美しいものには毒がある! レンゲツツジが草原に群生する理由

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5月下旬あたりから山地で見かけることが増える「レンゲツツジ」。オレンジ色の花が群生している様子はとても美しく、初夏の山の楽しみの1つとなっている。今回は、植物写真家の高橋修さんがレンゲツツジが群生するワケを解説してくれました!

 

レンゲツツジは漢字で書くと、「蓮華躑躅」。ひとつの枝からたくさん蕾が出る様子を蓮華(ハスの花のこと)に見立てて名づけられた。花もきれいだが、蕾も大きく、花数も多く、とても美しいツツジで、初夏の高原を染め上げるように群生することがある。

レンゲツツジはひとつの枝から2~8個の朱橙色の花が咲かせ、本州に生えるツツジの中で花は最も大きい。同じころヤマツツジも咲くが、ヤマツツジの花は朱色、小さめで、花は一枝に2~3個しかつかないことで見分けられる。

高ボッチ高原や美ヶ原などのレンゲツツジ群生地が有名。これらの場所には牧場がある、またはあった場所という共通点がある。山の上の高原には大きな木が少なく、牛を自由に放牧する牧場として利用するには便利な場所である。


そのような高原にもともと生えていたレンゲツツジの葉と花、根には実は有毒成分が含まれている。牛は有毒のレンゲツツジをちゃんとわかって残し、ほかの植物は延々と食べ続ける。すると、牧場ではレンゲツツジだけが増え、ほかの木などの植物は減っていく。そして牧場にはレンゲツツジばかりの大群落ができあがる。我々の目を楽しませてくれるレンゲツツジの花畑は、牛によって作られた庭園のようなものだったのだ。

毒は蜜にも含まれる。子どものころツツジの花の蜜を吸ったことがある方も、この花の蜜はやめたほうがよい。レンゲツツジは毒で自分の身を守っているのだ。

 

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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