「読図の超基本的知識」を知った上で、フィールドで実践! この秋は読図力をアップしよう
遭難しないために読図技術が重要ということは、登山者の誰もが知っていると思います。一方、「地図読みが出来ない」「苦手だ」という登山者の声は意外と多く聞きます。
どうすれば読図技術を身に着けられるのでしょうか。今回は、特に初心者が読図力をつけるためのステップアップのポイントを挙げました。
まずは読図の「イロハ」を知ろう
何事にも「これだけは知っておこう」という知識があります。読図に関しては、比較的独学でも学びやすいのが良いところです。世の中には、読図についていろいろな書物が出ています。まずは手に取って「見やすいな」と思うものを一冊、教科書として活用しましょう。
そのうえで、基本知識をしっかり身につけてください。ちなみに、センターの講習会では下記を「読図の超基本的知識」としてとらえています。
①地図の上が北、コンパスが指すのは「磁北」
(例:「磁北線」とは?)
②地図の縮尺とは?
(例:25000分の1地形図上での4cmが、実際は1kmになる)
③地図の等高線とは?
(例:等高線が狭ければ急、広ければなだらか、ピークは閉じた輪)
④等高線が表す「尾根」と「谷」を見分ける
(例:ピークに食い込むのが谷、ピークの外側に張りだすのが尾根)
⑤登山によく使う地図記号
(例:ピーク、道、滝、針葉樹林・広葉樹林、電線、建物など・・・)
上記の5つは、地図を読む上では最低限の知識です。残念ながら、これをすっ飛ばしてしまうと読図技術は身につきません。
とはいえ読図力アップに大事なのは、とにかく「習うより慣れよ」です。ある程度、読図の知識をなぞったら、とにかくフィールドで実践してみましょう!
STEP 01 行き慣れた低山をフィールドに!
続いて、どこで実践するかです。行き慣れた場所、と聞くと「大体のルートは知っているし、そんな分かり切った山でやっても・・・」と思われがちですが、むしろ逆で、慣れた場所が適しています。
土地勘があるところでやるからこそ安心して実践できるうえに、これまでは意識しなかった地形が見えてきて、学ぶことが多いのです。ぜひ、行き慣れた低山での実践をおススメします。
STEP 02 紙の地図を入手しよう!
行く山が決まったら、その地域の25,000分の1の地図を入手しましょう。「日本地図センター」
STEP 03 地図とコンパスはセットです!
地図は地図だけでは使えません。コンパスがあってこそ生きるものです。初めのうちは「コンパスの赤い針は北を指す」→「地図は北が上だから、赤い針の方向に地図の上を向ける」ということが理解できていれば大丈夫です。
コンパスを見ることに少し慣れてきたら「磁北線」を地図に引いて、「磁北」を意識しながら実践してみましょう。
STEP 04 地図読みは地形読み!
地図を読むことは「地形を読む」技術でもあります。フィールドに出ても、ついつい手にした地図ばかりに目が行きがちですが、まず周りの風景をじっくり観察することが第一です。そして、特徴のある場所を地図と見比べてみましょう。
建物や堰堤、送電線などの人工物は良い目印になります。また、「この谷が地図上のどの谷か」、「目の前の尾根はどれか」、「針葉樹林から広葉樹林に切り替わる場所」なども地図から探すことができます。
読図そのものを楽しめるようになろう!
ロープワークや歩行技術などと違って、読図技術は、なんとなく「お勉強」といった風情が強くて敬遠されがち? です。しかし、地図が読めるようになると、「読図」そのものが楽しい! ということに気付きます。
この秋山シーズンは、「読図力」を身につけて、登山者としてもう一段成長するとともに、登山の楽しみを増やしてみませんか? 雪山登山でも、必ず役に立ちます!
山岳総合センターでも、10月半ばに読図講習会を開催します。フィールドでの実践中心の楽しい講習ですので、興味のある方はぜひご参加ください。
もっと地図読み!(レベルアップ編)開催
長野県山岳総合センターでは、読図の実践講習会「もっと地図読み!(レベルアップ編)」を、10月14日(土)~15日(日)に開催します。
基本的事項を復習しながら実践しますので、「ちょっと自信がないなあ」という方でも安心して参加できます。地図読みの楽しさをご一緒に味わいましょう!
プロフィール
長野県山岳総合センター
長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。
山で必ず役立つ! 登山知識の処方箋
山に待ち受ける、大小さまざまなリスクから回避するには? 確かな知識を持った登山のセンパイや、登山ガイドたちが、さまざまな対処法を教えます!