登山、クライミングはなぜ体にいいの? 鍼灸師 ネモ先生の山と身体の羅針盤

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鍼灸師・活法師「からだ自然Labo空」院長の根本国彰先生が、みなさんの登山ライフの指針となるような情報をお届けする『鍼灸師 ネモ先生の山と身体の羅針盤』が始まります。「山=登る」を主軸に、登山やクライミングに関した身体の悩み、症例、対策などを紹介。第一回は、「登山、クライミングは何がいいの?」を説いていきます。

「登山やクライミングでの症状の専門鍼灸院」と看板を掲げている〝ネモ先生〟こと、鍼灸師の根本国彰です。登山者やクライマーの症状を専門的に取り扱っていますが、一般的な症状についても、もちろん診ています。

腰痛や肩こり、内科的症状や不妊治療まで、通っている患者さんは実に多種多様です。まさに十人十色の身体の悩みを抱えてやって来ます。そのため、来るもの拒まずの姿勢で施術に当たっています。

鍼灸を介して、日々さまざまな患者さんと接していることで見えてくることがあります。その1つが、症状から回復するまでの期間は人によって違いがあることです。大雑把に結論を言ってしまうと、「一般の人より、登山者・クライマーの方が回復が早い」ということです。

ここでいう一般の人とは、登山やクライミングをしない人を指し、山や壁を「登る」行為を定期的に行なっていない人のことを指します。

厚生省が健康づくりや、生活習慣病予防のために推進していることの一つに「定期的な運動を生活に取り入れましょう」というものがあります。登山者やクライマーは誰に言われるまでもなく、週末の登山、もしくは次の目標に向けて、食事、運動、休暇の計画を立て、生活や仕事をコントロールしていくことが必然と習慣化されています。

そもそも生活習慣病からは遠いところに位置していますが、身体に症状が出たとしても、症状からの回復が早いということに、この「登る」という行為が重要な要素になっています。

私は3年前から定期的に千葉大医学部の解剖学実習に参加していますが、教授をしている解剖医歴40年の先生は「人間の身体はいまだに科学的に説明がつかないことだらけだ」と言います。そして「ヒトの身体は二足歩行の進化にそって合理的に成り立っている」と、付け加えます。

解剖学実習の後は、だいたい居酒屋で情報交換会を兼ねた打ち上げを行います。その席で先生は「明日から休みとって北アルプスに行ってくるよ」とか「東北の方に山登りに行ってくるよ」などと言って、出かけていきます。見た目は60歳前後ですが、実は後期高齢者の域に達している先生に「若さの秘訣はなんですか?」と聞くと、「山歩きだよ」と即答します。

二足歩行の重要な筋肉として腰から脚にかけての大腰筋があります。股関節の動きをつくる大腰筋にとって最適な運動とは何かといえば、実は山のように起伏のある所を歩くことなのです。

大腰筋は歩行のような運動以外にも生理学的にも非常に重要なのですが、これを説明すると長くなるので機会を改めて紹介したいと思います。

これから連載コラムで、登山やクライミングに関した症例などを紹介しながら、みなさまの山ライフにお役立ていただければと思っています。

〝山と身体の羅針盤〟のネモ先生と覚えてください。どうぞよろしくお願いします。

 

プロフィール

根本 国彰

はり・きゅう師、碓井流活法会員、日本森林保健学会会員
からだ・自然Labo~空【ku:】~院長
多くのクライマーや登山者のケガや症状を診てきた経験から、一昨年より関東周周辺のクライミングジムで「クライマー治療室」を定期開催している。『山と溪谷』や『CLIMBING joy』、その他山岳雑誌などでクライミングや登山に関する身体のケア方法を紹介している。

鍼灸師 ネモ先生の山と身体の羅針盤

鍼灸師・活法師の根本国彰氏が、登山やクライミングに関した身体の悩み、症例、対策などを紹介。登山ライフの指針となるカラダの情報を説明します。

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