エマージェンシーキットを作ってみよう

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文=小川郁代

Report04 エマージェンシーキットを作ってみよう

みなさん、ゴールデンウィークはどこの山で過ごしましたか? 私はいつもの山仲間たちと東京都最高峰・2017年の山・雲取山に登ってきました。去年の連休は甲武信ヶ岳に行ったのですが、その時は新調した登山靴がまだ馴染んでいなくて、後半は靴擦れに悩まされました。

幸い大事には至りませんでしたが、普段の生活ではちょっとしたことも、山では死活問題になりかねません。
やはり備えあれば憂いなし。トラブルに備えて事前の準備をしっかりしておくことが大切です。そこで今回は、山の必需品、エマージェンシーキットについて考えてみましょう。

エマージェンシーキットとは、その名の通り緊急時に備えて用意しておくものをまとめて呼びます。あらかじめセットになっているものも販売されていますが、人それぞれに必要なものが違ったり、使い慣れたものがあったりするなら、自分でオリジナルのエマージェンシーキットをつくってみるのもいいでしょう。その保管や携行に「ジップロック」が大活躍します。それぞれの特徴を踏まえて、自分にとってのベストキットを完成させましょう。

では僕がオリジナルのキットを実際に作ってみます。普段山に行く時に最低限必要なものは持っているのですが、正直なところこれまでは、あればバックパックの奥に、これはヒップベルトのポケットにとバラバラに入れていて、どこに何があるか把握できていませんでした。これではいざという時に、荷物を全部バックパックから出して探し回ることになります。いつか整理しようと思っていたので、ちょうどいいチャンスです。

必要なアイテムを確認

市販のものやいろいろな資料をみても、エマージェンシーキットの内容は、大筋では同じでも中身が少しずつ違います。いろいろな資料を参考に、自分に必要だと思うものを選んでみました。携帯の予備バッテリーやコード類など、デジタルツールは別にひとまとめにするので、それ以外のものをセレクトします。

普段から使っているものに加えてドラッグストアや登山用品店を回って集めたものがこちら。

頻繁に使うもの

胃薬  下痢止め コンタクトレンズの予備 鎮痛剤 傷テープ、靴擦れ用パッド各種
消毒用アルコール シャクヤクカンゾウトウ 葛根湯 関節痛用の漢方薬 虫刺され薬 目薬  ハッカ油

あまり頻繁に使わないもの

三角巾 ガーゼ 防水パッド ポイズンリムーバー 滅菌ガーゼ エマージェンシーシート 体温計  爪きり とげ抜き テーピングテープ サージカルテープ 使い捨て手袋 冷却用シート

比較的頻繁に使うものと、あまり使わない(使いたくない)ものに分けてパッキングすることにします。

パッキングに使うのは【ジップロック コンテナー】

  • 中身が見えるので必要なものをすぐに取り出せる
  • 密閉性が高く、汗や雨からガードできる
  • 軽くて持ち運びが便利
  • クスリなども包材から押し出されず持ち運べる
  • 中身が見やすく取り出しやすいので、ふたを開ければツールトレイとして使える
  • 手に入りやすく、汚れたら気軽に取り替えられるので、いつも清潔に保てる


これらの特徴が、エマージェンシーキットを収納するのに、まさにピッタリです。

頻繁に使うものは 【コンテナー 長方形 300ml】 に収納しました。

細々した薬なども、すばやく取り出せるようバックパックの雨蓋に入れておくつもり。

あまり頻繁に使わないものは、【コンテナー 長方形1100ml】にひとまとめに。

  • よく使う50㎜のテーピングテープがぴったり入る深さ。ゴミやホコリがつきやすいので、【お手軽バッグ】 に入れてから収納。
  • 写真では見えていませんが、ピンセットやとげ抜き、はさみなどは、まとめて封筒に入れました。これならバラバラになったり他のものを傷つける心配もなし
  • 体温計は使い捨て手袋をクッション代わりに

口の広い形がまさに救急箱のよう。容器を開けたまま必要なものをつぎつぎに取り出せるので、ケガの治療などをするときには効率よく作業ができます。

僕の場合はこの2サイズがそれぞれぴったりの大きさでした。

入れるものの量やサイズによって、それぞれちょうどいいサイズを選びましょう。

市販のエマージェンシーキットって赤色の入れ物が多いですよね? あれは荷物のなかからすばやく見つけ出すために、目立つ色にしているそうなんですが、コンテナーなら外からでも中身がわかるし、バックパックの中を手探りするだけでも、容器の形の大きさで、すぐに見つけられるところもいいと思います。

今回は緊急時にすばやく中身を確認するのに使いやすいという理由でコンテナーを使いましたが、コンパクト性を優先するなら、バッグ類を使用するのももちろんアリです。同じように中身が見えて雨や汗からガードできます。

ただし、ひとつポイントがあります。指で押すと錠剤やカプセルを取り出せるPTP包装(Press Through Package:プレス・スルー・パッケージ)の薬は、バックパックの中で押されているうちに、中身が出てしまうことがあります。そうすると何の薬か解らなくなったり錠剤自体が崩れてしまうことなどもあるので、錠剤はコンテナーなどの容器タイプに収納するのが断然おすすめです。


ちなみに、薬って箱から出すと、どうしても何の薬か、用法や用量などの情報が不足しがちになります。
そこで僕は、包装の上のスペースに薬の種類と1回の用量をマジックで書き込んでいます。また「この薬何年前のだっけ?」などとならないように、それぞれの消費期限を書いたメモも一緒に収納するようにしています。これ、便利で安全なのでみなさんもぜひ試してみてください!

コラム:新人アサカのなるほど「ジップロック」

こんな技ご存知ですか?

 以前登山中に岩にひじをぶつけて、ちょっとアザになっちゃったことがあるんですが、山小屋のおかあさんが「これで冷やしなさい」って渡してくれたのが、フリーザーバッグに入った氷でした。

 そのときに教えてもらったのが、登山中の捻挫などで、すぐにアイシングが必要なときに、フリーザーバッグにドロを入れて使う救急処置。タオルなどを濡らすよりも保冷力が長時間保つそうです。土に水を加えてドロ状にしてもいいし、池塘などから調達もできそう。空のフリーザーバッグも何枚かエマージェンシーキットに加えておくといいですね!

 ただ、山のものを取ったり動かしたりするのはNGなので、その場で使い、使ったあとは戻して帰りましょう。土を調達する時も、植物などを傷つけないように注意が必要ですね。

※「ジップロック」「イージージッパー」「スクリューロック」は旭化成ホームプロダクツ(株)の登録商標です。



山ジップロック研究所

生活必需品的存在の「ジップロック」や、山でも強力な便利アイテムです。パッキング・料理など、山の様々な場面でジップロックを使ったアイデアを紹介していきます。