GW後半、18件の山岳遭難が発生、うち4件は死亡事故。島崎三歩の「山岳通信」 第70号

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長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を配信している。
2017年5月16日に配信された第70号では、ゴールデンウィーク後半に多発した遭難事故について触れている。

 

5月16日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第70号では、5月1日~7日の間に起きた山岳遭難の遭難事例が掲載されている。この期間はゴールデンウィークの後半の連休にあたり、多くの遭難事故が発生した。

期間中に報告されている事故は18件、うち死亡事故が4件だった。2017年のゴールデンウィーク(4月29日~5月7日)は、9日間で23件29人の山岳遭難が発生することとなった。これは昨年よりも8件多い結果とで、過去6年の平均(18.6件)から比較しても、山岳遭難件数の多いゴールデンウィークとなった。

以下にゴールデンウィーク後半の山岳遭難詳細を、抜粋・掲載する。

 

5月1日~7日の信州の山岳遭難現場より

■5月1日

  • 5月1日、北アルプス北穂高岳にて、82歳男性が山頂付近で足を踏み外し、北穂沢方向へ滑落し、頭部外傷等の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリにより、無事救助された。

  • 5月1日、北アルプス八方尾根にて、29歳女性が八方尾根スキー場のコース外斜面へ入り込んだ後に道に迷い、沢筋の川に落水して低体温症により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリにより、無事救助された。

  • 5月1日、北アルプス前穂高岳にて、43歳男性および28歳男性の2人パーティーが、最低コルから稜線を外れて岳沢方向を目指したものの道に迷い、天候不良も伴い大滝上部付近で行動不能となる山岳遭難が発生。翌2 日に、県警ヘリにより無事救助された。

■5月2日

  • 5月2日、中央アルプス空木岳にて、57歳男性が小地獄から迷尾根の頭に向け、雪上をトラバース中、南方・荒井沢へ滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助したものの、死亡が確認された。

  • 5月2日、八ヶ岳・赤岳にて、49歳男性が南沢を下山中にアイゼンを石に引っかけ転倒。軽傷を負う山岳遭難が発生したが、茅野警察署山岳遭難救助隊が救助した。

■5月4日

  • 5月4日、北アルプス奥穂高岳にて、20歳男性が奥穂高南陵を登攀中、アイゼンを滑らせ岳沢方向へ滑落。多発外傷により死亡する山岳遭難が発生した。

  • 5月4日、北アルプス北穂高岳にて、29歳男性が北穂沢インゼル付近を登山中、発生した雪崩により滑落して左肩脱臼の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで無事救助された。

  • 5月4日、北アルプス奥穂高岳にて、52歳男性がバックカントリースキーで奥穂高岳コブ沢付近を滑走中に雪崩が発生し巻き込まれ、頭蓋底骨折などにより死亡する山岳遭難が発生した。

  • 5月4日、北アルプス白馬乗鞍岳にて、56歳男性がバックカントリーで天狗原下部を滑走中にバランスを崩し転倒。右足骨折などの重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで無事救助された。

■5月5日

  • 5月5日、北アルプス前穂高岳にて、73歳男性が前穂高岳北尾根の 3 峰をクライミング中に、何らかの原因により転落して死亡する山岳遭難が発生した。

  • 5月5日、北アルプス槍ヶ岳にて、43歳女性が槍沢付近を下山中に緩んだ雪に足をとられて転倒、右足骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで無事救助された。

  • 5月5日、南アルプス仙丈ヶ岳にて、30歳男性が小仙丈ヶ岳から藪沢小屋方向に向けて山スキーで滑走中、ビンディングがはずれ転倒、左足骨折などの重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 5月5日、下高井郡山ノ内町の山林で、83 歳が山菜取り中に滑落して肋骨骨折などの重傷を負う山岳遭難が発生。群馬県防災ヘリで救助された。

  • 5月5日、北アルプス栂池高原にて、70歳と68歳の男性、41歳と37歳の女性の4人が、栂池から金山沢を経由して猿倉へバックカントリースキーで下山する予定で行動していたが、ルートを間違えて道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。県警山岳遭難救助隊員が発見して同行下山した。

  • 5月5日、北アルプス・鍋冠山にて、53歳男性が日帰りの予定で鍋冠山を登山した後、下山中に道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。安曇野署員等が男性を発見救助した。

■5月7日

  • 5月7日、雨飾山の荒菅沢上部で、4 人パーティで登山中に、67歳男性が登山中に転倒して右手骨折の重傷、および66 歳が滑落して胸部に軽傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

  • 5月7日、北アルプス爺ヶ岳にて、60歳男性および57歳女性が爺ヶ岳南尾根を下山中にスリップし2人とも滑落・負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリおよび捜索隊により捜索し、翌8日捜索隊が発見。県警ヘリにより無事救助された。

  • 5月7日、上高地から入山した51歳男性が、行方不明のままとなっている。

 

長野県警山岳安全対策課からのアドバイス

残雪の多い山域に入山する際は、事前に積雪状況や天候・気温などをチェックし、慎重な判断をしてください。また、入山の際はビーコン・スコップ・ゾンデ棒などの装備品を携行して、雪崩の発生に十分な警戒をしてください。

山菜採りの道迷いや、滑落も発生しています。山菜採りは登山道のない山林に分け入って行いますので、一般的な登山以上に慎重な行動と適切な判断が必要です。

なお、下記URLより、「島崎三歩の山岳通信」バックナンバーもご覧いただけます。今後の登山にぜひ役立ててください。
http://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/
sangyo/kanko/sotaikyo/sangakutusin.html

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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