雪山、困ったり悩んだり(11)たくさん山に行こう~すべての経験は次の山行への糧となる

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私を育ててくれた赤岳

わけもわからず雪の赤岳を目指して手痛い目に遭って、山頂に立てたのはその2年後。それから何度も、いろいろなルートから、いろいろなパートナーと赤岳に登りました。絶好のコンディションの中、楽々と登頂できたこともありますし、風雪にまみれたことも、深雪ラッセルにめげて途中で引き返したこともあります。登山はスタンプラリーではないので、一度登れたからオシマイ、ノルマクリアではありません。積雪や天候で山は劇的に姿を変え、そのたびに私は歩き方、過ごし方を赤岳から学んできたのだと思います。

トライ&エラーの積み重ね

たくさんいい思いをした山行より、うまく行かなかった山行のほうが記憶に残り、失敗ほどノウハウとして蓄積されるものです。レイヤリングを失敗して汗だくになってしまったら、次からはウェアリングを工夫するでしょう。暴風雪で身動きが取れなくて怖い思いをすれば、天候判断を慎重にするようになりますし、シャリばてになれば、食べる量やタイミングを工夫します。遭難に至らない程度の小さな失敗をたくさんすることが、登山では大切なのではないかと思います。そうして得られたノウハウは自分の力で得た、生きた知識、技術です。

失敗から学ぶこと

もちろん、大きな失敗をせずに済み、経験を重ねられるならそれに越したことはありません。大切なのは「同じ失敗を繰り返さないこと」だと思います。ただ漫然と山に行き「無事に帰れたからまあいいか」「山で痛い目を見るのはすごい山に行ってる証だ」と受け流していたら、同じ失敗を何度も繰り返し、いずれ深刻な事故につながるでしょう。なぜ失敗したのか、どうすればうまくいくのかを自分の頭で考え、実践することは、雪山に限らず大切なことです。

リスクはゼロにはできない

雪山は楽しいだけの場所ではありません。非常に厳しい環境のなかで、ひとたびボタンを掛け違えれば生命を危険にさらしてしまうこともあります。実際、毎年、山で命を失う人がいます。その誰もが自ら望んで命を失っているわけではありません。準備を万全にすればリスクを減らすことはできますが、100%の安全・安心が保証されるものでもありません。

楽しいのも、苦しいのも山の魅力

それでも、雪山はとても魅力的です。真っ白い雪を踏みしめて山の頂を目指し、山頂から眺める青と白の世界の美しさに心を奪われる・・・。雪山に行ってみたいと思ったら、そこからがスタートです。準備を進め、一歩踏み出してみましょう。そして、もっと雪山を知りたいと思ったら、どんどん山へ行きましょう。真摯に山に向き合えば向き合うほど、楽しい一方で困ったり、悩んだりの連続だと思います。でもそれでよいのです。山で得たものはすべてが次の山行の糧となるのですから。

教えてくれた山センパイ

西野淑子さん(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行うフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。雪山登山歴は10年、好きな雪山は赤岳(笑)