携帯性・軽量性・握りやすさ、どんなプラスアルファを求める? トレッキングポールの選び方

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近年では、登山者の必需品と言っていいほど、多くの人が愛用するトレッキングポール。身体への負担の軽減だけではなく、バランスを取る際にも利用されるので、雪道などでの体の支えとしても有効だ。
さまざまな場面で利用されるトレッキングポールの選び方のポイントを、好日山荘銀座店の栗山啓一さんに伺った。

 

POINT
  • コンパクト性を求めるならば折り畳み式、軽さを求めるならばカーボン製
  • 握りやすさ・使いやすさを求めるならばグリップのフィット感もチェック
  • 基本機能にプラスアルファが付くにつれて、値段が上がってくる

 

折り畳み式と収納式、基本的な違いは「大きさと軽さ」

編集部T:今日はトレッキングポールの選び方について教えてください。

栗山さん: トレッキングポールの役割はさまざまですが、登山者にとっていちばんの購入の動機は、下り道などで身体への衝撃の負担を軽減することです。膝の痛みを少しでも軽減したいという人が多いようです。それを大前提に考えて行きましょう。
まずトレッキングポールを単純に分類すると、1本タイプと2本タイプがあります。人間の脚は2本脚ですので、1本タイプだと3箇所、2本タイプだと4箇所に負荷が分散する形になります。2本タイプのほうが、ヒザへの負担を軽減する効果の実感を得やすいと思います。

編集部T: 1本タイプのメリットは、どんなことでしょうか?

栗山さん: 片手は空けておきたいという人や、それほど距離を歩かない場合には、1本タイプもおすすめです。軽量でコンパクトになる分、手軽に持ち歩けます。また、1本のほうが値段的に安いのも魅力です。グリップの形がT字形になっているモデルは上から体重をかけやすく、1本でもかなり負担を軽減できます。

1本タイプと2本タイプ。基本的には2本タイプがヒザへの負担を軽減する

編集部T: 次に選ぶポイントとなるのは、何でしょうか?

栗山さん:もう1つ大きな分類方法の1つが収納方法です。折り畳み式と、収納式があります。この収納方法の違いで、収納した時のサイズが大きく違います。

編集部T:比べてみると、圧倒的に折り畳み式が小さくなりますね。

栗山さん:はい、折畳式のほうがコンパクトになるし軽量のものが多いので、ザックの中に収納したい人向けです。公共交通機関を利用する機会の多い人、また岩場などに行く機会が多い人は、引っかかるリスクを軽減できる折り畳み式が良いでしょう。
収納式のものは、日帰り用のザックの大きさでは中に収納するのは難しいので、基本的にはザックの外に付ける形になります。

折り畳み式(右)と収納式(左)では、収納時のサイズにかなり違いがある

編集部T:折り畳み式と収納式では、ポールの強度に違いはあるのでしょうか?

栗山さん:基本的には、どちらも強度は十分で、大きな差はありません。ただ、折り畳み式は軽量化にこだわったものだと、少し強度は落ちるものもあります。安心感が欲しいという場合は、収納式を選んでも良いかもしれません。
もちろん、強度が足りないわけではないので、心配する必要はまったくありません。

編集部T:ポールの素材には、アルミとカーボンがありますね。基本的には軽さの違いでしょうか?

栗山さん:はい、カーボンのほうが圧倒的に軽くなります。また、カーボン製は"しなり"があるので、シャフト全体で衝撃を吸収するのも特徴です。
アルミは硬さがある分、カーボンと比較すると衝撃が腕にダイレクトに伝わります。とくに岩の上を付く場面や、アスファルトの上などだと、衝撃が大きくなります。ただし、アルミカーボンの多くは、アンチショック機能が付いています。アルミ製の場合は、この機能が付いているかどうかも注目してみてください。
カーボン製の場合は、シャフト全体で衝撃を吸収してくれます。アンチショック機能が付いているものもありますが、あまりこだわる必要はないでしょう。

編集部T:軽いもののほうが、やっぱり使いやすいですか?

栗山さん:使いやすさは人それぞれですが、岩場などのシチュエーションで使っていないときには、軽さ・コンパクトさは有利です。よりコンパクト性を求めるならば折り畳み式、軽さを求めるならば少し高価ですがカーボン製をおすすめします。

 

スタンダードなトレッキングポールに、どんな「プラスα」が欲しいかを考えよう

編集部T:ほかに選ぶポイントとしては何がありますか?

栗山さん:あとはグリップの形状にも注目してみてください。グリップについては、基本的には手に持って握ってもらって、しっくり来るものを選ぶのが良いと思います。好みや手の大きさで変わってくると思いますが――、例えばLEKIの商品などは、スタンダードな商品に比べると握りやすいのですが・・・。

編集部T:確かに、手にしっくり来ますね。

栗山さん:これは「エルゴノミックグリップ」というタイプのものですが、立体的で握りやすくなっています。トレッキングポールは、段差がある場所ではグリップの上に握り変えますが、このときのスムーズさやバランス感覚は、エルゴノミックグリップは扱いやすく、おすすめです。

エルゴノミックグリップ。丸く立体的な形状のグリップは握りやすく持ち替えやすい

編集部T:ところで、トレッキングポールを使っていると、先端のカバーを無くしてしまうことがよくあります。山でも、ポールの先端カバーをよく拾います。なくしてしまった場合や、取れにくくする方法はありますか?

栗山さん:なくしてしまった場合は、基本的には純正のものを購入してください。外れやすいという場合は、純正のものでなくても、少し小さいものを探すのも手ですが、基本は純正のものを選んでください。
そこでおすすめしているのが、先端から落ちにくいシナノ製のストッパー付きのキャップです。なくしてしまった場合はチョイスの1つとして検討してみてください。

シナノ製の「落ちにくい先ゴム」は紛失リスクを軽減

編集部T:最後に、トレッキングポールの選択のポイントをお願いします。

栗山さん:基本的に、登山ショップで販売されているトレッキングポールであれば、強度的・性能的には問題ないと思います。そこに、携帯性や軽量性、そしてグリップの握りやすさなどのプラスアルファを付けていくにつれて、値段が上がってくると考えてください。どこまでプラスアルファを求めるかが、選ぶポイントになると思います。スタンダードモデルから出発して、自分に必要な機能・性能は何かを考えてみてください。

 

プロフィール

銀座 好日山荘

日帰りハイキングから長期縦走、クライミング、雪山登山、沢登りまでさまざまな登山スタイルに対応する品揃えを誇る登山用品店。同じビルにはクライミングジム「グラビティリサーチ」が併設されており、ロープワーク講習や岩稜帯の歩き方など、さらなるステップアップを目指す登山者に向けてさまざまな講習会を開催中。

所在地/東京都中央区銀座6-6-1 銀座風月堂ビルB1・B2
TEL/ 03-6228-5018アクセス/銀座駅B7、B9出口より徒歩2分。有楽町駅南口より徒歩5分。
営業時間/月~金 12:00~21:00 土日祝 11:00~20:00
※コロナ禍で営業時間が変更になる場合があります
http://www.kojitusanso.jp/shop/kanto/ginza/

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