とても奥が深い世界 足元に咲くスミレたち
山ヤであれば知っておくと何かと役立つ山の雑学。今日は、植物写真家の高橋修さんに、山に咲く花の定番「スミレ」について語ってもらいました!
スミレといえば、身近な里山で、早春に咲く小さなかわいい花のイメージがある。しかし実際はコンクリートの間から、高山帯の稜線まで、幅広い環境に生えるたくましい植物なのだ。高尾山などの低山や里ではスミレの花はもう終盤だが、標高2,000m以上の中級山岳や、群落が見られる日本海側の豪雪地では、スミレの花が咲くのはこれからだ。
足元に咲くスミレは小さな花だが、存在感はある。スミレの花色は豊富で、黄色、白色、紅紫、青紫といろいろ。スミレ、オオタチツボスミレ、クモマスミレ、ミヤマスミレ、キバナノコマノツメなど、スミレにはたくさんの種類がある。ヤツガタケスミレやアワガタケスミレなど山の名前が付いたスミレもある。それぞれの種は、一見細かい差異で、見分けるのは難しく、ひとつひとつ覚えることはまた難しい。しかし、せっかく名前を覚えても、スミレの花の季節は短く、春から夏にかけて、またたくさん別の花が咲く。そんなこんなで翌年にはすっかりスミレのことは忘れてしまって、頭の中は空っぽ。あのスミレはなんだったっけ、なんてことが、毎年繰り返される。かわいい花を咲かせるスミレは、難解で奥が深い、近づきがたい植物なのだ。
プロフィール
髙橋 修
自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。
髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」
山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。