話題のクライミングを始めたい。何から揃えれば? 前編

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みなさんは登山用品店で、クライミングシューズのコーナーを眺めたことはあるだろうか。一般的な登山ルートを登る方は縁遠く感じ、あまり見る機会がないかもしれない。しかし、以前掲載した「最近人気のボルダリング、登山のトレーニングにもなるってホント!?」にも書いたとおり、クライミングは登山、特に岩稜帯を歩く際の有効なトレーニングになる。今回は、そんなクライミングを始める際に必要な道具について、好日山荘 池袋西口店の福元さんに聞いてみた。前編はシューズの選び方について紹介する。

POINT
  • 初心者へのオススメは、フラットなシューズ
  • クライミングシューズで靴下を履く派が増えている。なぜ?
  • ◯◯に強い、アプローチシューズという選択肢

福元さんにクライミングギアのオススメを聞いた

私も師匠に「靴に頼らずに、ムーブで登れ!」とよく言われました

編集部N:好日山荘 池袋西口店には、クライミングジム「グラビティリサーチ」が併設されていますよね。「グラビティリサーチ」に来る方は、登山者が多いですか?

福元さん:北アルプスのジャンダルムや大キレットなどの岩稜帯を歩くためのトレーニングをしたいという登山者の方もいらっしゃいますが、東京オリンピックの正式種目になったことで話題になっているからクライミングをやってみたいという登山未経験者の方もいらっしゃいますね。

編集部N:実際クライミングをやることで、岩稜帯歩きも楽になるんでしょうか。

福元さん:岩稜帯を登る場面では、両手両足の置く位置とそれに対して楽なバランスがあり、クライミングウォールを登ることでそのバランス感覚が身につきます。落ち着いて登ることが出来るようになれば、岩を登る恐怖感もなくなってくると思います。また、グレード(難易度)ごとに課題が設定されているので、クリアしていく達成感とステップアップしていく充実感が得られますよ。

編集部N:なるほど。これからクライミングを始めたいという方は、まず何から揃えればいいでしょうか。

福元さん:まずは、クライミングシューズから揃えてみてはいかがでしょうか。初心者の方には、ソールがフラットになっているものがオススメです。

クライミングシューズの中でもフラットソールは初心者向け

フラットシューズのクライミングシューズ

福元さん:選ぶ時のコツは、登山靴を選ぶときのようにワンサイズ大きいものではなく、ぴったりフィットするものを選ぶと良いと思います。上履きを選ぶような感じでしょうか。

編集部N:クライミングシューズといえば、ダウントウ(つま先がかぎ形のようにカーブしている)のイメージが強いですが、何が違うのでしょうか?

クライミングシューズのなかでもダウントウのもの

ダウントウのクライミングシューズ

福元さん:ダウントウのシューズは、小さなホールドでも引っ掛けるように登ることができます。ただ、初心者向けの課題は小さなホールドはあまり出てきません。また、靴に頼ってしまうと登り方に変なクセが付いてしまいます。すると、あるグレードから登れなくなってしまい、伸び悩んでしまうんです。

編集部N:まずは、ムーブ登るために行うクライミングの独特な動きを鍛えることが大事と。

福元さん:私も師匠に「靴に頼らずに、ムーブで登れ!」とよく言われました(笑)。最初はフラットなシューズで、足に馴染むもの、ずっと履き続けられるものを選んだほうが長い目で見ても良いと思います。

靴下を履くことで汗で濡れにくくなり、蒸れにくくなります

編集部N:シューレース、ベルクロ、スリッパと着脱のタイプもいろいろありますが、選び方にポイントはありますか?

着脱別クライミングシューズの写真

左からそのまま履く「スリッパ」、紐で結ぶ「シューレース」、ベルクロで調節する「ベルクロ」の3タイプ

福元さん:ジムではスリッパタイプ、ベルクロタイプが多いです。やはり着脱が楽ですからね。細い足の方など、足の形状によってはレースタイプのほうがしっかり履ける場合もあります。また、スリッパタイプは毎回ゴムを伸ばして履くことになるので、使って行くうちにゴムが伸びてしまうという弱点があります。その点レースタイプだと、シューレース(靴紐)を締めたり緩めたり調節できるので、ちょうどいいフィット感を得られます。

編集部N:クライミングシューズを履く時は、靴下は履いたほうがいいんでしょうか。

福元さん:最近は、靴下を履く方が増えていますね。クライミング用の靴下は、ぴったりと足の形にフィットするので、素足よりもシューズがすんなり入ってくれるんです。小さい靴でも、意外とすんなり入るようになることもあるんですよ。また、靴下を履くことで汗で濡れにくくなり、蒸れにくくなります。私も靴下を履いてクライミングシューズを使っています。

編集部N:ちなみに福元さんは、どんなクライミングシューズを使っているんですか?

福元さん:私は、スポルティバの「ミウラ」と、ジム用にサルティックの「スピード」を使っています。

福元さんが使う、サルティック「スピード」

福元さんが使う、サルティック「スピード」

福元さん:「スピード」は、すごく柔らかいんです。足裏感覚が良く、ムーブで登る練習に適している靴だと思います。ヒールの収まりもいいです。

編集部Nたしかに柔らかいですね。

クライミングシューズ「スピード」のソール部分

クライミングシューズ「スピード」のソール部分

福元さん:ジムで登る時は、柔らかいシューズで動きの練習をしていますね。

岩場までの山道で履くために作られたシューズがあります

編集部N:ジムでトレーニングしたら、今度は外の岩場に挑戦してみたいですね。岩場はクライミングシューズで登るとして、それまでの道はどんなシューズを履いていくのがいいでしょうか。

福元さん:アプローチシューズという、岩場までの山道で履くために作られたシューズがありますよ。短い登山道を歩くことを目的としているので、作りはしっかりしているけど軽くて、ローカットのものが多いです。

ソールパターンが違う

手前がアプローチシューズのソール。岩登りに強い

福元さん:シューズによっては、つま先にクライミングゾーンがあったりして、岩場を登るのに特化したものもあります。

編集部N:岩稜帯を歩くのにも良さそうですね。登山靴でも岩場に特化したものが販売されていますが、どれが人気ですか?

福元さん:スポルティバ「TX4 MID GTX」のミッドタイプは人気がありますね。

スポルティバ「TX4 MID GTX」

スポルティバ「TX4 MID GTX」

福元さん:これは、アプローチシューズのソールパターンに近いんですが、ミッドカットになっているので足首のサポートもしっかりあります。また、ライニングに「GORE-TEX コンフォート」を使っているので防水性も高いです。去年あたりから5.10もミッドカットの「Camp4 Mid GORE-TEX」を出しました。夏山はこれ一足あれば、どこでも行けてしまうようなシューズです。けっこう軽いので、山を歩き慣れた方にオススメしたいです。

プロフィール

福元 菜美(好日山荘 池袋西口店)

2013年に好日山荘に入社。登山歴7年、クライミング歴3年。屋久島にトレッキングに行った時に、モッチョム岳に登るクライマーを見たことがきっかけで山に目覚める。とんがった山好きで、アルパインクライマーに憧れる登山女子。実はサーフィン歴のほうが長い。

好日山荘 池袋西口店

日帰りハイキングから長期縦走、クライミング、沢登りまでさまざまな登山スタイルに対応する品揃えを誇る登山用品店。2階にある「マウントラボ」では、ロープワーク講習や山道具の選び方講座など、さまざまな勉強会が開催されている。

所在地/東京都豊島区西池袋3丁目27-12 池袋ウエストパークビル
TEL/03-5958-4315
営業時間/時短営業中につき好日山荘のWebサイトを参照
アクセス/池袋駅西口方面「1b」出口すぐ。
http://www.kojitusanso.jp/shop/kanto/#tokyo

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