L専用ポット、フタ)
セット内容:バーナー部、風防、アルミ製1.0L専用ポット(鍋)、PPボウル、
インシュレーションバッグ

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待望の1~2人用のイータが登場!

セッティングが完了し、火をつけた状態。風防の内側に火があり、熱がクッカーの内側に溜まっているのがイメージできるだろう。

セット一式。赤いものは専用クッカーの内側にぴったりとはまるボウルで、T字型のものは火をつけるための圧電点火器具だ。

朝メシはラーメン。クッカーの容量は1Lで、スープ用の水500ml、麺、そしてネギなどの具材を多めに入れて、ちょうどよいくらいの大きさ。

フタには湯切りの小穴が設けられている。この部分から蒸気も逃げるので、沸騰してもフタが外れて吹きこぼれることはない。

荒船山の遠景。まさに荒海を進む船のような姿だ。5月半ばになると岩壁の下は新緑で埋まり、非常に美しい風景となる。

どうやら、次の山行予定日も雨のようだ。いやはや、まいったな……。しかし、もう家にいるのは真っ平だ。せめて曇りになりそうな日を狙おうと予定を無理やり1日ずらし、4月後半のある日、僕はとうとう出発することにした。

目的地は群馬と長野の県境にある荒船山。標高は1422.5mとそれほど高くはないが、下から見上げる巨大な岩壁は圧巻だ。その姿は、たしかに波立つ大海原を突き進む巨大なフネのようである。

僕がこの山を選んだ理由は、山上の展望所・艫岩(ともいわ)のところにある屋根付きの休憩所の存在が大きい。たとえ雨がひどくなっても逃げ込める場所があるというわけだ。しかも登山道の途中にも大きな岩屋があり、そこでも雨をしのげる。とはいえ、本当はもう少しだけ季節が進んでから行きたかった。荒船山の山頂付近は広々とした高原になっており、とくに新緑の時期ならば雨のときに歩いても気持ちがよいからである。

今回のお供は、プリムスの「イータスパイダー」。バーナーに特殊クッカー(ポット)を組み合わせ、燃焼効率を飛躍的に上げた調理システムだ。以前から同種のイータパワー・EFというモデルはあったが、そちらは2~4人用。だが1~2人用のサイズのイータスパイダーは、ソロ山行が多い僕にはより実践的な山岳装備に違いないのである。

登山口となる内山峠の駐車場に到着したのは深夜23時。すぐに仮眠を取って、翌日は早めに起きた。そして早速、食事の準備。僕はいつも山の朝メシは温かくて塩分と水分を補給できる麺モノと決めていて、今日はチャルメラの「あんかけラーメン」だ。イータスパーダーに火をつけると、その燃焼効率はたしかにすばらしく、あっという間にお湯が沸いてしまう。慌てて麺を投入するが、そのために麺といっしょに投入しなければならなかったらしい粉末スープを入れ忘れ、あんかけといいながらあまりとろみがないラーメンに。ともあれ、このバーナーの構造と秘密については後ほど改めて紹介しよう。

メシを食うと、やっと出発。登山道にはササの葉以外に緑はほとんどなく、春の気配はまだおぼろげだ。しかし意外だったのは、途中にある水場の「一杯水」である。雪解け水で水量豊富かと思いきや、ちょろちょろとしか流れていない。ここでタンクに水を補給しようとしていたのだが、なかなか水が溜まらず苦労した。だが、雨が降っていないのはありがたい。岩屋で休憩することもなく、艫岩まで1時間ちょっとで一気に歩いてしまった。

艫岩は荒船山の象徴ともいうべき展望所だ。高低差200mの断崖絶壁の上にあり、眺望はすばらしい。ただし、晴れていればの話で……。今回はイマイチである。

ヒートエクスチェンジャーの真価

燃費のよさの秘密のひとつが、波を打ったヒートエクスチェンジャー。バーナーの熱をポットが効率よく吸収し、すばやくお湯を沸かす。

艫岩の上で、他の登山者の方に撮影してもらったカット。あと1mほど後ろに移動すれば、200mの断崖からまっさかさま、なのである。

荒船山の山塊のなかの最高地点は、標高1422.5mの経塚山。しかし、周囲はほとんど木で覆われ、あまり展望はよくない。

昼メシに作ったモツとナメコの雑炊。かなりドロっとした食事だが、あまりかき混ぜなくても調理中に焦げ付くことはなく、安心して使えた。

行動中の収納ケースでもあるインシュレーションバッグは断熱効果が高く、調理後の食事を長時間温かく保つことができる。

内側にはノンスティック加工が施してあり、焦げ付かないばかりか、調理後の後始末も簡単。ペーパーですぐに拭き取れる。

バーナーを外し、収納した状態。このままだとフタの出っ張りが個人的には気になるが、コンパクトであることは間違いない。

コーヒーで一服しようとイータスパイダーを取り出すが、朝の艫岩の付近は風がかなり強かった。だが風防をつけた通常の状態で、水500ml(水温11℃)が2分43秒ほどでお湯に。悪条件ながら、これは他のバーナーよりもスピーディーだ。その秘密はクッカーの下部につけられた「ヒートエクスチェンジャー」。細かな波を打たせた金属がバーナーの熱を吸収する作用で、通常のバーナーの倍となる約80%の燃焼効率なるという。たしかに、無風状態ならばもっと速かっただろう。なかなかすばらしいのだ。

次に僕は、実験のためにあえて風防を外して使ってみた。さて、同じ分量のお湯が、何分何十秒で沸いたのだろうか? 

その結果は……、「測定不能」。お湯が沸く以前に、なんと強風で火が消えてしまったのだ。イータスパイダーに使われているバーナーは、以前から市販されているエクスプレス・スパイダーストーブというモデルと同じもので、分離型ストーブとしては劇的に軽量な198g(本体)。だがそのままでは風には弱く、もともとなんらかの風防を併用したほうが実力を発揮するモデルなのである。だからこそイータスパイダーのような「システム」の一員となれば、軽量化を実現しながらよく活躍してくれるのだ。

ちなみに帰宅してから無風状態で実験してみると、同様に11℃、500mlの水が風防付きは1分25秒、風防なしでは1分57秒でお湯になった。この差が風防部分によって熱効率が上がったものと推察される。たとえ風の影響が関係なくても、風防が熱をクッカーの下側に溜め込む効果を発揮して、結果的に水が早く沸くようだ。大雑把な比較ではあるが、少しは参考になるだろう。

その後、僕は荒船山の最高地点である経塚山へ往復。あの断崖絶壁の上にあるとは思えないほど、平坦な草地が広々としていて気持ちがよい。僕はここに来るといつも思う。片隅でいいから、テント場があれば最高なのに……。木を切らなくても草地は広く、小さな沢もあるので水も入手できるだろう。トイレの施設はないが、携帯トイレを持参してもよい。なんとか実現しないものだろうか?

経塚山山頂でもコーヒーを飲んで、ゆったりとした時間を過ごす。平日とあって、今日はまだ誰にも会っていない。荒船山をひとり占めしているような優雅な気分だ。

だが、艫岩に戻ると他の登山者の姿が見えた。なんでも艫岩からの眺望を楽しみにしていたが、曇っているのでもう下山するとのこと。その気持ちはよくわかる。一方、僕は再びイータスパイダーを取り出して、昼食の準備。モツ、ナメコを入れて雑炊を作ろうと、お湯のなかにアルファ米も投入してグツグツと煮込んでいく。しかし非常に粘度が高いメニューながら、クッカーの内側には焦げがないのである。

熱効率は文句ない。焦げがつかないクッカーもすばらしい。だが、パッキングには頭を使わねばならない。イータスパイダーは本体以外にもボウルや圧電点火装置などのパーツが多く、もちろんガスカートリッジも必要だ。しかし1Lクッカー内にすべてを収めることはできないので、何を内部に収納して、何を外に出して別途しまうのか、いろいろと考えてみる必要がある。そもそもすべてを内部に収納しようと思うとクッカー自体を大きくしなければならず、1~2人用としては現実的ではないのだから仕方ない。

また、専用のケースは調理後のクッカーを保温できるようにと薄いパッドが入っており、インシュレーションバッグを兼ねたけっこう大きめのサイズだ。不必要だと思う人は、もっと小さくて薄手の袋に入れなおすという手もあるだろう。イータスパイダーの本体重量は655gだが、インシュレーションバッグなどを含めると約925gになり、さらに満タンの250ガスカートリッジを入れると約1300gになる。山行によっては、不必要なものを省いて軽量化することも考えたほうがよさそうだ。反面、個人的には火にかけられるクッカーは2つほしく、現状の1Lクッカーよりも少し大型か、反対に少し小型のものと組み合わせてきれいに収納できると、もっとうれしい。

あれこれとイータスパイダーのことを考えながら、内山峠へと下山していく。その結論は、調理用具として便利であることは間違いなく、個人的には「買い」であるということ。だがパッキングの方法をどうしようか、もうひとつ組み合わせられるクッカーが発売されないものかなどと、検討/期待すべきことはまだまだありそうだった。

今月の山荒船山あらふねやま

正式名称
経塚山
山域
西上州
都道府県
群馬県 長野県
標高
1,422m
2万5千図
荒船山・信濃田口
荒船山の詳しい情報はこちら >>
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高橋庄太郎

(写真:小山幸彦)

山岳 / アウトドアライター 高橋庄太郎 です。

宮城県仙台市出身。ひたすらに山、海、川に行き、山岳/アウトドア専門誌などで原稿を書いています。 特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。自然とは「旅をする場所」だと思っている僕のこだわりは、できるだけ日帰りではなく、1泊だけでもテントで眠る、ということです。