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主要山域

南アルプス南部

南アルプス南部

写真:今野岳志  笊ヶ岳からの南アルプス南部。左から上河内岳、聖岳、赤石岳、荒川岳

 南アルプスは南北に延びる長大な尾根によって構成され、3000mを超える山は13座に及び、北アルプスとともに日本の屋根を形成している。南アルプスの中ほどに、静岡県と長野県を結ぶ三伏峠がある。一般的にはこの峠を境にして塩見岳以北を南アルプス北部、赤石岳から光岳までの山を南部と呼んでいる。
 しかし、光岳以南には南アルプスが好きな人たちにはたまらない魅力をもつ中ノ尾根山、不動岳、黒法師岳といった山々が主脈や枝尾根上に一段と高く頭を出している。光岳以南についてはさらに深い山ということもあり、ヤブ山志向の登山者たちには、アメリカの「ディープサウス」にあやかって「深南部」と呼ばれ、ひそかに愛されているのである。
 範囲は5万図を縦に大河原、赤石岳、井川、千頭と4枚並べたものになる。三伏峠から荒川前岳にはかけては静岡県側はなだらかだが、長野県側は急峻な谷や支稜となっている。尾根上は樹林帯で、面白くない区域といえる。荒川三山の一角、前岳は3000m級の山で、ここからが南部の核心部となる。東に張り出した尾根には高山植物がいっぱいの悪沢岳、千枚岳が連なる。荒川小屋から盟主、赤石岳へ登りなおす。山頂手前から東尾根が椹島(さわらじま)へ急角度で落ちる。百間平を過ぎ、大沢岳へ登ると中盛丸山、兎岳と上り下りの変化をつけ、最後の3000m峰の聖岳へ達する。茶臼岳まで行くと、展望の利いた尾根歩きも終わり、光岳までは樹林帯の道となる。易老(いろう)岳から面平に下る途中には、天然ヒノキの見事な大木群を見る。イザルが岳は砂地の広い山頂をもつ。センジが原の草原を過ぎると光岳山頂で、南部の山の終着となるが、光岳を境にいよいよ深南部の領域に入る。
 尾根はいくつにも細分されるが、百俣沢ノ頭から大無間山へ延びる大きな尾根は田代で消える。この尾根は比較的しっかりした踏み跡がついている。歩かれている支稜としては百俣沢ノ頭から寸又(すまた)林道へ下るもの、椹沢山から寸又林道へ下るもので、ここは倒木が多い。大根沢山から北東への尾根、大無間山から尾盛駅へも下れる。三隅池小屋跡から朝日岳の尾根はヤブがひどい。光岳から加々森山、中ノ尾根山、黒法師岳へ続く稜線が主脈となるが、さらに南下し、蕎麦粒山を経て沢口山から寸又峡へ下るのが深南部の主要コースといえる。中ノ尾根山から合地山も古くから歩かれているコース。黒法師岳から寸又峡は山慣れた人の一般向だが、バラ谷ノ頭から高塚山方面は猛烈なササ尾根で、深南部で一番きつい区間である。山に慣れ、地形や地図が読めるようになってくると、深南部の山は楽しさに事欠かない山域だといえる。

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南アルプス南部の主要な山

東岳

3,141m

赤石岳

3,121m

中岳

3,084m

前岳

3,068m

聖岳

3,013m

千枚岳

2,880m

大沢岳

2,820m

兎岳

2,818m

上河内岳

2,803m

笊ヶ岳

2,629m

茶臼岳

2,604m

光岳

2,592m

布引山

2,584m

仁田岳

2,524m

青薙山

2,406m

池口岳

2,392m

大無間山

2,330m