すぐに救助に向かえないケースも考え自分で対処できる力を 島崎三歩の「山岳通信」 第85号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2017年9月11日に配信された第85号では、県内で起きた9件の遭難について触れている。そのうち槍ヶ岳・北鎌尾根での救助活動について触れ、アドバイスしている。

 

9月11日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第85号では、8月14日~8月20日の間に起きた山岳遭難の遭難事例が掲載されている。以下に抜粋・掲載する。

 

8月14日~20日の信州の山岳遭難現場より

8月14日~8月20日の間に起きた長野県内で起きた山岳遭難は以下の9件でした。

  • 8月14日、八ヶ岳連峰大同心で、37歳の女性が大同心北稜をクライミング中に浮石に乗り、バランスを崩し滑落、負傷する山岳遭難が発生。茅野署員及び遭対協隊員らによって救助された。

  • 8月14日、北アルプス槍ヶ岳北鎌尾根で、64歳の男性が北鎌尾根を登山中、落石を受けて右手環指骨折などの重傷を負傷する山岳遭難が発生。県警山岳救助隊及び遭対協隊員が救助に向かい、8月17日に県警ヘリで救助された。

  • 8月16日、南アルプス赤石岳で、39歳の男性が小渋川ルートを下山中、高山ノ滝付近で沢を渡渉する際に流され溺れる山岳遭難が発生。17日に県警ヘリで救助しましたものの、その後、死亡が確認された。

  • 8月18日、北アルプス唐松岳で、58歳の男性が山小屋に宿泊中に発病し、体調不良で行動不能となる山岳遭難が発生。天候の回復を待って県警ヘリで救助する予定でだったが、遭難者の体調が回復したことから、19日に県警救助隊員などが付き添い下山した。

  • 8月19日、中央アルプス宝剣岳で、60歳の男性が宝剣岳から下山中に浮石に足を取られ滑落し、頭部等打撲の怪我を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 8月19日、八ヶ岳連峰赤岳で、65歳の女性が文三郎尾根を下山中にバランスを崩して滑落し、左側頭部出血、胸部打撲などの怪我を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 8月19日、八ヶ岳連峰稲子岳で、46歳の女性が山小屋に滞在中に発病し行動不能となる山岳遭難が発生。無事救助された。

  • 8月20日、八ヶ岳連峰蓼科山で、77歳の男性が山頂から下山中、七合目付近でつまづいて転倒し、右足首を負傷する山岳遭難が発生。茅野署員、遭対協隊員が背負って下山・救助した。

  • 8月20日、北アルプス・餓鬼岳で、70歳の女性が燕岳から餓鬼岳に向けて縦走中、東沢岳と餓鬼岳の中間・「剣ズリ」付近で足を踏み外して滑落、右肩骨折等の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

 

山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月3週は、9件の遭難が発生しました。8月14日に北鎌尾根で発生した落石による遭難は、現場が携帯電話の通話圏外だったため、通り掛かりの登山者に救助を依頼し110番通報されました。

しかし、天候不良により当日の救助はできず、その間、遭難者らの安否を確認する連絡手段はありませんでした。幸いにして遭難者は2日後の朝、地上から救助に向かっ た救助隊員により無事が確認されヘリコプターにより救助されました。

このように登山中はアクシデントが発生して救助を要請しても、市街地のようにすぐに救助はできません。場合によっては救助要請すらできない場合もありえます。

登山は自己責任の原則に基づく行為です。遭難しないことはもちろんですが、ある程度のアクシデントは登山者自身が対処 しなければなりません。あなたの中に「何かあったら救助を頼めばいい や」という安易な考えはありませんか?

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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