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本格的に雪山を始めるなら! 失敗しないハードシェルの選び方

道具・装備 2016年12月16日

雪山初心者にとって、ハードシェルの選び方はちょっとハードルが高い。値段も結構するし、そもそも他のウェアと何が違うのかも正直よくわからない・・・。そこで今回は、ハードシェルの基本について、好日山荘池袋西口店の浅見さんに詳しくお聞きしました! これから買おうと思っている人、買い直したいという人、必見ですよ~!

POINT
  • ハードシェルは文字通りの"ハード"
  • 「2重窓効果」で保温力アップ
  • 必要な機能に納得して選ぼう

ハードシェルって、どんなウェア?

編集部S:ハードシェルって、そもそもどんなウェアだと考えればいいのでしょうか?

浅見さん:ハードシェルはウェアの中でも一番外側に着て、雨風から体を守ってくれる最後の砦といったイメージです。

編集部S:なるほどー。売り場だと、どの辺りのウェアがハードシェルなんだろう・・・

浅見さん:今、一般的にハードシェルと呼んでいるのは冬山用、特に雪山に使うアルパインモデルのウェアをさす場合が多く、防風性と防雪性が重視されています。いかに冷たい風や雪をシャットアウトするかを目指した設計になっているんですよね。

ハードシェルは雪山に使いますが、初心者が選ぶにはハードルの高い商品です(浅見さん)

編集部S:ハードシェルって、名前のとおり生地自体が硬いような印象がありますよね。

浅見さん:そうですね。シェルとは「殻」という意味ですが、ハードシェルはその中でも特に雪山に特化していますので、分厚くなっているのは確かです。

編集部S:春夏に着るようなウェアと比べると、かなりゴワゴワしているというか、着ごたえもありますよね。

浅見さん:生地が厚めっていうのには別の理由もありますよ。なんだと思われますか?

編集部S:うーん、なんだろう・・・。手触りからしたら、ハードシェルは、すこしザラザラしているというか。

浅見さん:いい線行ってます! 雪山におけるリスクといえば滑落です。もしそうなった時、生地の表面がなめらかだとサーッと滑ってしまいますが、この生地感は雪との間に摩擦を生んで、すべり落ちる勢いを減らすという目的もあるんです。"ハード"とは、身体を守るための硬さでもあるんですよね。

編集部S:そう考えると、ハードシェルって自分の身体の一番外にあるものですし、命に直結してる重要なアイテムなんだなあ。

浅見さん:ちなみに雪山のジャケットって、どちらかといえば地味な色味が多いように思いませんか?(笑)

編集部S:確かに、黒とか緑とか、落ち着いた色が多いような気もしますけど・・・。

浅見さん:それに対して、レインウェアは明るい色が多いように感じます。これは、自分の存在を知らせるための視認性を確保する意味もあるんですよ。

編集部S:少し派手かなーって思ったりしますけど、元をたどれば色にも意味があるんですね。 じゃあ当然ハードシェルにも・・・。

浅見さん:はい、そうなんです。色味が抑えられているのは、暗い色を使うことによって太陽光を蓄えようというのが本来の始まりだったはずなんです。保温力を少しでもキープしておこうという目的ですね。それくらい、ハードシェルは、雪山の環境に合わせて設計されたウェアなんです。ぜひ色選びにも注意してみてくださいね。

重ね着の工夫で雪山を乗り切る

編集部S:ハードシェルの基本的なこと、知らないことも多かったです・・・。実際にはどんな着方をするウェアなんですか?

浅見さん:たとえばですが、メリノウール素材などのベースレイヤーの上に、フリースなどのミッドレイヤーを着ます。一般的にはその上にハードシェルを着ますが、ハードシェルを着る前にソフトシェルを着る形がおすすめです。

編集部S:ええっ、そんなに着て大丈夫なんですか?

浅見さん:個人的に北国の「2重窓効果」と呼んでいます。寒い地方ってよく玄関が2重になっていたりしますよね。外気との間に空気の壁をつくることで中の温かい空気を保つ工夫ですが、ソフトシェルを間に入れることで、内部で保温できている部分を外に逃がさないような働きをしてくれます。

編集部S:なるほどー。組み合わせるって発想はありませんでした。

浅見さん:でも、雪山へ出かけるといっても、スタート地点には雪がさほど無い場合もあるし、雪で照り返しが厳しく、正直暑さを感じることもあります。そういう状況で仮にハードシェルを脱いだとしても、防風力のあるソフトシェルを着ていると非常に便利なんですよ。天候が崩れたり、本当に寒くなったら、ハードシェルをその上に着込むという形がいいかな。

編集部S:それに、夏山のように歩きやすくないですし、いろんな動きをするから意外と暑くなりそうです。

浅見さん:雪山って寒いだけだと思いますよね。気温マイナスって聞くと、「めちゃめちゃ寒そう~」って思うかもしれないですけど、しっかり着込んだ状態で運動量も多いのでマイナス10でも汗をかく場合があります。その反面、じっとしていると0℃でも震えることもあります。

編集部S:かといって、ハードシェルなど防風性のあるウェアを着ていないと、雪や風に対処できないから、意外と着方が難しいのかもなあ。

浅見さん:いかに汗をかかずに、でも身体は冷やさずに行動するかがポイントになってきます。ハードシェルの高い防風性は、身体を冷やさないためには重要です。そのぶん、下着にも気をつかって欲しいです。吸汗拡散性との調湿機能を持ったメリノウール素材のウェアなどを着ると、汗をコントロールしやすくなると思います。

編集部S:具体的にはどんな時、どんな場所に持っていくべきウェアなんでしょうか。

浅見さん:季節で言うと、12月、1月あたりが厳冬期に該当しますが、その時に必要になってくるウェアです。関東近郊の山で言うなら八ヶ岳や赤城山の高さですかね。2000m中頃からは確実に必要になってくると思います。

編集部S:逆にそれより低山であれば持っていかなくていい、なんてことは?

浅見さん:雪山と言っても天気や登山道の状況によってさまざまなので一概には言えませんが、その可能性も確かにあります。たとえば積雪の少ない山で、スノートレッキングに近いことしかしないのあれば、少しオーバースペックかもしれませんよね。アイゼンやピッケルを使うような山になってくると必要だと思いますし、そうでなければ無理に使うことはないとも言えます。

編集部S:これから雪山を始めるってなると、いきなり「ハードシェルを着る」というのは感覚的にわかりにくいのかなあ。

浅見さん:おすすめしたいのは、比較的雪があっても歩きやすい山というのがあるので、初心者の方であればそこで慣れていくということです。特にロープウェイを使って高いところまで行けるところ、万が一でも人の助けを呼べるようなところは、雪の感触を確かめるにはいいかなと思います。ハードシェルにも、スノーシューやスノーハイクに適したライトウンインターモデルがありますよ。

ハードシェルは、細かく機能を確かめて総合的に選ぼう

編集部S:ハードシェル、けっこう値段が高い! 選ぶのもハードなんですけど・・・。

浅見さん:3万円台の低価格帯から8万円台の高価格帯までさまざまですよね。価格に関して言えば、ゴアテックスの有無が大きかったりします。

編集部S:ゴアテックスが使われていると、値段がやや高くなってくるってことですね。

浅見さん:わかりやすく言うとそういうことになります。そして、ゴアテックスに続いてくるのが、各ブランドオリジナルの防水透湿性生地を使っているものです。生地にも3レイヤー(表地・防水フィルム・裏地)と2レイヤー(表地・防水フィルム)のものがあって、3レイヤーが主流です。裏地が無い2レイヤーだと、軽さというところでメリットが出てきます。

モデルは173cmでMサイズ着用。マムート・GORE-TEX GLACIER Jacketはゴアテックスを使用した3レイヤーのモデルになります(浅見さん)

編集部S:価格以外の大きな違いってありますか? 正直外見からではよくわからないけど。

浅見さん:スノースカートやベンチレーションの有無は大きいかもしれません。雪山の風って雪を吹き上げるので、スノースカートは雪の侵入を防ぎます。初心者の方にはこういったモデルがおすすめかな。でも、雪をかく動作をしているときには暑くなったりします。その点、ベンチレーションの有無や、スカートが取り外しできるかどうかはチェックしておいたほうが良いと思います。

スカートというのはウェア内部に仕込んである生地で、ボタンやゴムで身体に密着させると防風性が高まります(浅見さん)

編集部S:なるほど。外見だけではなく裏側もしっかり見ておかないといけないですね。

浅見さん:ちなみにファスナーを上まで閉めたとき、口元まで上がるものとそうでないものがあります。口元まであるタイプは、より厳しい気象条件を想定意識したつくりになっています。

モデルは173cmでMサイズ着用。左がマウンテンハードウェア・Commitment KS Jacket(写真左)と右がファイントラック・エバーブレスアクロジャケット(写真右)。右のジャケットは左に比べて口元近くまで生地があるのがわかります。ポケット(浅見さん)

編集部S:ポケットの位置とかもものによって微妙に違いますね。

浅見さん:そうですね。ポケットかと思ったらベンチレーションだったなんてこともあります(笑)。それも脇についていたり、お腹についていたり。中には袖にゴーグルポケットがあるものもあります。この辺りがメーカーで差がついてくるところですし、腕の見せどころになっているのかと思います。

マムート・GORE-TEX GLACIER Jacketは脇下にベンチレーションが付いています(写真左)。それから左腕にはゴーグルポケットがあります(写真右)。ちょっとした小物を入れておくのには便利です(浅見さん)

編集部S:細かいところを見ると、実際にはいろいろ差があるんですね。試着した時にチェックしたほうがいいところはありますか?

浅見さん:まずは服の上に着るウェアなので、中に着込むゆとりを確かめてください。あとはヘルメット着用という雪山もあるので、ヘルメットを着用し、その上からフードを被って動きにくくないかも確かめてみてください。

フードは収納できるものもありますが、実際に出してみて被ってみてください(浅見さん)

編集部S:実際に使用するシーンを想定しながら、ひとつひとつ確認していくってことですね!

浅見さん:腕を曲げてみたときに突っ張る感じがないのも重要です。細かいですけど、雪山用のグローブを着用してファスナーを締める、ボタンを留めるなどがきちんとできるか確かめてみてください。

雪山では、時に"ラッセル"という、ピッケルを身体の前で横に構える雪かきのような動作があったりします。腕の動かし具合がスムーズかどうか、ぜひ試してください(浅見さん)

編集部S:基本的には身長に合わせて選べばいいのでしょうか。

浅見さん:はい。ただし、海外メーカーだと海外サイズで表記されていることもあるので、日本サイズに合わせるように気をつけてください。あとは男女分かれているものが多いですので、それも確認するようにしてください。腕を上に伸ばしたときに、すその上がりが少ないものが理想ですよ。

腕をあげる動きも試してみてください。サイドのカッテイングが優れていると突っ張りが少ないと思います(浅見さん)。

編集部S:試すとひとつひとつ着心地が違うっていうのもスゴくわかりますね。スカートの有り無しだったり、ベンチレーターの位置だったり。もちろん見た目のカッコよさなんかも・・・。

浅見さん:ちなみに、ハードシェルって、実はライダーの方にも人気のアイテムなんです。それくらい機能性が高いウェアなんですよ。そういった、「せっかくなら日常の中でも使いたい」という視点で選ぶのもひとつアリなのかも。

編集部S:このフィット感がいいなと思ったウェアもあったし、使いやすさならこっちかなっていうのもあったし。難しいけど、値段も含めて総合的に選ぶというのが一番なんでしょうか。

浅見さん:「こういう時期にこういう場所でこういうことやりたい」っていう具体的なイメージがあると、僕もお店でアドバイスするにあたって絞込みができます。高いから良い、安いから良いっていうのは絶対に言えないアイテムだけに、着てみた時の納得感があるもの、それがベストですよ!

紹介した山道具

MAMMUT(マムート) GORE-TEX GLACIER Jacket
税込65,880円 ※好日山荘での販売価格

Mountain Hardwear(マウンテンハードウェア)コミットメント KS ジャケット
税込39,960円 ※好日山荘での販売価格

finetrack(ファイントラック) エバーブレスアクロジャケット
税込42,660円 ※好日山荘での販売価格

教えてくれた人

浅見 直紀

東京都出身。高校時代に屋久島へ行ったことをきっかけに登山の楽しさに目覚める。富士五湖や奥多摩などを中心に、通年で行きやすい山探しに余念がない。しかし好物は岩混じりの低山バリエーションルートという変わり者。

好日山荘 池袋西口店

日帰りハイキングから長期縦走、クライミング、沢登りまでさまざまな登山スタイルに対応する品揃えを誇る登山用品店。2階にある「マウントラボ」では、ロープワーク講習や山道具の選び方講座など、さまざまな勉強会が開催されている。

住所/東京都豊島区西池袋3丁目27-12 池袋ウエストパークビル
TEL/03-5958-4315
営業時間/11:00~21:00
アクセス/池袋駅西口方面「1b」出口すぐ。

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