高橋庄太郎の山mono語り

晩秋の苗場山でスピード系トレッキングブーツを試す サロモン/X ULTRA MID GTX[アメアスポーツジャパン]

今月のピックアップアイテム

サロモン/X ULTRA MID GTX
[アメアスポーツジャパン]

ゴアテックス利用の軽量ミッドカット

価格:17,000円+税
重量:402g
サイズ:25.0-29.0cm
カラー:3色

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スピードハイキング系軽量ブーツと雨の相性は?

ミッドカットで表面は乾燥しやすいメッシュ素材。両足で約402gと、とても軽量だ。丸紐ながらシューズのアイレットやフックによくかかり、緩みは少ないのが好印象。

祓川コースの登山道の下部は、滑りやすい石の道が続き、ところどころ雨のためにぬかるんでいた。これよりも標高を上げると木道が現れ、歩きやすくなる。

当連載の第5回目で、僕が登った山は「斜里岳」。詳しくはバックナンバーを見ていただきたいが、結局山頂までは登らず、途中で撤退してしまった。その要因は悪天候だが、シューズのセレクトミスも大きい。雨で濡れた岩場ではあまりにも滑り、危険を感じて、それ以上進んでいく気力も失われてしまったのだ。シューズ自体はこの連載と関係なく、個人的にテストをしてみようとはいてみたのだが、大きな失敗だった。

その斜里岳で僕がはいていたのは、スピードハイキングやトレイルランニングなどに向いた某メーカーの軽量なミッドカットモデル。晴れているときには問題なく使えるが、そのときの悪天候、水に濡れた岩場というシチュエーションに耐えうるものではなかった。

じつは今回ピックアップしたサロモン「XウルトラミッドGTX」とはかなり似たタイプである。だがXウルトラミッドGTXのほうが、この手のシューズとしては堅牢な作りで、アッパーやソールもしっかりしている。見るからに安定して歩けそうなのである。

苗場山・祓川の登山口。出発の用意をしていると、小雨が降ってきた。だが、思ったよりも空は明るく、小雨といってもレインウェアは着なくてもすむ程度だ。とはいえ前日の夜も雨模様で、地面は完全に濡れている。風景を楽しむにはイマイチだが、こういうシューズをテストするには絶好の条件ともいえるだろう。

悪路にも強い秀逸なソールパターン

ひとつひとつのブロックが小さめで、接地面積も比較的少なめというソールのパターン。素材はかなり柔らかく、クッション性に優れているのが確認できた。

歩くにつれ、シューズは次第に泥まみれに。だがソールには土があまりこびりつかず、グリップ力は保たれていた。このタイプのシューズとしては、雨中でも滑りにくいようだ。

広々とした苗場山の山頂付近には池塘が点在し、のんびりとした雰囲気だ。この風景をメインに楽しむのならば、やはり初夏から夏にかけて行くべきか?

ソールのつま先とかかとの部分がせりあがり、前方へ蹴りだしやすいシルエットになっている。岩場よりは平坦な場所が得意で、スピードも出しやすい形状といえるだろう。

歩き始めて数分すると、早くもドロドロとしたぬかるみである。苗場山は古い火山とあって、標高が低い場所は粘土のような土壌だ。登山道は深くえぐられ、どこに足を置いても滑ってしまう。しかし、これはどんなブーツをはいていても確実にスリップする状況だろう。

僕はその区間を通過すると、XウルトラミッドGTXのソールを見てみた。驚くべきことに、ほとんど土の付着はない。一般的な登山靴はソールが硬く、ミゾは深くて狭い。だが、スピードハイキングなどに適したこのシューズは、ソールが柔らかく、ミゾは浅くて広い。だからミゾのあいだからはただでさえ土が落ちやすく、さらに歩いているうちにソールが何度も曲がりひねられ、ミゾに挟まっていた土も外れてしまう。なかなかよい具合だ。

ただし、濡れているとやたら滑りやすい岩や木の根の上でのグリップ力はどうだろう? 一般的にはソールが柔らかいと細かな突起をとらえきれず、とらえたとしても体の重みを支えきれずにずれてしまい、スリップしやすいものだ。

和田小屋が立つスキー場のゲレンデを通過すると、その後はちょうど岩と木の根が連続する道になった。しかも木道もたびたび登場する。劣化した木道は山中でも滑りやすいものの筆頭であり、シューズのグリップ力を試すにはピッタリなシチュエーションである。

結果からいえば、このシューズのグリップ力は、想像以上に安心できるものだった。もちろん一切滑らないというわけではなく、ソールがより硬い一般的な登山靴のほうが間違いはない。また苗場山の登山道中にある岩の性質が、磨耗して滑りやすくなるものではないということもあるだろう。それを差し引いても、この手の華奢な軽量シューズでは上出来といえるグリップ力だ。

今回は日帰り登山のため、荷物は少ない。それもあって長々と続く木道では、とくにスピードが出る。XウルトラミッドGTXはソールのつま先・かかとの部分が上にせりあがっており、平坦な場所では体を前に蹴りだしやすい。
ソールのパターンも前に進みやすい形状で、例えていうならば雪上車やスノーモービルのキャタピラーのようである。このようなソールの形状は、スピードハイキングにはたしかに向いているが、その反面、横には滑りやすいものが多い。斜里岳で僕がはいていたのは、その形状があまりにも極端で、横向きに力がかかると簡単に滑ってしまうものだった。だが、V字型のような突起をいくつも並べたXウルトラミッドGTXのソールのパターンは、横への滑りもかなり抑えている。このソールパターンは悪くなさそうだ。

順調に高度を稼ぎ、神楽ヶ峰からはいったん尾根上の鞍部へと下っていく。目の前には苗場山が現れる。相変わらず小雨がときどき降ってくるが、視界は良好だ。10月後半だというのに気温も高く、Tシャツが濡れてくるのは、雨よりも汗のせいである。

歩くスピードも自然と速くなるシューズ

追い抜いた人が到着する気配もなく、仕方がないのでセルフタイマーで記念写真を撮影。小雨は降っているが、レインウェアを着るほどではなかった。

何度か水溜りにも足をつっこんでしまったが、一切の水の浸透はなし。まずは完璧だが、あとはこの防水性がどれくらい続くのかが気になる。

内部には「オルライトソックライナー」を使用し、クッション力とドライ感を向上。たしかに蒸れが非常に少ない印象で、最後まで快適に歩くことができた。

シューズを試しつつ、写真を撮り、山頂まではちょうど2時間半。シューズの軽量さもあって、ほとんど疲れはない。途中では何名もの他の登山者を追い抜いてきたが、山頂付近の木道を散策しながら30分ほど待っていても誰も到着しない。テスト中心でとくに急ごうとしたわけではないが、計らずも"スピードハイキング"になってしまったようだ。

秋風で体が冷えてきたころ、僕は下山し始めた。僕はこのシューズの力を認めつつも、過信はせず、滑らないように慎重に進んでいく。麓のほうから白いガスが上昇してきて、いつしか苗場山の山頂付近は見えなくなっていく。あと1時間遅かったら、せっかく山頂まで行っても、周囲の秋枯れした湿原や池塘の風景は楽しめなかっただろう。

下山時は、足を地面に置く際の勢いと、高さの差が登りのとき以上になり、足にかかる衝撃が強くて、いっそう滑りやすくなる。だから下り道の濡れた石の上では、さすがに何度かは滑ってしまった。だが転倒するほどバランスを崩すことはなくて済んだのが幸いだ。

シューズはドロまみれになった。今回のように雨に濡れ、水が溜まった登山道であれば仕方がないことだ。だが内部への水濡れは一切なく、同時に蒸れもほとんど感じない。あまりに快適で、濡れと蒸れのチェックに関しては、下山までほとんど忘れていたほどである。ゴアテックスを使用したアッパーは撥水性も高く、透湿性は確実に発揮されているようだった。

今回はわずか1日履いただけだが、悪条件も充分に使えそうなことは把握できた。確認できなかったのは、耐久性である。多くの場合、このような軽量タイプはあまり使わないうちに防水性が落ちて浸水してきたり、ソールがすぐに磨耗して当初のグリップ力を発揮しなくなったりする。XウルトラミッドGTXの耐久性がいかほどなのかは、何度も繰り返してはいてみないとわからない。
とはいえ、両足で402gという軽さだ。テント泊装備の重い荷物を支えるほどの強靭さはないだろうが、日帰りや小屋泊の軽量装備であれば問題はない。登山をスピードアップ化したい人、足を中心に体への負担を減らしたい人は、試してみる価値はありそうだ。

今月の山苗場山なえばさん

苗場山
山域
三国山脈
都道府県
新潟県 長野県
標高
2,145m
2万5千図
苗場山
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高橋庄太郎

(写真:小山幸彦)

山岳 / アウトドアライター 高橋庄太郎 です。

宮城県仙台市出身。ひたすらに山、海、川に行き、山岳/アウトドア専門誌などで原稿を書いています。 特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。自然とは「旅をする場所」だと思っている僕のこだわりは、できるだけ日帰りではなく、1泊だけでもテントで眠る、ということです。