いつ発生するか予測できない落石を回避するには? 島崎三歩の「山岳通信」 第84号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2017年8月25日に配信された第83号では、県内で起きた16件の遭難について触れている。16件のうち4件が落石による事故で、落石に対する対策・注意喚起を呼びかけている。

 

8月25日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第84号では、8月7日~8月13日の間に起きた山岳遭難の遭難事例が掲載されている。以下に抜粋・掲載する。

 

8月7日~13日の信州の山岳遭難現場より

8月7日~13日の間に長野県内で起きた山岳遭難は以下の16件でした。

  • 8月7日、南アルプス赤石岳で、75 歳の男性が単独で赤石岳および荒川岳に入山したものの、下山予定日の7月27日を過ぎても下山せず、行方不明となっていることが確認された。県警ヘリ及び飯田警察署で現在も捜索している。

  • 8月9日、北アルプス涸沢で、85 歳の男性が単独で上高地から入山し涸沢に向けて登山中に、涸沢下部登山道で疲労により歩行困難となる山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 8月10日、北アルプス北穂高岳で、63 歳の男性が単独で入山し、涸沢の山小屋に宿泊して北穂高岳へ向けて出発したが、以降、宿泊予定の山小屋に到着せず、下山予定日を過ぎても下山せず行方不明となっている。県警山岳遭難救助隊が現在も捜索している。

  • 8月10日、北アルプス北穂高岳で、45 歳の女性が北穂高岳から涸沢へ下山中、南稜付近で落石により頭部を負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 8月10日、北アルプス北穂高岳で、63 歳の男性が北穂高岳から涸沢へ下山中、落石を避けようとしてバランスを崩して滑落、頭部を負傷する山岳遭難が発生。県警山岳遭難救助隊員などが出動して診療所へ収容、翌11日に県警ヘリで救助された。

  • 8月10日、中央アルプス宝剣岳で、66 歳の男性が単独入山して宝剣岳山頂から極楽平方面に下山中に濃い霧のためルートを見失い道う山岳遭難が発生。翌11 日早朝から駒ヶ根署員およびび遭対協で捜査し、11 日に一般登山者により発見され救助された。

  • 8月11日、北アルプス槍ヶ岳で、23 歳の男性および24歳の女性が、槍ヶ岳に向けて東鎌尾根を登山中、道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

東鎌尾根で発生した道迷い遭難の状況。登山道を大幅に外れ急な崖に迷い込んでいる。
(写真提供:長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月18日付)
  • 8月12日、北アルプス槍ヶ岳で、69 歳の男性が槍沢を下山中に何らかの発病により一時意識消失する山岳遭難が発生。県警山岳遭難救助隊員などが救助して診療所に収容した。男性に怪我はなかった。

  • 8月12日、北アルプス奥穂高岳で、56歳の男性が奥穂高岳ザイテングラードを下山中にバランスを崩して滑落して左手小指骨折等の重傷を負う山岳遭難が発生し、県警ヘリで救助された。

遭難者のヘルメット破損状況。後頭部の亀裂が滑落の衝撃を物語っている。遭難者は手足に負傷を負ったが頭部に深刻な損傷はなかった。
(写真提供:長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月18日付)
  • 8月12日、北アルプス鹿島槍ヶ岳で、31歳の男性が鹿島槍ヶ岳から五竜岳に向けて縦走中、八峰キレット・キレット小屋付近で何らかの原因により滑落し行方不明となる山岳遭難が発生した。

  • 8月12日、北アルプス南岳で、54歳の男性が大キレットを南岳に向けて縦走中、落石を頭部に受け負傷する山岳遭難が発生。遭対協隊員が出動し、天候の回復を待って13 日に県警ヘリで救助された。

  • 8月12日、南アルプス小河内岳で、41歳の男性が三伏峠から小河内岳に向かう途中にスリップにより滑落、頭部などに軽傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 8月12日、八ヶ岳連峰中岳で、66歳の男性が立場川本谷を遡行中、何らかの原因により滑落する山岳遭難が発生。翌13日早朝から茅野署員などで捜索し、14 日に捜索中の県警ヘリが発見・収容したものの死亡が確認された。

  • 8月13日、八ヶ岳連峰阿弥陀岳・立場川本谷付近で、立場川で発生した遭難者に同行していた73歳の男性が、体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署員らが付き添って無事下山した。

  • 8月13日、北アルプス槍ヶ岳で、66歳の女性が北鎌尾根を登山中に落石により右手示指骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 8月13日、北アルプス鳴沢岳で、53歳の女性が新越山荘付近でスリップにより転倒し、右手を負傷する山岳遭難が発生。付近山小屋に宿泊し、翌14 日に夏山常駐パトロール隊員とともに下山した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8 月2 週は、16 件の遭難が発生しました。そのうち、特徴的なものとして落石よる遭難が4 件発生しました。

落石はいつ発生するか予測ができません。コースの上部にガレ場や不安定な岩場がある場合は、落石に警戒して行動をしてください。

また、登山中は落石を発生させないよう、ガレ場や岩場を通過する際はヘルメットを着用し、浮石等をチェックしながら十分に注意して行動してください。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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