山を見る目が変わるかも!? 山の愉しみを教えてくれる本

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登山ガイド以外の山の本を読むことはありますか? ノンフィクション、植物、民話などさまざまなジャンルがありますが、今回はICI石井スポーツ登山本店で書籍コーナーを担当する間瀬 孝之さんに「山を見る目を変えてくれた本」というテーマで、おすすめの3冊をセレクトしてもらいました。山の世界を深めるためにも、ぜひ山の本に触れてみましょう!

 

今回ご紹介する3冊は、私に山の愉しみを教えてくれた座右の書です。

深田久弥『日本百名山』(新潮文庫)

登山を楽しんいる人でこの本を知らない方は少ないと思いますが、真っ先にあげたい一冊です。登山家で作家でもある深田久弥のベストセラーで、表紙はガイド本のように見えますが、彼が独自の選定基準で選んだ名峰百座について、その特徴を美しい文章でつづったれっきとした文学作品です。どんな山にもいわくいわれがあります。そんな歴史や風土もひっくるめてこの山があるんだよ、という普段は忘れていることを気付かせてくれる。単独行の多かったぼくには思索のよき相手としていつも携行していたものでした。

柳田国男『遠野物語』(新潮文庫)

続いては、『遠野物語』です。これは、民俗学者の柳田国男がまとめた岩手県の遠野地方に伝わる逸話、伝承などをまとめた説話集。大学生の頃、夏休みには地方の町や村のお年寄りを訪ねて民話(昔話、伝説等)の聴き取りをしていました。そんな折、何度も読み返していたのがこの本です。お婆ちゃんの語りに登場する河童やら座敷わらしやらのいる世界。里から山へと異界は拡がって行く。いつしかぼくの足はヤブに分け入り、伝説の沼、淵、滝なんぞを探して歩きまわるようになっていたのです。

※新潮文庫『遠野物語』が、2016年6月1日(水)に復刊予定となっています。

小泉 武栄『日本の山はなぜ美しい―山の自然学への招待』(古今書院)

標高が高い山は、なぜあんなに美しいのでしょう? この本は、日本の山の自然景観がなぜ生じるのかを、地質、地形、植生などの面から解説したものです。例えば栂池から白馬岳を歩いてみましょう。白っぽい道、茶色い道、黒い道と面白いように変化していきます。大地が活発に動いた証です。風衝草原のお花畑は気象のたまものですし、氷河の痕跡を見せる羊背岩などから大自然の営みが感じられます。まさに目からうろこ。ぼくは今まで何を見て山を歩いていたんだ!ちょっと視点を変えて観てみるだけで多様な山の美しさに驚かされます。この本に出会って山の全てを楽しむことができるようになりました。

プロフィール

間瀬 孝之

1957年神奈川県生まれ。NPO法人山の自然学クラブ 山の自然学指導員。日本地図センター公認マップリーダー。ICI石井スポーツ登山本店勤務。

ICI石井スポーツ登山本店

登る前にも後にも読みたい「山の本」

山に関する新刊の書評を中心に、山好きに聞いたとっておきもご紹介。

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