「病気・道迷い」遭難が補償されるのか、しっかり確認しておこう。メールや書面で回答してもらうことを推奨

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山岳遭難事例で最も多いのが「道迷い」。そして疲労を病気に含めると、山岳遭難の半数以上が「道迷い・病気」が原因となっている。ところが、一般的な「救援者費用特約」だけではこれらは対象外となってしまう――。果たして自分の加入している山岳保険は何に対して補償されるのか、一度確認しておくほうが良いと、やまきふ共済会​の井関氏は説明する。

 

前回、大手損保会社の商品である「救援者費用特約」において、遭難しても出ないケースをQ&A形式で挙げさせていただきました。

★前回記事:登山中の「体調不良」や「疾病」の支払い要件とは? 

しかし、本来は補償対象外である病気を原因とする遭難事故での救助費用が、「実際に支払われた」という質問をいただきました。そこで今回は、支払われた理由・ケースについて考察してみたいと思います。

前回までに述べたように、救援者費用特約の約款の「保険金を支払わない場合」には「被保険者の脳疾患、疾病または心神喪失」によるものが明記されています。そのため、疾病=病気対象外であることが分かります。

もし、この特約で支払われたという場合は、保険会社の担当者の勘違いや誤った判断の可能性が高く、本来支払われないものが支払われたということも考えられます。もちろん、当該案件の具体的な情報がないため、実際には分かりません。

また、救援者費用特約ではなく、割増が必要な「遭難捜索費用特約」であった場合であれば、支払われる可能性はあります。

一方で、病気や道迷いが原因の遭難救助に対して、明確に補償対象としている山岳保険もあります。手前味噌ではありますが、やまきふ共済会でも「登山計画書を第三者へ提出することで、通常は対象外である病気や道迷いを原因とする遭難事故や、山岳登はん(クライミングや雪山等)での遭難事故を含めた国内の遭難事故のすべてが対象となる」としています。

これは、大手の損保会社の商品ではなく、独自の制度で運営している会社の山岳保険となるためで、支払い要件が独自制度となっているためです。

余談になりますが、やまきふ共済会が登山届の提出を条件としているのは、遭難事故の補償の中でも最も費用が高くなる事例が多い行方不明時の捜索に対応するためです。登山届作成の意義も、もちろんありますが、行方不明時の捜索の一助とするためにも、登山届の提出は必ず行っておきましょう。

全国の遭難事故件数(警察庁統計:平成28年)では、道迷いが最も多く38.1%、疲労を含めた病気を含めると全体の52.9%と半数以上となります。

万が一の際に、「せっかく加入していた山岳保険では道迷いでは補償されない」ということがないように、ご自身の加入している山岳保険が何をカバーしていて何をカバーしていないのかを、今一度確認しておきましょう。

お勧めのチェック項目は以下の通りです。以前にも触れましたが、できればメールや書面で回答してもらうことをお勧めします。

 

チェック項目

 ①遭難した場合の「活動内容」によって支払われない場合があるか?

 ②遭難した場合の「原因」によって支払われない場合があるか?

 ③遭難した場合に対象となる費用の範囲はどこまで対象か?
  ・捜索救助費用(二次捜索を含むか)
  ・親族の現地までの交通費等
  ・その他費用

 

プロフィール

井関 純二

千葉県出身。大学卒業後に保険会社勤務等を経て2014年にやまきふ共済会を設立。趣味は登山のトレーニングのために始めたランニングでサブ3ランナー。
やまきふ共済会の他に、山岳ガイドや登山者向けの各種保険を扱う(株)インスクエアコンサルティング代表取締役で社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。
⇒やまきふ共済会

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