「山岳保険」という保険商品は存在しない!? 知らないと損する山岳保険の選び方

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「山岳保険」に加入しておくのは、自立した登山者の"たしなみ"といえるでしょう。ところで、ひとくちに山岳保険と言っても、何をもって山岳保険なのでしょうか?  そこで登山者が知っておくべき保険の知識を、「やまきふ共済会」の井関純二氏が徹底指南。

 

山岳保険の定義、知っていますか?

登山をする人であれば「山岳保険」という言葉を一度くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか? 山岳会などに入っていれば、「必ず入りなさい」と言われたことがあるのではないかと思います。しかし実は、日本には山岳保険という名称の保険商品の認可をもっている会社は存在しません。

雑誌には山岳保険への案内が掲載されているし、インターネットで検索すれば山岳保険加入を募集している会社がいくつか出てきます。世間でいわゆる「山岳保険」と呼ばれているものは、いったいどういう保険を指しているのでしょうか?

アウトドアショップに行くとさまざまな山岳保険のパンフレットがある


長野県で施行された登山安全条例では、登山計画書の提出義務などとあわせて「山岳保険」への加入を努力義務と定めています。そこで長野県の条例を確認すると、山岳保険について次のように定義しています。

「山岳遭難者の捜索又は救助について負担する費用に対して保険金、共済金その他これらに類するものが支払われるものをいう」

 

遭難時の捜索救助費用がカバーされるのが"山岳保険"

話は逸れますが、大阪や神戸などでは「自転車保険」への加入が条例で義務付けられたのをご存じでしょうか? 山岳保険と同様に「自転車保険」というものは実はありません。

山岳保険と同様に条例から定義を確認すると、大阪府では自転車の利用に係る交通事故により生じた他人の生命又は身体の被害に係る損害を填補することができる保険又は共済をいうとしています。

山岳保険と自転車保険、この2つには共通点があります。つまり「遭難時の捜索救助費用がカバーされる保険」であれば山岳保険と呼ばれるものではなくてもOK。「自転車事故での損害賠償がカバーされる保険」であれば自転車保険と呼ばれるものではなくてもOK、ということになるのです。
 
山岳保険(と呼ばれるもの。以下、山岳保険に統一)の中には、自転車保険(と呼ばれるもの。以下、自転車保険に統一)と同様に、他人をケガさせた(例:落石を起して怪我させたなど)場合の賠償を心配する人向けに、賠償責任特約(個人賠償責任補償特約や日常生活賠償特約等)が付いているものもあります。

この特約は登山中も含めた日常生活上の賠償責任を幅広くカバーするものなので、自転車での事故も対象となるのです。

つまり、この賠償責任特約が付いた山岳保険に入っていれば、自転車保険に入ったことにもなります。逆に自転車保険に遭難時の捜索救助費用がカバーされる特約を付ければ、山岳保険に入ったことにもなるのです。

このことからも、登山者が入るべきものは「山岳保険」ではなくても、「遭難時の捜索や救助費用がカバーされる保険」と考えた方が、無駄なく保険を選ぶ際に分かりやすくなりますので是非覚えておいてください。

 

プロフィール

井関 純二

千葉県出身。大学卒業後に保険会社勤務等を経て2014年にやまきふ共済会を設立。趣味は登山のトレーニングのために始めたランニングでサブ3ランナー。
やまきふ共済会の他に、山岳ガイドや登山者向けの各種保険を扱う(株)インスクエアコンサルティング代表取締役で社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。
⇒やまきふ共済会

知らないと損する山岳保険の知識

自立した登山者なら必ず加入しておきたい「山岳保険」ですが、その内容や詳細について、どれだけの人が知っているでしょうか? 「やまきふ共済会」の井関純二氏が、山岳保険の実際を徹底指南。

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