もし山でクマに出会ったら・・・クマのことがよくわかる3冊

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みなさん山のなかでクマに出会ったことはありますか? 突然出会ったら、こちらもクマもびっくりしますよね。今回は、「山の中でやたらとクマに出会ってしまう・・・」というICI石井スポーツ登山本店の間瀬さんが、クマのことがよく分かる3冊を教えてくれました! 最近、クマに関するニュースをよく見かけるようになりました。彼らのことを知って、クマとの正しい付き合い方を学んでみませんか?

 

今日は、クマの話をしたいと思います。

何十年も山を歩き回ってきて、はじめてクマに遭遇したのは10年ほど前のことです。それ以来、毎年出会うようになってしまいました。鈴を鳴らそうが、笛を吹こうが、出くわすときはバッタリと出くわすのです。そんなある年のこと、二日続けて同じクマと遭うはめになってしまいました・・・。

秋も深まった東北のとある山の避難小屋。日没にはまだ間がある刻限で、空はパステルブルーに茜色がまざってきます。一眼レフカメラを胸元に両手でしっかり持って、小屋のサンダルを履いてパタパタと階段状の道を下ります。少し開けた場所があって、そこは申し分のない絶景ポイントです。よし、撮るぞ!視線を足元から夕日に向けたそのとき・・・!ボクはムンクの《叫び》のように声にならない声をあげ、固まったのでした。脳内ホワイトアウト。わずか3メートルほど先にじぃーっとこちらを睨むクマがいるのです。数秒のにらめっこの後、仕方なさそうにクマは去って行きました。ボクの指はシャッターに触れているのに押すのを忘れて硬直していました。

翌日、日の出前に目を覚ますと、新鮮な空気を吸おうと外に出ます。重い引き戸を開け、閉めます。とたん、背筋に悪寒がはしります。「ふん!ふん」という鼻息。まじかに見るその目つきは昨日のクマに違いありません。「そうか、ここはお前の縄張りであったか。悪かったよ。さっさと帰るよ」と思いつつも体は動きません。クマはこちらを振り返りながら薮をかき分け姿を消していきました。

このように、私は山で何かとクマと出会うことが多く・・・その後いろいろとクマ関連の本を読みました。その中でおすすめの3冊がこれです。

 

『羆嵐』吉村昭(新潮文庫刊)

作家 吉村昭の小説ですが、実際の事件をもとに書かれています。怖い話ではありますが羆の恐さだけではなく、危機に直面したときの人間の恐さを描いた作品といえます。

 

『羆撃ち』久保俊治(小学館文庫刊)

羆ハンター久保俊治と愛犬フチとの物語。若くしてアメリカへ渡り、プロの狩猟ハンターとして腕を磨いた久保さん。やがて北海道へ帰り、唯一の羆ハンターとして原野を駆けめぐります。フチとの交感や大自然での迫真に満ちた体験が感動を呼んだ作品です。

 

『山でクマに会う方法』米田一彦(ヤマケイ文庫刊)

ツキノワグマの研究をされている米田一彦の本。クマとの出会い1000回以上という著者がクマと人との共生を願って書かれました。クマに会いたい人も会いたくない人もきっと役に立つ本ですよ。

プロフィール

間瀬 孝之

1957年神奈川県生まれ。NPO法人山の自然学クラブ 山の自然学指導員。日本地図センター公認マップリーダー。ICI石井スポーツ登山本店勤務。

ICI石井スポーツ登山本店

登る前にも後にも読みたい「山の本」

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