雨の日にしっぽり読みたい山の本
暑さも和らぎ、すっかり秋めいてきました。でも、台風やら秋雨全線やら、お天気はいまいちスッキリしませんね・・・。そこで今回は、雨の日にしっぽり読みたい宮沢賢治に関する一冊をご紹介。宮沢賢治の作品は、教科書で読んだことがある人も多いのでは? 2016年は宮沢賢治生誕120年ということもあり、ちょっと面白い本が出ています。セレクトはICI石井スポーツ登山本店の間瀬孝之さんです。
『宮澤賢治、山の人生』(エイアンドエフ)
あえてご紹介するまでもない宮澤賢治ですが、この本を読むとこんなにも山に関わって生きていた人なのだなあ、と思い知らされます。よくよく考えてみれば彼の作品の舞台は山であり、森であり、高原であり、里山なのです。山野を歩きまわり、原っぱでも河原でもどこでもぐっすり眠ることのできた賢治は山歩きの達人ともいえるでしょう。
ぼくがはじめて知った賢治の作品は「注文の多い料理店」でした。そこに込められた作者の意図は措くとして、何と面白い話であろうかと素直に感動したことを記憶しています。道に迷った人の話かと思えば逆に彼らを喰べようするモノの話に換わってゆく。その諧謔に心惹かれるのです。
この本が気づかせてくれるのは、賢治特有の視点で自然を捉え、それが多くの作品を生んだということなのです。また同時代の岳人達の活躍も紹介されていて、賢治の山とは異なる山の世界もあったことが伺われるように構成されています。生誕120年に当たって刊行された本書は新たな宮澤賢治を発見させてくれるので、ますます宮澤賢治が好きになってしまいます。
余談ですが、深田久弥の『日本百名山』の岩手山と早池峰山の項には賢治の詩が引用されています。イーハトーブ岩手の山を語るには宮澤賢治は欠かせないということでしょうね。
編著:澤村修治、絵:よこてけいこ、発行: エイアンドエフ
プロフィール
登る前にも後にも読みたい「山の本」
山に関する新刊の書評を中心に、山好きに聞いたとっておきもご紹介。