鎖場、岩場が怖い! 苦手な人が取るべき行動とは?

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峻険な岩稜が続く夏のアルプスを縦走するとなると、岩場・鎖場を通過する技術は必須です。足元が切れ落ちた岩場は、誰でも恐怖心を抱くものですが、この恐怖心を克服するには、どうすれば良いのでしょうか?

 

鎖場・岩場が怖くて苦手です

質問:
登山を初めて1年少々、夏はアルプスの山にも行くようになりましたが、岩場や鎖場などに出くわした時に、怖くてたいへんでした。高い山では岩場や鎖場は避けられないようですが、恐怖心を克服する方法や、岩場での注意点について教えてください。

 

怖いという感覚は正常な反応。自分なりの安全策が克服のカギ

露出した岩場、岩稜の連続するルート――。ある程度の規模の岩場や安全のためのクサリが設置された場所は、危険個所と言えるでしょう。そこでは整備された登山道を辿るのと違い、自分なりの動作や工夫が必要になってきます。

岩場がある箇所は、多くの場合が見晴らしがよく爽快である反面、険しい場所が長く下まで続いていている箇所では、やはり「恐い場所」であるのは間違いありません。
質問では「恐怖心を克服する方法を教えて」となっていますが、「恐い」という感覚は危険個所に対する正常な反応です。克服する方法は「自分なりに納得した安全策を考える」ことになると思います。

まず、同じように見える切り立った岩場でも、通過する前に状況をよく観察してみてください。単に通過する岩が難しいかどうかだけでなく、岩場の下は谷底までスッパリ切れ落ちているのか、密集したササヤブなのかでは、危険度は全く違います。
万一の時のためにできるだけトラブルの少ないルートを選び、傾斜が緩く、手がかり、足掛かりが安定的に辿れる行程を捜しましょう。

また、岩場の通過の原則をしっかり守ることです。「岩に張り付かない」、「手足四点のうち三点は固定して一点だけを動かす『三点支持』を守り慎重に通過する」という原則をしっかり行ってください。

クサリ場については、「こんなに太いクサリだから全力でしがみついて大丈夫」という気持ちで登らないことです。クサリが錆び付いたリングボルト一本に針金で付けてあるだけ・・・、という事例も少なくありません。クサリはあくまで、「安定的な手がかりの一つ」と考えましょう。

 

恐くなる前にロープなどで安全策をいちはやく取ることも有効

パーティ内に「岩場が恐い」という人がいる場合には、恐くなる前にロープを付けて下までは絶対に落ちない安全策をいちはやく取ることが最も有効です。

「いちいち、こんな場所でロープ出してたら時間かかっちゃうよ」というのは無能なリーダーの言葉です。ロープで安全を確保して「おっ! これなら平気さ!」と落ちつかせることで、岩にへばりつかずに、スイスイ行けるものです。この方が絶対に早くて安全です。

いちいちロープを出すのを面倒がっていると、永遠に目的地に着かない大変な事態になることもあります。そして、「岩・・・、それだけは練習しないことにしてるんだ、危ないから」などと避けずにおくべきです。簡単な岩場での動作や登り方・降り方、基本的なロープの使い方などは、登山を志す人は身につけておいた方がよい技術です。

奥穂高のザイテングラードなどでロープを使っていると、怪訝な顔をされる事が多いですが、昨年の9月には何件もの重大事故が、あの場所で起きた事を忘れててはなりません。

 

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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