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雪山、困ったり悩んだり(9)行ける?行けない? 雪山の天候判断を考えてみるPART1

登山技術 2017年01月16日

もう10年以上前、当時流行り始めていたネット登山のオフ会で、2月に箱根・金時山に登った。 天気予報は曇り。東京は青空、バスからは富士山もキレイに見えていたのに、登山口に近づくにつれて雲が厚みをおびてきた。乙女峠バス停に着いたら空は黒っぽい雲に覆われ、ちらちらと白い雪が舞っている。

天気予報は曇りだし、まあなんとかなるでしょ。

乙女峠までの樹林帯を抜け、外輪山の稜線に出る。雪がうっすらと積もり始めているので、持って来た軽アイゼンをつける。「雪山っぽくて楽しいね!」他の皆は嬉しそうだったが、予想に反して雪は少しずつ勢いを増している。風がないのが救いだな...と思いながらガスと雪で真っ白な山頂に立ち、茶店で十分温まり、雪の積もった登山道を下山した。

天気予報は見てきたけれど

山行の前には、誰でも天気予報などを参考に決行/中止を判断したり、当日の行動を調整したりすると思います。このときも、前日まで天気予報をチェックし「悪くならないだろう」と判断して決行したのです。それでも雪が降ったのでした。行程4時間弱の山だったこと、事前の告知で全員ある程度の装備や服装を揃えていたからことなきを得ましたが、もう少し行程の厳しい山だったら。山行自体は楽しかった思い出ですが、無事に終わってよかったと思い出します。

何をどう判断したらよいのか?

雪山登山では、天候判断が重要です。悪天候の中の行動は冷えや濡れで体に不調をきたすことがありますし、風雪や濃霧で道迷い、滑落事故や雪崩などのリスクも高まります。とはいえ、私はいまだに天候判断が苦手です。みなさんと一緒に勉強しようと思い、天候判断の考え方やポイントについて、山岳気象に詳しい気象予報士の猪熊隆之さんに解説をしてもらうことにしました。

山麓の天気予報と山の天気が違うのはなぜ?

一番私が迷うのは、山麓の天気予報と山の天気のズレ。低山ならそれほどの誤差はないと感じますが、標高の高い雪山だと「晴れると思ったのに悪かった」みたいなことが多い気がします。

「上昇気流が起きることで雲が発生し、天気は崩れていきます。平地の場合は低気圧や前線が来ることで上昇気流が起き、天気が崩れるのですが、山ではそうしたものがこなくても、風が吹くことで簡単に上昇気流が発生します。とくに、海側から風が吹くときは、海からの湿った空気が入りやすく、天気が崩れることがあります(猪熊さん)」

森林限界より上は要注意

「悪天候のときは山に行かない」と言われますが、中止/決行を決める基準も分かりづらいです。どう判断すればよいのでしょう。

「どんな悪天候でも、樹林帯の中では風はそれほど強く吹きませんから、行動できることがほとんどです。八ヶ岳を例に考えてみましょう。赤岳鉱泉や行者小屋までは樹林帯なので、多少の悪天候でも行動できます。しかしそこから先に進み、森林限界を越えると風が強まり、とくに稜線上では風の影響を強く受けます。登山前日に、登山当日の予想天気図を確認します。等圧線の間隔が狭くなっているようなとき(目安としては東京/名古屋の距離よりも狭いとき)は、森林限界より上での行動は控えます(猪熊さん)」

天気図なんて読めない・・・と思っていても、等圧線の間隔が狭いかどうかは見てわかりますよね。今は山行の途中でも、予想天気図などをウェブサイトで見ることができます。

降雪直後は雪崩のリスクも

「また、まとまった降雪のあった後は雪崩の危険があります。雪崩のリスクがある斜面や沢筋には入らないようにしましょう(猪熊さん)」

こちらは、山行の数日前から現地の天気を確認することで予測がつきます。

天気に詳しくなくても、事前に材料を揃えて判断することはできます。どうせわからないと諦めるのではなく、天気図を見るのに慣れたり、天気に目を向けたりすることも必要だと思いました。

教えてくれた人

猪熊隆之

気象予報士。国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンの代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「PRO TREK」アンバサダー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7700m付近まで)、剱岳北方稜線全山縦走などの登攀歴がある。日本テレビ『世界の果てまでイッテQ』の登山隊やNHK『グレートサミッツ』など国内外の撮影をサポートしているほか、山岳交通機関、スキー場、旅行会社、山小屋などに天気情報を配信し、高い信頼を得ている。

猪熊さんが代表を務める株式会社ヤマテンでは、「山の天気予報」というサイトで、全国18山域59山の山頂予報、大荒れ情報、今週末のおすすめ山域、専門天気図、ライブカメラなどの情報を配信しています。月額324円の有料サービスです。申込み方法や詳しいサービス内容は下記をご確認ください。

西野淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行うフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。雪山登山歴は10年、好きな雪山は赤岳(笑)

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