雪山、困ったり悩んだり(10)天気予報のチェックポイントは? 雪山の天候判断を考えてみるPART2

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前回に引き続き、気象予報士の猪熊隆之さんに山の天候判断について解説していただきました。

山に雪をもたらす気圧配置

今さらな質問ですが、冬山登山で気になる、天気予報の番組でもよく出てくる「冬型の気圧配置」ってどういう状況なのでしょうか?

「中国大陸に高気圧、日本の北や東に低気圧がある気圧配置のことです。このようなとき、日本列島は北西の季節風が吹きます。もともとは冷たく乾いた風ですが、日本海を渡る間に水蒸気や熱の補給を受けて、雲が発生します。この雲が日本列島に上陸すると、中央部の山々にぶつかって上昇するため発達し、風上側にある日本海側の山々に雨や雪をもたらします。山で雪や雨として水分を落とした空気は山の斜面を下りていきながら乾燥していき、風下側の太平洋側では天気がよくなるのです。

冬型の気圧配置が強いときは、谷川岳や北アルプスは猛吹雪、八ヶ岳や中央アルプスでも吹雪になります。一方で、太平洋側の低山は登山日和です(猪熊さん)」

強い寒気にも要注意

次に、これもまたニュースでよく出てくる「寒気」についても知りたいです。

「上空に寒気が入ると大気は不安定となり、日本海で発生する雪雲が発達します。寒気が浸入する日本海側の山では大雪となるので注意が必要です。目安としては高度5500m付近でマイナス30度以下の寒気。とくにマイナス36度以下の寒気に覆われると、一晩に1m以上積もることがあります(猪熊さん)」

山に特化した天気予報を活用しよう

現在は気象庁の天気予報以外にも、多くの気象予報サイトがありますが、山岳に特化した気象予報サイトとして最も信頼されているのが、猪熊さんが運営する株式会社ヤマテンの「山の天気予報」です。有料の会員登録をすると、全国18山域・59山の山頂の天気予報を見ることができます。翌々日までの天気、気温、風向・風速の6時間単位での予報のほか、山岳気象に詳しい気象予報士の解説コメントもつき、荒天で気象遭難のリスクが高まるときには大荒れ情報も随時発表されます。スマートフォンでの閲覧もできるので、電波がつながれば登山中にも活用できます。山域を指定してメール受信をすることもできるので、よく行く山域のある人はメールの登録をしておくとよいでしょう。

資料の揃う気象庁ホームページ

猪熊さんにおすすめの天気情報サイトを聞いてみたところ、ご自身もよく使っているのは気象庁のホームページだとのこと。天気予報だけでなく、天気図や降水量など、さまざまな情報が提供されています。

「上空の風を測定するウィンドプロファイラのデータは3000mの稜線でどのくらいの風が吹いているかの目安になりますし、高解像度降水ナウキャストは雨雲の最新状況や動きが分かるので、携帯が通じなくなる場所に入る前や、稜線でガスに巻かれたときなどに活用できます(猪熊さん)」

現地でできる天候判断

どんなに事前に綿密に情報を揃えても、天気予報は100%の未来を予測してくれるものではありません。天候の予測をしたうえで、現地での判断も重要となります。

「2016年のゴールデンウィーク前半は北アルプスで遭難が相次ぎましたが、これは天気予報より早く天気が崩れたことも原因のひとつかもしれません。レンズ雲や、山頂にべったりと張りついた雲がある場合そしてそれらが多くなったり、厚みを増していくときは、山では荒れた天気となっていきます。そんなときは天気予報を鵜呑みにするのではなく、空に浮かんでいる雲を信じてください。雲は空気の状態を語ってくれているのです(猪熊さん)」

レンズ雲が現れると山での荒天が予想される。(撮影:猪熊隆之)

八方から見た唐松岳方面の雲。山頂が雲でびっしりと覆われている。(撮影:猪熊隆之)

教えてくれた山センパイ

猪熊隆之さん

気象予報士。国内唯一の山岳気象専門会社ヤマテンの代表取締役。中央大学山岳部監督。国立登山研修所専門調査委員及び講師。カシオ「PRO TREK」アンバサダー。チョムカンリ登頂(チベット)、エベレスト西稜(7700m付近まで)、剱岳北方稜線全山縦走などの登攀歴がある。日本テレビ『世界の果てまでイッテQ』の登山隊やNHK『グレートサミッツ』など国内外の撮影をサポートしているほか、山岳交通機関、スキー場、旅行会社、山小屋などに天気情報を配信し、高い信頼を得ている。

猪熊さんが代表を務める株式会社ヤマテンでは、「山の天気予報」というサイトで、全国18山域59山の山頂予報、大荒れ情報、今週末のおすすめ山域、専門天気図、ライブカメラなどの情報を配信しています。月額324円の有料サービスです。申込み方法や詳しいサービス内容は下記をご確認ください。

【山の天気予報】https://i.yamatenki.co.jp/


【聞き手】
西野淑子さん(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行うフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。雪山登山歴は10年、好きな雪山は赤岳(笑)