日ごろからトレーニングと健康管理で未然に防げる遭難もある! 島崎三歩の「山岳通信」 第86・87号
長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2017年9月12日に配信された第85・86号では、県内で起きた全22件の遭難について触れている。うち疾病・転倒・転落・滑落による遭難が多いことについての見解について説明している。
9月11日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第86・87号では、8月21日~9月2日の間に起きた山岳遭難の遭難事例が掲載されている。以下に抜粋・掲載する。
8月21日~9月2日の信州の山岳遭難現場より
8月21日~9月2日の間に起きた長野県内で起きた山岳遭難は以下の22件でした。
-
8月21日、北アルプス白馬岳で、52歳の女性が白馬大雪渓を登山中に雪渓上部の葱平付近で転倒して右大腿部を負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。
-
8月22日、北アルプス奥穂高岳で、50歳の男性が奥穂高岳から下山中、ザイテングラート上部で足を滑らせ滑落し、左足下腿部腓骨骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。
-
8月24日、八ヶ岳連峰赤岳で、80歳の男性が行者小屋付近の中山乗越でバランスを崩して転倒し、左足脛を負傷する山岳遭難が発生。茅野署員などにより救助された。
-
8月24日、北アルプス常念岳で、41歳の男性が常念岳山頂付近を登山中に、足を滑らせ転倒し右足首を負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。
-
8月25日、北アルプス白馬岳で、55歳の男性および61歳の女性の中国人夫婦2人が、大雪渓を下山中に道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。夏山常駐パトロール隊員などにより救助された。
-
8月26日、北アルプス蝶ヶ岳で、76歳の男性が登山中に腰痛により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。
-
8月26日、北アルプス割谷山で、73歳の女性が西穂山荘から焼岳に向けて登山中に、割谷山付近の登山道上で足をひねり転倒、左足首骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。
-
8月26日、浅間連峰三方ヶ峰で、65歳の男性が三方ヶ峰山頂付近で何らかの疾患を発病して倒れ、群馬県防災ヘリで救助したものの、その後、死亡が確認さた。
-
8月27日、北アルプス烏帽子岳で、69歳の女性が烏帽子岳へ登山中に烏帽子岳分岐付近でつまづいて転倒し右膝打撲の軽傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。
-
8月27日、北アルプス前穂高岳で、54歳の男性が重太郎新道を下山中に足を滑らせ滑落し、背中を打撲する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。
-
8月27日、北アルプス常念岳で、59歳の女性が一ノ沢登山道を下山中、王滝ベンチ付近で木の根につまづいて転倒、左足骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警救助隊員などにより救助された。
-
8月27日、北アルプス針ノ木岳で、77歳の男性が針ノ木岳に向けて登山中に何らかの疾患を発病し、倒れて心肺停止となる山岳遭難が発生。翌28日に県警ヘリで救助したものの、その後、死亡が確認された。
-
8月27日、北アルプス奥穂高岳で、63歳の男性がザイテングラートを登山中、足を滑らせ転倒し、左前腕骨折の重傷を負う山岳遭難が発生し、県警ヘリで救助しました。
-
8月28日、北アルプス赤岩岳で、69歳の女性が西穂高岳から奥穂高岳へ向けて縦走中、赤岩岳付近で岩につまづいて転倒・滑落して両足下腿部挫傷の軽傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。
-
8月28日、北アルプス常念岳で、54歳の男性が一ノ沢登山口から常念岳に向けて登山中、木の根につまづいて転倒、右足首骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。遭対協隊員により救助された。
-
8月28日、北アルプス蝶ヶ岳で、79歳の男性が蝶ヶ岳へ向けて登山中、何らかの疾患を発症して心肺停止となる山岳遭難が発生。県警ヘリで救助されたものの、その後、死亡が確認された。
-
8月28日、北アルプス唐松岳で、68歳の女性が八方尾根石神井ケルン(八方山ケルン)付近の木道でスリップにより転倒し、顔面などを負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。
-
8月28日、北佐久郡軽井沢町の八風山で、20歳の女性が単独で登山中、八風山頂上付近で日没により道に迷う山岳遭難が発生。軽井沢署員により無事、発見・救助された。
-
8月29日、南アルプス兎岳で、75歳の男性が兎岳山頂付近を登山中、転倒し顔面裂傷を負い行動不能となる山岳遭難が発生。翌30日に、県警ヘリにより救助された。
-
9月1日、北アルプス槍ヶ岳で、50歳の韓国人男性が東鎌尾根を縦走中にバランスを崩して滑落し、左肋骨骨折等の重傷を負う山岳遭難が発生。岐阜県警ヘリで救助された。
-
9月2日、北アルプス蝶ヶ岳で、68歳の男性が蝶ヶ岳から常念岳に向けて縦走中、バランスを崩して転倒して右足骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。
-
9月2日、北アルプス奥穂高岳で、41歳の男性がザイテングラートを下山中、何らかの原因により滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助しましたが、その後、死亡が確認された。
山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
8月4週(8月21~27日)は13件の遭難が発生しました。そのうち発病により2名の方が亡くなっています。また、つまづきによる転倒も目立ちます。
登山はレベルに応じて年齢や性別を問わず、誰もが楽しめるスポーツですが、一般的なスポーツと比べてもかなり負荷の高いスポーツです。
持病や故障を抱えたままの登山や、体力的な余裕のない登山は、それだけで遭難の危険をはらんでいます。日ごろからトレーニングを継続して筋持久力、心肺機能、バランス感覚等を鍛えておくとともに、健康管理にも十分に気を付けて万全なコンディションで入山しましょう。
続く8月5週(8月28日~9月2日)は、9件の遭難が発生しましたが、そのうち7件が滑落、転倒による遭難でした。残念ながらそのうち1件は死亡遭難でした。
標高の高い急峻な山が多い長野県では毎年、転落、滑落、転倒による遭難が全体の半数近くを占めています。またその多くは下山時に発生しています。
直接的な原因としては浮石、スリップ、踏み外し、ストックのつき外し、めまいなどがあり、間接的な要因としては疲労等による筋力不足、加齢によるバランス感覚の低下などがあります。
滑落や転倒は発生した場所によっては致命的な負傷を負います。行動中は「もし、ここで転んだらどうなるか・・・」という想像力を働かせて慎重な行動をお願いします。
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。