高橋庄太郎の山mono語り

厳冬期テント泊で、暖か象足にほっこり マウンテンイクイップメント/ライトライン・ダウン・ブーツ[アクシーズクイン]

今月のピックアップアイテム

マウンテンイクイップメント/
ライトライン・ダウン・ブーツ [アクシーズクイン]

600フィルパワーのロング象足

価格:16,000円+税
重量:440g
サイズ:S~L
カラー:5色

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冷え性の味方の高級象足

ふくらはぎの上までを完全に覆う、まるで長靴のようなルックス。ダウンのボリュームもたっぷりで、まったく冷たさを感じさせない。

付属のスタッフバッグに入れると、500mlペットボトルを少し太くしたくらいの収納サイズに。ダウンジャケットでいえば、中厚のものと同じくらいの体積だ。

ソール部分の素材は見た目以上に柔らかく、これだけのボリュームがあるのに、そのまま寝袋の中に入っても、あまりもたれる感じがない。

先月の連載第9回に続き、今回の話も奥秩父・大日小屋のテント場から。

昨晩の就寝時間の気温は、約マイナス12℃。たとえテント内であっても、深夜にはもっと下がっていたはずだ。だが僕は朝まで起きることもなく、熟睡できていた。しかも寝入りもスムーズだった。暖かい寝袋を準備していたことも大きいが、もうひとつの理由は、今回のテスト用に非常に保温力が高いダウンブーティを持ってきていたからだ。マウンテンイクイップメントの「ライトライン・ダウン・ブーツ」である。それを履いたまま寝たために、いつもは冷え切ってツラい足先がすぐに温まり、足元からの寒さを感じずに済んだのだ。

我が国ではその見た目から通称「象足」とも呼ばれるダウンブーティは、僕のような末端冷え性の者にとって、冬場のテント泊にはなくてはならない存在である。とはいえ、600フィルパワーの高質ダウンをたっぷりと詰め込んだ「ライトライン・ダウン・ブーツ」は、現在の日本で市販されているダウンブーティのなかでもっともボリュームがあり、人によっては標高2000m程度のキャンプ地で使うにはオーバースペックだと思うだろう。だが、僕のつま先の冷えはいつも厳しく、現在私有しているダウンブーティでは不満を感じていた。温かさの面でいえば、結局これくらいの保温力があったほうが、安心できる。

好印象だったのは、これだけのボリュームがありながら、履いたまま寝袋に入ってもそれほど邪魔には感じなかったこと。ブーティには雪上での歩きやすさを考えて、硬めのソールを張り付けているものもあり、この手のものは就寝時には使いにくい。だがこのブーティのソール部分はしなやかな起毛素材であり、就寝時に履いていても違和感が少ないのである。

雪の金峰山へアタック

そして南側には富士山。このときは思ったほど積雪は少なく、7~8合目までといったところ。このくらいの雪景色が、僕の好みではある。

廻り目平方面からの登山者もなく、山頂には誰もいない。方向指示盤の上にカメラを置き、ひとりセルフタイマーで記念撮影を行なった。

さて、寒い雪山の中でも熟睡できた僕は、ブーティをブーツに履き換え、さらにアイゼンを取り付けると、早朝から金峰山へと向かった。
昨日の入山日に引き続き、トレースはほとんどない。あったとしても数日前のかすかなものだ。一部には膝上ほどの積雪をラッセルしなければならない場所もあったが、大日岩を過ぎて次第に標高を上げるに従い、雪は硬く締まっていき、楽に歩けるようになっていく。そして森林限界を超えると、北から西、南にかけて、浅間山、八ヶ岳、南アルプス、富士山と、見渡す限りの大眺望だ。東側には目指す金峰山の山頂がそびえている。雲もほとんどなく、しかも無風! これほどすばらしいコンディションも珍しいはずだ。順調に歩き続けていくと、山頂の五丈岩がドンドン大きくなっていく。

山頂に到着すると、五丈岩の前で温かい紅茶を飲み、しばし休憩。誰もいない冬山のよさを存分に味わう。平日の山の静かな山はやはりいい。だがいつしか風が吹き始める。グローブを外していた手が急速に強張ってくる。そろそろ下山を開始しよう。

大日小屋に戻る途中でひとりの登山者とすれ違い、挨拶をかわした。登山口から日帰りでの山頂往復を考え、一気に登ってきたようだ。風はいまやかなり強く、鼻先が痛くなるほどになっている。山頂に到着するのは僕とわずか1時間程度の差だが、この登山者は非常に寒い思いをするだろう。少々気の毒になるが、引き続き青空は残っているのが幸いだ。

象足は「外履き」ではないのです…

ドローコードはふくらはぎの上、そして足首と2カ所に。これならば吹きだまりを踏みぬいても雪が浸入せず、歩行時にもズレが少ない。

雪の中に立っていても、短時間ならば問題はない。ただし素材も構造も防水性ではないので、同じ場所に長時間いれば体温で雪が溶け、浸水の恐れはある。

足裏のソール部分にはブランドロゴの形を並べた滑り止め。耐久性はもう少し使い続けてみないと判断できないが、雪上を歩いても滑りにくいことは確認できた。

張りっぱなしにしておいたテントに戻ると、アイゼンがついたブーツを脱ぎ、僕は内部に潜り込む。荷物を片づけ始める。再び履いたブーティはやはり温かく、このまま外に出てテントの撤収をすることにした。前夜もトイレに行くためにブーティのまま外を歩いていたが、夜間は低温のために雪が締まっており、雪を踏みぬくこともなく、また足元の雪が体温で溶けて濡れることもなかった。だが冬とはいえ、正午過ぎの日差しにさらされた雪面ではどうだろうか?

スノーペグを抜くためにテントまわりを歩いていると、前夜には僕の体重を支えていた雪面を踏みぬいてしまう。やはり日中の日差しで雪はかなり緩んできた。しかしこのブーティのふくらはぎ部分にはドローコードがつけられており、上から雪が入ってくることはない。ソール部分の滑り止めも効いており、踏みつけた雪が崩れても歩行に支障はない。

ただし、ブーティを脱いで裏側を見てみると、ソールの表面は夜とは異なる状況になっている。雪の付着がとても多いのだ。夜の凍りついた雪は手で払えばすぐに落ちたのだが、日中のわずかに溶けた雪はソールにこびりつき、楽には落とせない。ソールの起毛素材が、雪の水分を含んでしまうからだろう。少々厄介な問題である。このソールの素材は防水性ではなく、縫い目も防水処理はなされていない。これ以上日中の雪上で行動し続ければ、こびりついた雪はいずれ完全に溶け、内部のダウンは濡れてしまうはずだ。

そもそもこのブーティは雪が溶けるようなシチュエーションで使うことはイメージしていないだろう。昼でも厳寒の高山で使うことを想定した作りなのである。だからこそ、これだけのボリュームと保温力を持たせてあるわけで、履いたまま寝袋の中に入って眠るにも支障がないのだ。言い方を変えれば、雪が溶ける可能性がある気象条件にはあまり適さず、とくにテント外でも使う際には浸水に注意しなければならない。
とはいえ、僕のように極端に足先が冷え切ってしまう者は、少しくらい緩んだ雪であっても、温かなブーティを履きたい。短い時間ならば、テントの外でも気楽に使えるものがいい。防水性とは言わないまでも耐水性や撥水性がある素材だと、より気楽に着用できるのだが。

テントを撤収し、パッキングを完了した僕は本格的に下山し始めた。雪はますます緩み、アイゼンすら必要なくなっている。全装備を背負っているが、足取りは軽い。前日の熟睡の効果がまだ継続しているようだ。たしかに気温が暖かいときには注意して履かねばならないブーティだったが、あのように気持ちよく眠らせるだけの保温力を持っている。たとえ少々浸水の恐れがあっても、寒がりの僕にはこのようなブーティのほうが心強い。これからまだ長く続く雪山シーズン。僕の足元はいつも温かくあってほしい。

今月の山金峰山きんぷさん

金峰山
山域
奥秩父
都道府県
山梨県 長野県
標高
2,599m
2万5千図
瑞牆山・金峰山
金峰山の詳しい情報はこちら >>
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高橋庄太郎

(写真:小山幸彦)

山岳 / アウトドアライター 高橋庄太郎 です。

宮城県仙台市出身。ひたすらに山、海、川に行き、山岳/アウトドア専門誌などで原稿を書いています。 特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。自然とは「旅をする場所」だと思っている僕のこだわりは、できるだけ日帰りではなく、1泊だけでもテントで眠る、ということです。