落石を起こさないために、登山道の観察と歩き方の注意を!

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登山中の落石事故に遭わないようにするのはもちろんですが、「起こさないようにする」ことにも注意を払わなければいけません。うっかり落としてしまったでは済まない、大事故を起こさないために、注意すべきこととは?

 

落石を起こさないためには?

質問:
先日、一人で登山していた時に、急登で浮き石を踏んで、ソフトボール大の石を落としてしまいました。幸い誰もいなかったので問題ありませんでしたが、もし混み合った登山道だったら・・・、と考えるとゾッとしました。落石を起こさないようにするための注意点・ポイントがあれば教えてください。

 

垂直に近い岩場を登攀する際に、技術では解決できないリスクの1つが落石です。登山道でもなければ指定されたルートでもない自然の岩場を登る際には普通に存在する浮石。岩場では、この浮石を避けて行動することは必須の技術です。

落石は、大きな物は「ブーン」とうなりを上げて、小さな物は「ヒューン」と耳元をかすめて落ちていきます。また、一般登山コースで恐ろしい落石といえば、雪渓が登山コースとなっているときです。大きな岩でも通常の岩場のようにガラガラと大きな音を立てるわけではなく、雪の上を静かにバウンドして落ちてきます。そのため、直前まで落石の存在に気が付かないこともあります。

落石の落下コースは不規則に変わることもあるので、落石に気が付いた人が大声で注意を促したうえで、落石のルートを「おい!右に弾んでいくぞ!」などと教え合うことが必要となるでしょう。

 

どんな場所で落石が起きるのか考えれば、注意点が見えてくる

さて、今回の質問は「落石を起こさないようにするための注意」です。まず、登山道上で落石を起こしてしまう状況には、どんな場合が考えられるか挙げてみましょう。急傾斜で、自分の足元や手がかりで頭が一杯で、細かい登山道上の浮石まで注意が行きわたらない、そんなケースが多いと思います。
また、正しい登山道を歩いていても、少し脇に寄りすぎた、路肩を歩いてしまい落としてしまうことがあります。ほかにも、正しく正確に登山道を歩いていても、落石が溜まっている場所や、ほかの登山者がルート上の浮石をひょいと脇に置いた場所に足を置いて落としてしまったなどのケースも考えられます。

こうして考えると、不用意に石を落とさないようにするには、登山道の観察と歩き方の注意が大切な要素となることがわかります。時間的にも精神的にも余裕を持って行動することが落石を起こさないためのコツの1つとなります。落石を起こす人の多くは「とりあえず通過するのに頭が一杯だってので・・・」などと言っているのを聞いたことがあります。もしパーティで行動しているのであれば、「あっ。そこ、もう少し右側行かないと、小石落とすよ」「もっと平らな場所に足を置いて」などと注意し合うようにしてください。

また、岩場やクサリ場では落石に注意する登山者でも、意外と気づかず落石被害を起こしやすいのが、ジグザグ道です。混雑した登山道で垂直方向に人がいる時には特に、路肩を避けて山側を意識的に歩くことも小さな落石対策です。

ほかにも技術的なアドバイスとしては、急傾斜の登下降では岩にベッタリと張り付くように行動すると斜面を蹴りやすく、落石を起こしがちです。正しい姿勢は落石対策にも有効となります。

いずれにしても、足元からコロッと落とした瞬間には必ず、「ラク」と大声で注意を呼び掛けてください。

 

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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