遭難は突然起きるものではなく事前の兆しがあるもの。 島崎三歩の「山岳通信」 第92・93号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2017年10月23日に配信された第92・93号では、県内で起きた全22件の遭難について触れ、体調不良や疲労から重大事故が起きている現状について説明している。

 

10月23日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第92・93号では、10月2日~15日の間に起きた山岳遭難の遭難事例が掲載されている。以下に抜粋・掲載する。

 

10月2日~15日の信州の山岳遭難現場より

10月2日~15日の間に起きた長野県内で起きた山岳遭難は以下の22件でした。

  • 10月2日、北アルプス白馬乗鞍岳で、63歳の男性が登山中に疲労と体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。遭対協隊員が救助に向かい山小屋へ搬送、翌3日に県警救助隊などにより救助・病院へ搬送された。

  • 10月3日、中央アルプス檜尾岳で、84歳の男性が宝剣岳から空木岳に向けて縦走中に、何らかの原因により滑落して左肋骨骨折などの重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 10月3日、北アルプス涸沢岳で、34歳の韓国人の女性が涸沢岳から北穂高岳に向けて縦走中、何らかの原因により滑落する山岳遭難が発生。秋山常駐パトロール隊員が女性の心肺停止状態を確認、翌4日に県警ヘリで救助されたものの死亡が確認された。

  • 10月4日、中央アルプス宝剣岳で、66歳の女性が八丁坂分岐上部登山道を登山中に体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。駒ヶ根署員と遭対協隊員により救助された。

  • 10月4日、北アルプス横尾谷で、67歳の女性が涸沢から下山中に本谷橋付近でバランスを崩して転倒、左足首を負傷する山岳遭難が発生。松本署員と広域消防局隊員により救助された。

  • 10月4日、北アルプス涸沢で、65歳の女性が山小屋付近の石階段で足首を捻り左足首を負傷する山岳遭難が発生。翌5日に県警ヘリで救助された。

  • 10月5日、北アルプス栂池高原で、46歳の女性が白馬乗鞍岳から下山中に登山道を見失い、道に迷う山岳遭難が発生。大町署員が救助に向かったものの、女性は自力で下山した。

  • 10月8日、北アルプス前穂高岳で、59歳の男性が重太郎新道を下山中にバランスを崩して滑落、頭部挫傷などの軽傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 10月8日、北アルプス唐松岳で、52歳の女性が八方尾根を登山中に扇雪渓北側登山道で体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 10月8日、北アルプス徳本峠で、62歳の男性が疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 10月8日、北アルプス東天井岳で、64歳の女性が大天井岳から常念岳へ向けて縦走中にスリップにより転倒し、右足首骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

東天井岳の遭難現場の状況(写真提供:長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)10月12日付)

  • 10月9日、北アルプス北穂高岳で、50歳の男性が山頂から南稜を下山中に滑落して右上腕骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 10月9日、北アルプス燕岳で、53歳の男性が下山中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。県警山岳遭難救助隊員及び遭対協隊員が発見・救助した。

  • 10月9日、八ヶ岳連峰天狗岳で、45歳の男性が下山中に登山道を見失い行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 10月9日、下伊那郡松川町大島地籍の山林内で、68歳の男性がキノコ採りのため入山し、何らかの原因により斜面を滑落して死亡する遭難が発生した。

  • 10月9日、飯田市千代地籍の万古渓谷で、82歳の男性が単独でキノコ採りのために入山し、斜面を滑落して頭蓋骨骨折などの重傷を負う山岳遭難が発生。山梨県防災ヘリにより救助された。

  • 10月11日、八ヶ岳連峰蓼科山で、76歳の男性が山小屋で宿泊中に体調不良となり死亡する山岳遭難が発生した。

  • 10月12日、北アルプス横尾谷で、78歳の男性が涸沢から横尾に向けて下山中に本谷橋付近で疲労のため歩行困難となる山岳遭難が発生。遭対協隊員により救助された。

  • 10月14日、中央アルプス経ケ岳で、44歳の男性が9合目付近を登山中に突然倒れて意識不明となる山岳遭難が発生。県警ヘリで救助したものの、その後死亡が確認された。

経ヶ岳9合目付近の遭難現場の状況(写真提供:長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)10月20日付)

  • 10月14日、志賀高原・志賀山で、46歳の男性が下山中に浮き石に乗り転倒して左足骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。警察などで救助された。

  • 10月14日、北佐久郡立科町の山林で、82歳の女性がキノコ採りのため入山し、道に迷い行方不明となる遭難が発生。警察で捜索した結果、山道に迷って県道に出てきた女性を発見救助した。

  • 10月15日、志賀高原・岩菅山で、64歳の男性が山頂から下山中に木の根で滑って転倒して右足骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。消防隊員により救助された。

 

山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

10月1週は、週末の三連休を中心に遭難が多発しました。遭難の内容を見ると一般登山道での転倒・滑落、疲労や道迷いによる行動不能など、登山者自身がもう少し用心をしていれば防げたものが多く見受けられました。

続く10月2週には、急な発病により死亡する遭難が発生しました。
遭難は突然起きるように思えますが、事前の兆しがあるものです。体調不良による遭難も同様です。いつもより体が重い、脈が速い、息が切れやすい、標識を見落とした、つまづいてバランスを崩した・・・。
登山中にこのような状況を察知したら、自分や仲間は遭難の一歩手前にいると早めに気が付いて対処することが重要です。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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