冬の武甲山で”指が出せる”グローブ2種類をテスト WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ、G2・アルパイン・コンビ・ミット

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今月のPICK UP

アクシーズクイン/WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ [アクシーズクイン]

価格:5,500円 +税
重量:60g
サイズ:S-XL ※男女兼用
素材:GORE WINDSTOPPER、起毛トリコット、合成皮革

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MOUNTAIN EQUIPMENT/G2・アルパイン・コンビ・ミット [MOUNTAIN EQUIPMENT]

価格:9,000円 +税
重量:95g
サイズ:S-XL
素材・仕様:Pontetorto Soft Shell fabric、掌を牛革で補強、ネオプレーンリストガード、立体裁断、トリコットマイクロフリースライニング

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何かと使える「指が出せる」グローブ、チェックポイントは?

手先という繊細な部分を守るグローブ。とくに寒い時期には保温性が重要だが、厚みがあるものは行動中に暑くなりすぎることがあり、反対に薄手のものは冷たさを遮りきれないことがある。同じ身につけるものでありながら、グローブはウェア以上に選択が難しい。

今回は2つのグローブを試すべく、奥武蔵の武甲山へ。

秩父を代表する名山とされるが、現在は北斜面が石灰岩の採掘によって非常に痛々しい姿となっている。石灰岩の性質上、夏でも真っ白に見える山にさらに雪が積もり、冬季はそれほど採掘による山肌の荒廃が目立たないのがわずかな救いだ。

そんな人工的な北斜面とは異なり、西側にある一の鳥居の登山口はとても静かだ。このあたりには以前の武甲山の雰囲気が残っているのだろう。

数々のオオカミ伝説で知られる秩父地方らしく、神社の狛犬のモチーフはニホンオオカミ。その野性的で細身のシルエットは、オオカミの特徴をよくとらえている。

では、今回テストする2つのグローブを紹介しよう。ひとつは、アクシーズクインの「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」。もうひとつはマウンテンイクイップメントの「G2・アルパイン・コンビ・ミット」。以下の写真では、すべて左側が「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」、右側が「G2・アルパイン・コンビ・ミット」である。

どちらも撥水性と透湿性が高いソフトシェル素材。 「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」は親指、人差し指、中指という3本の指の先が出せ、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」はすべての指を露出でき、その上をカバーで覆う。いわばグローブとミットの中間的存在だ。必要時に指先が使いやすいだけではなく、暑さを感じるときにはクールダウンの効果を発揮し、一つ持っているとなにかと便利なタイプである。

この2つはかなり似たモデルだが、細かい部分にはもちろん違いが出ている。そのあたりをこれから述べていこう。

ちなみに、僕の手の大きさに合うのは「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」がXL、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」がLサイズだ。どちらも人差し指などが露出しているグローブなので、主に親指の長さを基準にしてサイズを選んでいる。実際、これ以下のサイズはタイトすぎて使用しにくく、これ以上のサイズは緩すぎた。そもそも「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」には、XLよりも大きいサイズはない。

グローブはサイズ感が非常に重要である。しかし、手ほど大きさや厚み、それぞれの指の長さなどに個人差がある体の部位は少なく、万人にピッタリと合うものは存在しない。僕の手は一般よりも大きめだが、指の太さは標準程度だと思われる。ともあれ、これから先、フィット感やサイズ感の話は、あくまでも僕の手を基準とした2つのグローブの比較であり、僕とは手の形状が異なるみなさんは参考程度にしていただきたい。

まずは、カバーをつけて着用した状態がこちらだ。今後も同様に左側が「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」で、いっしょに写っているウェアの袖はグリーン。右側が「G2・アルパイン・コンビ・ミット」で、ウェアの色はブルーである。

「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」のほうが細長いシルエットで、人差し指部分が長く、小指にかけて短くなり、手先の形状に沿った形状だ。だが指先全体に少々余裕が多すぎる感もあり、大きめの袋の中に指を入れているような感覚である。一方、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」は人差し指と小指の部分の長さはほぼ同じで、形状がシェイプされていない。その結果、カバーのなかで中指にはちょうどよい奥行き感があるのだが、小指部分のシルエットにはとくに無駄が出ている。だが、それ以外に無用なスペースはない。

手の平側を見ると、隙間があまり空かないのは「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」で、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」のほうはカバーが浮いている。寒気や雪が内部に入り込みにくいのは「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」のほうであろう。

カバーを外し、指先を出した状態が、以下の写真だ。どちらのグローブも親指は第一関節付近にスリットがあり、ここから指先を出せるようになっている。

先に書いたように、「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」は他に人差し指と中指が露出するが、それらの指がグローブで覆われている部分は長く、外部へ出ているのはまさに先端だけ。その点、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」はすべての指が外に出ており、しかも指の根元まで露出している。保温性でいえば「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」、道具などを取り扱う際は「G2・アルパイン・コンビ・ミット」のほうが優位だ。

指が出る部分などの縫製にも違いがある。「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」はまつり縫いをしているだけのシンプルな構造だが、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」は別の伸縮性生地を当てて、しっかりと補強している。

今回、下山後に確認してみたところ、「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」は、まつり縫いに使っている糸が綿のようにかなり毛羽立ってしまった。切れるほどではないが、強度の面では少々心配だ。しかし「G2・アルパイン・コンビ・ミット」には一切のダメージが見られない。伸縮性の素材で処理しているため、指の根元を締め付けている感じがわずかに気になるが、こちらのほうが安心して使えるのは間違いがない。

意外と気になる!? カバー不使用時の固定力

2つのグローブの全体像を確認した後、登山口を出発する。

ここから先も、左手が「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」、右手が「G2・アルパイン・コンビ・ミット」だ。

途中にある不動滝は凍りついているものの、水量が少ない時期だからか迫力不足。その下の水場はいまだ凍結せず、水が流れていた。

さらに歩くと、武甲山御嶽神社参道を示す石碑があり、この山が古くから信仰の対象であることをうかがわせる。そんな山も、北斜面はズタズタに切り崩されているわけなのだ。

風裏に当たる登山道はほぼ無風で、気温は‐2℃ほど。グローブのカバーをしたまま歩いていると内部が次第に蒸してくる。今回はトレッキングポールを持参していたが、途中からはカバーを外して手に握った。

こうして握ると、「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」は露出した指の大半が親指で隠れ、外気が肌に当たらない。だが、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」は指が露出し、冷気にさらされる。どちらのほうが心地よいのかは、そのときの気温や体調にもよるので、これはなんとも判断できない点だ。

トレッキングポールのグリップを握る際に触れる面、要するに手のひら側には、それぞれのグローブに滑り止めと補強がなされている。

「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」はメッシュ風に加工した薄い合成皮革で、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」は厚みがあるレザーだ。着用感は柔らかな「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」、丈夫さでは「G2・アルパイン・コンビ・ミット」のほうがいい。

この武甲山西側の登山道は、起伏が緩やかで歩きやすく、杉の美林で囲まれている。

枯れたまま信仰の対象と化している大木や、休憩適地にもなっている「大杉」もあり、冬場の寒々しい風景の中でよいポイントになっていた。

標高を増すに従って雪の量も多くなり、ブーツにチェーンアイゼンを取り付ける。このチェーンアイゼンはこの連載の2015年2月の回でピックアップしたものだが、今回のような積雪量が少なく、ある程度は踏み固められた登山道では非常に有用だ。

写真は「G2・アルパイン・コンビ・ミット」をつけた右手だが、グローブから指が出ていると、やはり装着は非常に楽である。「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」をつけていた左手でも装着作業を行ったが、こちらは指先が出ている部分が少ないため、少々作業がしにくい。だが、支障があるほどではなかった。

このときに少し気になったのは、親指を出すときに使う関節部分につけられたスリットだ。冷えた親指を再び内部に収めると、どうしても隙間が空いてしまうのである。

左の「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」は指の根元部分が外にはみ出したままになってしまう。だから、もう一度指で押し込んでやらねばならない。一方、右の「G2・アルパイン・コンビ・ミット」も多少は引っかかるが、何度か指を曲げ伸ばししているうちに、元の状態に戻る。大きな問題ではないのだが、何らかの工夫で改善できるとよさそうだ。

だが、こちらは大きな問題といえるかもしれない。カバーを使わないときに、手の甲に固定する面ファスナー(ベルクロ)のことである。

行動しているうちに「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」のカバーは簡単に外れてしまうのだ。トレッキングポールのストラップが干渉して押し上げるために面ファスナーがはがれるのかと、ポールを持たずに歩いていても変わりはない。トレッキングポールを持たなくても、ウェアの袖で押されるだけで外れる程度の固定力しかないからだ。しかし、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」のほうは、このような事態にはなることがない。

2つのグローブの面ファスナーを比較するとよくわかる。どちらも丸くデザインされた面ファスナーの面積は、「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」は小さく、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」は大きめだ。そのために、「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」は固定力がどうしても弱くなってしまうのである。

この面ファスナーの大きさは、固定力以外にも使い勝手を左右する。「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」はグローブ本体とカバーの2つの面ファスナーがぴったりと重なるように「狙って」合わせないとズレてしまい、固定できない。正直、面倒なのだ。だが「G2・アルパイン・コンビ・ミット」はカバーを適当に手の甲へ合わせるだけで、簡単に外れなくなる。カバーの固定力では、明らかに「G2・アルパイン・コンビ・ミット」のほうが上だ。

山頂が近づき、登山口と同様にニホンオオカミの狛犬が出迎える御嶽神社の鳥居をくぐる。この裏をもう少しだけ歩くと、武甲山の頂上に出た。

北側斜面への転落を防ぐために、山頂はフェンスで覆われている。なにしろ、武甲山山頂は以前よりも標高が低くなっているほど石灰岩採石で崩されているのだ。明治時代には1336mあった山頂は、もはや1304mしかなく、御神体でもある山の尊厳は失われつつあると思わざるを得ない。

フェンス越しに下を眺めると、斜面を切り崩した採石現場が目に飛び込んでくる。大型ダンプですら豆粒のような大きさに見えるほど大規模だ。しかし、それよりも遠くに目を向けると、秩父の街並みが眺められ、いくぶんホッとさせられる。

だがここで思うのは、秩父の街ももともとあった自然の形状を変えて作り上げられたものだということだ。現代の武甲山の採石現場は目立つだけで、秩父の街を作るために人間が行なったことと大きく変わらないのかもしれない。もちろん秩父だけではなく、日本全国どころか、全世界で同じことが当てはまるわけである。

スマホ操作は問題ナシ、フィット感や耐久性は?

標高が上がると気温は下がり、指先に冷たさを感じていた僕は、途中から再びカバーをかぶせたミット風にしてグローブを使っていた。しかし一方では汗によっていくぶん湿気を感じ、山頂で休憩をとりながら短時間でも乾燥させようとミット部分を裏返してみる。

裏地はどちらも速乾性で暖かいマイクロフリースだが、「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」は「G2・アルパイン・コンビ・ミット」よりも薄手だ。これはしなやかな使い勝手を重視した「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」と、保温性を高めようとした「G2・アルパイン・コンビ・ミット」の考え方の違いであろう。似たような形状と特徴をもつ2つのグローブではあるが、全体的にいえば「WINDSTOPERフィンガースルーグローブ」のほうがライトユース用で、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」のほうがハードユース用なのである。

山頂ではスマートフォンを取り出し、天気予報などを再確認した。親指、人差し指、中指を出せる「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」は画面での操作がやはり容易だ。タップ、フリック、スワイプはもちろん、ピンチイン、ピンチアウトは親指と人差し指という組み合わせだけではなく、僕のように人差し指と中指のコンビを多用する者でも使いやすい。スマートフォンの画面を操作する程度ならば、指先が1㎝出ているだけで十分である。

すべての指が露出できる「G2・アルパイン・コンビ・ミット」での操作が自由自在なのは、言うまでもない。スマートフォン以外にも、今回ここで使用している写真を撮る際にも、カメラを操作するのがとても楽であった。

山頂を後にし、南側の尾根を経由する道を使って下山し始める。

正面には小持山、大持山がそびえているが、今回はシラジクボから一の鳥居へと斜面をトラバースするように下っていった。

途中の支尾根の木々のあいだからは武甲山が垣間見られる。

以前、北側の秩父から見る武甲山はじつに堂々としたものだったらしい。だが、今は自然が残る南側から眺めるほうがよさそうだ。若干、寂しい気持ちになってしまった。

さて、じつはこのテストを踏まえ、僕はどちらかのグローブを購入しようと考えていた。
結論は、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」。その理由は僕の手の形状に合うためにフィット感がよいこと、個人的には指先は5本出せたほうが使いやすいということ、そして僕の乱暴な使い方でも傷みにくそうな丈夫さをもっていることだ。指の根元を締め付ける感じが強いのは気になったが、僕の指の太さであれば血行を妨げられるほどではない。

手首の部分にクッション性が高い素材を配し、この部分の安全性とフィット感を高めているのも気に入った。ただし、手にしっかりと装着されるためにグローブの脱着には少々手間取るのは否めない。

「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」は着用時の締め付け感が少なく、簡単に脱着できるのが利点だ。重量も60gと軽く、小さく収納できるのもいい。そして、これまで触れていなかったが、モデル名にもあるように生地がウインドストッパー素材なのである。冷たい風を遮ってくれ、薄手でも防寒性が高い。

問題は縫製部分を中心とした耐久性にありそうだ。だがライトユースであれば十分そうではある。

また、価格は「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」の「5,500円+税」に対し、「G2・アルパイン・コンビ・ミット」は「9,000円+税」。これだけの差があるのだから「G2・アルパイン・コンビ・ミット」が機能性で勝るのは仕方がないかもしれない。しかしコストパフォーマンスが高いのは、「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」ではないか。僕の好みと使い方を基準にすると「G2・アルパイン・コンビ・ミット」を選ぶことにはなるが、「WINDSTOPPERフィンガースルーグローブ」も価格以上の十分な実力を持っている。山の道具選びは、いつも機能と価格のバランスが難しい。自分が納得するモノを、自分の基準で探してもらいたい。

プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!

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