いるorいらない?トレッキングポールのキャップ問題
膝への負担軽減、雪の上でのバランス保持など、トレッキングポールの役割は大きく、多くの登山者が愛用しています。一方で、最近話題になっているのが、ポール使用による登山道への傷み。先端のキャップは「必ず付けて!」と言われますが・・・
日頃の山歩きでトレッキングポールを使っている方、とてもよく見かけるようになりました。年齢問わず老若男女、ダブルストックで颯爽と歩く姿が印象的です。より快適に安全にスピーディーに山を楽しみたいと、積極的にトレッキングポールを取り入れているという登山者が多いようですね。
ところであなたは無雪期の登山で、ポールの先にキャップを装着して歩いていますか?「えっ、キャップなんて付ける意味あるの?」「最初は付けていたけれど、すぐに失くしちゃって...」という方もいらっしゃると思います。そこで今日は、トレッキングポールの一番先端の尖った部分にゴムキャップを装着する意味についてお話ししたいと思います。
登山道や自然を保護するためには、ゴムキャップが不可欠
実はこのキャップ、雪のない登山道では本来装着して使うものなのです。一番の目的は登山道や木の根、植物などを保護すること。つまり環境保護ということです。特に木道ではトレッキングポールによる損傷を防ぐため、木道が敷かれている尾瀬のような湿地帯を歩く際は必ずキャップを装着しましょう。
もしゴムキャップが付いていないポールで、たくさんの登山者が地面を付きながら歩くとすると、山への影響はどうなるでしょうか。多くの登山者が歩く登山道では、次第に地面に穴があいてしまいます。すると雨が降ったときにその穴から浸食が広がり、登山道や周囲の植生にも影響を与えてしまいます。
登山道は必ず誰かの手によって整備されていますし、長い年月をかけて育まれてきた生態系は絶対に変えてはいけないものです。自分一人ならそんなに影響ないだろうとつい思いがちですが、「山を歩かせてもらっている」という意識を忘れずにいたいものです。
思わぬケガを防ぐのもゴムキャップの役割
ゴムキャップの次の目的に、電車やバスなどでの移動中と登山中の安全をはかる意味合いがあります。トレッキングポールの鋭い先端は一般の人に見た目の恐怖心を与えてしまうだけでなく、何らかの拍子で先端が人に当たってしまっては大変です。登山者のマナーとして、移動中は先端部分を何かで覆う工夫が必要です。
そして登山中、キャップを装着していないポールの先端が勢いあまって、後ろを歩く人の顔に触れてしまった場合を想像してみてください。鋭くて硬い突起部分は、思わぬ怪我を引き起こしてしまう可能性があります。私自身、前を歩く人のポールの先が頬に触れてしまい、軽いすり傷になってしまったこともあります。もちろん意図的ではないにしても、他人に迷惑をかけてしまうこともあると、ぜひ覚えておきましょう。
安全性を考慮して、キャップを外す場面も
季節や天候、地形など山歩きにはいろいろなコンディションがありますので、登山中はずっとキャップをつけたままのほうがいいという訳ではありません。特に雪山でトレッキングポールを使う場合は、キャップを外したほうが滑りません。また雨が降っている時の岩場歩きでは、キャップなしのほうが滑りにくい場合もあります。そのような場所では、当然のことながら安全性を考慮して、ぜひキャップを外して使用してください。
プロフィール
田口 裕子
フリーランスのライター、編集者。学生時代より登山を始め、登山歴は25年のいわゆる中高年登山者の一人。徒登行山岳会所属。ハイキングから沢登り、アルパインクライミングまで山での遊びは何でも楽しんでしまう自由人。最近はロゲイニングとロングトレイルに夢中。
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