山岳用テントの選び方は、登山スタイルのイメージから選ぼう!

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テント泊登山にトライしたい! という人のため、買い揃えるべきテント関連用具はどんあものがあるのか? 石井山専新宿東口ビックロ店の増田さんの案内で6回の連載で紹介します。第1弾は、購入時の順番と、山岳用テントの選び方について説明してもらいました。

 

POINT
  • 買う時の順番も大切、最後に大型ザックを選ぼう!
  • テントは冬山でも使うのかどうかは、最初の大きな選択肢
  • どんな登山をしたいのかイメージできれば、選ぶべきテントは自ずと決まってくる

 

テント泊用の装備、選ぶ順番も考えること!

編集部T: これからテント泊の登山を始めたい! という人は、何を買い揃えれば良いのかについて教えてください。

増田さん: テント泊登山は、居住空間をそのまま山に持っていくものと考えてください。そう考えると、まずは家と敷布団と掛け布団・・・、すなわちテント・マット・寝袋が必要になります。これがあれば、まずはゆっくり山で眠れるでしょう。
次に食事が必要になるので、料理するためのストーブとコッヘルが必要になります。さらに快適性を高めるために、さまざまな小物を揃えていくと良いでしょう。
また、これらの装備を収納するための大型ザックが必要になります。

編集部T: どれもテント登山には必要な用具だと思いますが、選ぶ順番はありますか?

増田さん: テント・マット・寝袋、この3つから選ぶ必要があります。それから重要なのは、大型ザックは最後に選ぶべき、ということです。

編集部T: その理由は?

増田さん: 最初に大型ザックを見る・選ぶ人が多いのですが、これはあとで後悔することになることもあるからです。大きいザックを見ると、「ちょっとこの大きさを背負うのは無理かも・・・」となって、どうしても小型のものを選んでしまいがちです。
一方で、「暖かい寝袋が欲しい」「大きいくて居住性が快適なテント」「マットも寝心地優先」と選んでしまうと、どんどん荷物が増えて最終的に入り切らない、ということがあるからです。

編集部T: なるほど、山に持っていく荷物が決まってからザックを選んだほうが効率的ですね。

増田さん: はい。料理の方法によっても、――例えばフリーズドライで済ますのか、それともしっかり食材を持っていって料理するのか――、荷物の量は変わります。テント泊に挑戦するレベルの登山者であれば、すでに日帰り用のザックは持っていると思います。購入したテント用品を日帰り用ザックに詰めてみて、どのくらい溢れるのかで、大きさも予想できるのではないかと思います。

大型ザックはテント用品一式を買ってから選ぼう!

 

ダブルウォールかシングルウォールか? それが最初の選択

増田さん: ということを踏まえたうえで、最初はテント選びです。購入時にまず考えてほしいのが、「雪山を視野に入れるのかどうか」です。これにより、選ぶべきテントが大きく変わってきます。

編集部T:どの辺りが変わってくるのでしょうか?

増田さん: 12月~2月の厳冬期に山で使うとなると、「外張り」と呼ばれる雪山用のフライシートを付ける必要があります。テントによっては外張りが付かないモデルもあるので、付かなければ雪山非対応となります。
雪山にトライするときに、テントを書い直すのか買い足すのかは、重要な選択です。購入時にイメージを膨らませて、今後ステップアップしたい場合は雪山対応できるものを選んでおくべきです。

大きさも含めて、さまざまな種類・形状があるテント。どのテントを選ぶかは、選択肢を進んでいけば自ずと決まってくる!?

 

編集部T: なるほど。テントは高価なので、重要な選択ですね。

増田さん: そのうえで、今度は「シングルウォール」なのか「ダブルウォール」なのかという選択をします。1枚の防水透湿素材でできているもの(シングルウォール)なのか、それともフライシートという防水のシートをかぶせるタイプ(ダブルウォール)か、選択する必要があります。

編集部T: シングルウォール、ダブルウォール・・・。それぞれの特徴について教えてください。

増田さん: シングルウォールは、「さらに高い山へ、雪山へステップアップしたい」という人向きです。設営時間が短く、撤収時も簡単。張る場所も選ばないので使い勝手が良い。雪山でも使えるモデルが多いで、ステップアップしたい人向きです。
こう聞くと良いことばかりに思えますが、弱点もあります。それがテント内の「結露」です。もちろん結露はダブルウォールでも出ますが、シングルウォールのほうが密封性が高いので多く結露が出ます。

編集部T: 一方のダブルウォールの特徴や利点、オススメしたいシチュエーションは?

増田さん: 例えばキャンプでも使いたいけど山でも使いたいという場合や、広く快適なテント空間を求めるなら、ダブルウォールはオススメです。ダブルウォールのテントの特徴の1つとなるのが「前室」と呼ばれる空間です。前室とはインナーテント(テント本体)とフライシートとの間にできる、突き出した部分の三角形の空間のことです。これがダブルウォールを選ぶ場合の1つの大きな選択肢になります。

 

前室の向きによって、テントの快適性が変わる!?

増田さん: 選択肢となるのは、前室の向き、つまり出入り口の向きです。テントの底面は基本的には長方形ですが、入口が長辺にあるのか、短辺にあるのかで居住性や使い勝手が大きく変わります。

編集部T:どんな違いがあるのでしょうか?

増田さん: まず長辺にある場合ですが、このタイプは前室が広くとれます。そのぶん、前室に置ける荷物も多くなってテント内は快適になるでしょう。
ただし、2人以上で使う場合は「人の出入り」という面では、やや窮屈です。短辺に入口がある2人用テントであれば、お互い足元から出られますが、長辺の場合は人を乗り越えて出入りしなければならないので、窮屈さを感じるときもあるあるかもしれません。

長辺側に出入り口があるタイプのテント。前室が広く取れて快適ではある

 

短辺側に出入り口があるタイプ。テントを張る場所に重度が高い。
なお、こちらはシングルウォールタイプだ

 

編集部T: 短辺側に出口があるメリットは、ほかにもありますか?

増田さん: 1つが風に対して強いこと、もうひとつが狭い場所に立てやすいことです。まず「風」についてですが、テントを立てる時の基本中の基本の1つが「出入り口の向きは風下に向ける」ことです。すると、長辺入口のほうが風に当たる面積が広くなるぶん、どうしても風の影響を受けやすくなります。
また短い辺の幅だけ取れればテントに出入りできるので、例えば尾根状の狭い場所に立てても出入りできる。長辺側に入口のあるテントは、張る場所を選ぶのです。
短辺入口か長辺入口かは、けっこう悩ましい選択になります。

 

どんなテント泊登山をするのか、しっかりイメージしよう!

編集部T:テントの重量についても、選ぶ時のポイントになると思いますが・・・。

増田さん: 最近は軽いテントを選びたいという人が最近増えています。軽いものは、メッシュのものが多いので、当然、寒さには弱いです。オールシーズン使うことを目指すのであれば、メッシュ型は選択肢として外れます。軽いタイプを選びたいという人は、テントをすでに持っていて、夏にガンガン軽い荷物で歩きたい、という人におオススメです。

編集部T: テントの立てやすさという面では、何か違いはありますか?

増田さん: テントの種類によって、さまざまな形状・立て方があるので一概には言えませんが、立て方には2つに大別できると思います。テントポールを組みあげてから引っ掛けて吊り下げていく「吊り下げ式」のテントと、インナーテントの筒状の生地(スリーブ)にテントポールを通していく「スリーブ式」があります。

編集部T: それぞれの特徴は?

増田さん: 吊り下げ式のテントはメッシュ製のものが多く、居住空間が広いものが多いようです。本体とフライとの距離をしっかり取れるタイプが多いので、通気性も良いテントが多いと思います。「低山で使う」「音楽フェスで」という使い方も兼ねるのであれば、吊り下げ式は蒸れにくいし涼しいです。

編集部T: スリーブ式のメリットは、どうでしょうか?

増田さん: スリーブ式については、慣れれば素早くテントを立てられることです。片側からポールを通して、一気に立てられるので、登山用テントではスリーブ式が多くなっています。

編集部T: テントには、いろいろ選択肢があって迷いますね。テントは安くはないので、選び方は慎重になるなぁ・・・。

増田さん: 選ぶポイントは「どんな山に行きたいのか」「どんなテント泊をしたいのか」ということに尽きると思います。最初にテントは家選びと言いましたが、自分の目指す登山スタイルをリクエストしてくれれば、オススメできる物件(テント)は絞られてきます。
お店にある、たくさんの物件の中から、最適のお部屋をおすすめできると思いますよ。

広いテント場はテントの見本市でもある。テント場で気になるテントを「視察」するのも良いかもしれない

 

プロフィール

石井山専新宿東口ビックロ店

首都圏最大級の山・アウトドアの大型専門店。「安全」をテーマに、ユーザーのライフスタイルに合わせたさまざまな商品を提案している。店内では、登山学校の講習やワークショップなども開催中。

住所: 東京都新宿区新宿3-29-1 ビックロ 新宿東口店内 8F
TEL: 03-5312-9550
営業時間: 11:00~20:00
アクセス: 新宿三丁目駅A5直結、新宿駅・西武新宿線西武新宿駅下車徒歩5分

 ⇒ホームページ

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