避難小屋に泊まって登山したい場合の、ポイントと注意点

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登山地図を開くと見かける「避難小屋」。実際に小屋を覗くと、清潔で立派なものもあれば、年季の入った小粒なものもある。これらの小屋を利用して、登山をするときの注意点は?

 

避難小屋を利用して登山したい!

質問:
日帰り登山や山小屋を利用した登山を楽しんでいますが、もう少しフィールドを広げたいので、今度は避難小屋に泊まって行く山に挑戦したいと考えています。避難小屋利用の登山のポイントや注意点を教えてください。

 

地域・山域によって使用条件が異なるので、あらかじめ調査が必要

「避難小屋」とは、本来は登山が目的どおり遂行できないときに利用する認識でしょう。悪天候に見舞われたり、予定の個所まで安全に辿り着けそうもなかったりした時に、"転がり込む場所"として認識されている場合が多い場所です。

その一方で避難小屋と一言でいっても、その小屋の性格や、山域によって随分と考え方が違う事を知っておくべきでしょう。

例えば東北地方の避難小屋では、避難小屋への宿泊が前提となっている場所もあります。高層湿原やお花畑、草原が多く、テント泊を多用すると山そのものにダメージを与える山域では、テント泊は非常時以外は避けるのが一般的です。このため極力、避難小屋を使用することになります。

大朝日岳・大朝日岳山頂避難小屋(大朝日小屋)。100人収容の立派な避難小屋で
夏は管理人も常駐する(写真:ひまじいさんの登山記録より)

他方で秩父多摩甲斐国立公園の避難小屋などでは、「あらかじめ宿泊予定地として利用する事は極力避けるように」と明記してあり、「非常時に使う避難場所」として存在している小屋となります。

いずれにしても、一部の避難小屋を除いては、管理人などがいない、その場所を利用する登山者の自主管理が原則となっているのが一般的です。寝具や燃料などは無いのが普通で、登山者自身が自分の手で担ぎ上げ、使用するのが避難小屋に泊まる場合の原則となります。

  

限られた宿泊場所、譲り合いの精神と「来た時よりもキレイに!」を心掛けよう

避難小屋には清潔で大規模な小屋がある一方で、谷川連峰のように何人かが非常時に膝を抱えて使用するような作りの小さなシェルターのようなものもあります。事前に、小屋の規模や様子を確認しておくべきでしょう。

谷川連峰・エビス大黒避難小屋。数人が入るのがやっとだ。(写真:フクミドリさんの登山記録より)

特に規模については注意が必要です。昔の話になりますが、私は奥多摩のある避難小屋で7人パーティで収容人数10人程度の避難小屋に泊まる登山を行なったときの話ですが・・・。

「晩秋の平日ならば、予定して泊まっても大丈夫だろう」とタカをくくっていましたが、夕方から日没にかけて我々以外に5人の登山者が訪れたのです。床の上に降りて泊まったりして場所は譲りましたが、不愉快な思いをさせた苦い経験があります。

単独行や2~3人ならば、まぁ問題にはならないと思いますが、一定以上の人数で小屋を占領するような使い方は避けるのもマナーでしょう。

登山では「早い者勝ち」な面はあるので、遅く到着するのが肩身が狭くなるのは理解できます。しかし避難小屋は限られた場所であるのは変わりありません。先着の者も極力譲り合って使うのが山の常識です。
トイレや水場の使い方はもちろん、小屋を清潔に保ち戸締り(特に窓の閉め忘れなど)には充分に注意して来た時よりもキレイに使ってください。

余談になりますが、お金がなかった中学生や高校生の頃、東京都最高峰・雲取山の避難小屋によく泊まったなぁ・・・。今の小屋が建て替えられる前、ギーギー言う鉄板の入り口の扉に中世の「牢屋」を思わせる鉄格子の鉄板の窓。石油コンロ全盛の時代で小屋全体が石油臭く、トイレも無い小屋。それでもロケーションと雰囲気は最高で、長期滞在していた思い出が蘇ります。

今では、そんな登山はダメなんだろうな、と懐かしく思い出します。

 

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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