今しかない! 今年は当たり年、天城山のアマギシャクナゲ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

春から夏に、派手で大きな花を咲かせるシャクナゲ (石楠花)は、ツツジ科の花だ。ツツジの仲間は、年によって当たり・ハズレがあるという。
伊豆半島の最高峰の天城山などでよく見られるアマギシャクナゲは、今年は当たり年で、まさに今が見頃を迎えている。

 

よく知られていることだが、ツツジやシャクナゲの花は、当たり年とそうでない年がある。当たり年とそうでない年の差は激しい。同じ花を見るために山に登るならば、当たり年に登ったほうがよいのは当然だ。

何気なく見たインターネットの情報で、2017年はアマギシャクナゲの当たり年だというので、先日、天城山に足を伸ばしてみた。

5月17日、天城山の主峰である万二郎岳・万三郎岳に登った。天気予報は曇りで、朝のうちは深い霧に包まれていたが、稜線を歩いているうちにガスも晴れ、お日様の光がちらちら入ってきて、だんだんよい感じになってきた。

まず登った万二郎岳の周囲にはトウゴクミツバツツジの蕾がいっぱいあった。万二郎岳のトウゴクミツバツツジも今年は当たり年になる様子。例年ならば天城山のトウゴクミツバツツジは終わっているはずだが、今年は開花が遅れているようだ。

万二郎岳を越えて、石楠立(はなたて)あたりからアマギシャクナゲの木が出てくる。最初の一本は蕾もあり、そろそろ見ごろ。花色は濃紅色。すばらしい。

濃紅色のアマギシャクナゲ

しかしこの後、木は数多く出てくるが、どれも固い蕾ばかりであった。万三郎岳山頂周辺もたくさんのアマギシャクナゲの木があったが、どの木もたくさんの蕾だけをつけている。あと1週間以上後かなぁ、と思いつつ下山を始めた。

万三郎岳の少し奥の稜線まで歩いてから、北側斜面の急坂を降りる。滑りやすい岩場や長い階段の厳しい道だ。下りきると、トラバース道になるが、まだまだアップダウンがある。尾根を回ったときに思わず「あー!すごい!」と声が出た。暗い北斜面にそこだけ夕日が入ったように明るくアマギシャクナゲが咲いていたのだ。

今年の天城山のアマギシャクナゲは格別!

ほぼ一年中花を追いかけて飛び回っている私ではあるが、声が出るほど感動的な花との出会いはなかなかない。しかし、このアマギシャクナゲの花の美しさは格別であった。

尾根を回り込むたびにアマギシャクナゲの花が出てくる。花色も濃紅色、ほぼ白色、明るいピンク色と色変化も豊富である。稜線のアマギシャクナゲよりも木が大きく、より印象的であった。

感動の山歩きであった。稜線のアマギシャクナゲと今年は開花が遅れピンク色のアマギシャクナゲと同時に見ごろを迎える紅紫色のトウゴクミツバツツジの二重奏はこれからであろう。アマギシャクナゲを見るために天城山の万三郎に登るのは、今しかない! 

 

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

編集部おすすめ記事