個性的でも使い勝手バツグン!山岳テント入門

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これからテント泊を始めたい人にとって不安なのは、なんとなくテントにつきまとう面倒くささ。重い、かさばる、組み立てが大変・・・。今回はその不安を、さかいやスポーツの高橋さんと一緒に解消しながら、初心者でも十分に扱える、ユニークで機能的なテントについてご紹介いただきました!

POINT
  • 軽量、コンパクト、風に強い山岳テント
  • 初心者でも簡単な直感的設営
  • "オニ"が生みだすペグいらずの前室

山岳テントの基本を学ぶ

編集部S:小屋泊より自由にプライベートを過ごせるテント泊に憧れているのですが、どのようなものを選べばいいのか?さらにいざ買ったとしても組み立てがイマイチ不安で・・・こんな僕でも大丈夫でしょうか?

高橋さん:最近の山岳用テントはどのメーカーも各社工夫してつくられていて、初心者でも簡単に設営できるような製品が多くなっていますよ。よかったらテント選び、お手伝いしましょうか?

さかいやスポーツキャンプ&クライミング館のテント売り場。国産テントから海外ブランドのテントまでさまざま。

編集部S:よろしくおねがいします。そういえばキャンプで使うテントが実家にあったような気がするんですけど、あれじゃだめなんでしょうか・・・?

高橋さん:ダメではないのですが、一般のキャンプ場やオートキャンプで使う大型のテントは、登山に持っていくものとは別物ですね。

編集部S:えっ、そうなんだ。使えそうだと思ったのに・・・。どこが違うんですか?

高橋さん:登山用テントは、自分の足で装備を持って登らなきゃいけないわけですから、まず重さが全く違いますよね。それに合わせて高地になれば強風のシチュエーションも増えますから、耐風性も備えた機能性の高いものが求められます。

編集部S:確かに重かったからあれを持っていくとなると大変すぎますね。キャンプテントに限らず、山岳テントもやっぱり長方形とか、四角形になっているものが基本ですか?

高橋さん:全てがそうではないですが基本的にはそうですね。ポールを2本使い、クロスさせる形で自立させるものが多いからです。ポールがしなることで風の力を受け流してくれるので、このクロスドームがシンプルながら一番強いんですよ。

編集部S:ポールが多いからといって必ずしも風に強いとは限らないんですね。

高橋さん:ポールの本数もそうですが、基本的に機能が増えるほどテントの重量は上がってしまいます。軽量でコンパクト、そして風に強いというバランスのとれたものを選ぶことが山岳テントにおいては重要です。

軽量・コンパクトで簡単設営

編集部S:これから選ぶとすれば、やっぱりシンプルなクロスドームタイプの自立式テントを買っておけば間違いないということですよね。

高橋さん:定番商品であればその形が多いですからね。でもこれから買うなら、ちょっとおもしろいテントがあるので見てみませんか?

編集部S:えっ、初めて買うテントで遊んじゃって大丈夫でしょうか?(笑)

高橋さん:いえいえ、個性的だけど気が利いた商品で、初心者の方でも使い勝手がいいですよ。アライテントが出している「オニドーム」というテントなんですが、1290グラム(1人用の場合)という軽さでありながら、しっかりとスペックを保っているテントなんです。

編集部S:オニですか。なんだかユニークなネーミングですね。

コンパクトな本体。底面にもオニのデザインがあしらわれていてカワイイですよね。(高橋さん)

高橋さん:名前の由来は・・・後でお見せしますね。まずは組み立ててみましょうか。骨になるポールは2本で、ポールスリーブにクロスさせて入れていきます。

編集部S:テントって正直一人で組み立てるの大変ですよね・・・。なんかみんなで協力しながら設営してるイメージ。

高橋さん:意外とそうでもないですよ。片方が袋状のホルダーになっているので、奥まで入れたら手前側をハトメに差せばおしまいです。それが2本完了すればほとんど組み立ては終わったようなものです。

ポールを奥まで入れたら、あとは手前側をハトメに差し込みます(高橋さん)

編集部S:ほんとだ、もうテントの形になっちゃった!

高橋さん:本体はこれだけです。全然設営って感じでもないんですよ。あとは雨などに強いフライシートをかけるんですが、ワンタッチバックルになっているので、カシャッとやれば片側は終わり。あとは逆側をさっきのピンにつなぎ留めれば完成です。

フライシートも片側はワンタッチ。これなら力の有り無しも問題になりません(高橋さん)

編集部S:えっ、簡単すぎません?(笑)

高橋さん:あとは四隅にペグを打って張り綱で固定すれば完璧です。水と食料を持って行って、これで泊まれちゃうってスゴくないですか?(笑)

一人用オニドームの完成全景。やや台形の形になったシンプルなクロスドームです(高橋さん)

気の利いたツノに秘密あり!

編集部S:なんか小難しい印象が変わりました。ところで"オニ"っていうのは・・・。

高橋さん:ちょっと横にひっくり返してみましょうか。

編集部S:あっ、このことかあ。オニの顔になってるんですね!

底辺を見るとオニの顔が現れる。この独特な形が、オニドームの前室を生み出しているんです(高橋さん)

高橋さん:"ネコ"じゃなくて、"オニ"なんです(笑) そして台形の長辺とオニのツノがつくりだしているのが、このモデルの特徴である「ペグダウンなしでつくれる前室」なんです。

カバーをめくれば、本体とカバーの間に小さなスペースが確認できます。これが前室です(高橋さん)

編集部S:前室って、荷物を置いたりする便利なあのスペースですよね。

高橋さん:普通はフライシートの先を伸ばしてペグダウンしてつくるんですけど、ペグを打つのって正直めんどくさいじゃないですか。でも前室はやっぱり欲しい。その作業を減らしたのにも関わらず、"オニ"っていうアイデアで解決しちゃった。

編集部S:やっぱりテントの中になんでも入れてしまうっていうのは抵抗があるから、少しでも前室みたいなスペースがあれば嬉しいなあ。こんなに近くにあるっていうのも使い勝手が良さそう!

高橋さん:登山で汚れた靴とか服とかは寝床には入れたくない・・・。そんな日本人的な心情をうまく拾ってますよね。

荷物を置く他に、テント周辺での調理なども快適に。調理は必ず前室の外で行いましょう(高橋さん)

編集部S:寝る場所はその分狭くなってるけど、そこにはモノがおけるんだから十分ですよね。寝てみても僕くらいなら余裕です。

テントの中も十分な広さ。寝てみても圧迫感はありません。天井横には通気口が付いていて、入口も開放すれば換気もバッチリです(高橋さん)

高橋さん:あとは天井サイドにベンチレーションがあって、入り口もダブルファスナーになっているので多少天気が悪くても通気を確保できますよ。

編集部S:風通しも良さそうだから、熱のこもりも防げて快適に過ごせそうですね。

高橋さん:機能が増えるとその分重くなったり、少し大げさな感じになったりしますが、これは基本的な機能を満たしながら、"オニ"っていうアイデアで軽くなってる。軽量でコンパクト、風に強いっていう山岳テントのポイントをしっかり抑えてくれてますよね。

編集部S:ユニークだけど、使いやすさは初心者の僕でも実感できたし、所有感があって愛着が持てそうなテントだなーって思いました!

高橋さん:機能性もキープしつつ、直感的に組み立てられるというのは、疲れていたり、天候が悪いときでも大きなアドバンテージになりますね。とてもバランスがいいので日本の山岳に合ったテントだと思います。

プロフィール

高橋 典孝(さかいやスポーツ ウェア館)

山の世界で働いて20年のベテラン。ウェアに関する知識はオタク級だが山道具も大好き!!
ゆったりオートキャンプからガッツリ登山まで何でもこなすが特に最近は、トレイルランニング、テンカラ釣りに没頭中。

さかいやスポーツ

創業以来、約60年にわたり神田神保町で全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店。ウェア、シューズ、ギアなど品目別の専門館を6店舗展開。ウェアや道具に詳しいスタッフが丁寧に解説してくれるので、ビギナーでも安心。

住所/東京都千代田区神田神保町2-48
TEL/03-3262-0432
営業時間/11:00~20:00
アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分

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