山で眠れない、安眠の方法をいろいろ考えてみた

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旅行先ではぐっすり眠れないという話はよく聞きますが、これは登山中でも同じこと。日中の行動で体はクタクタでも、まんじりともせず朝を迎えてしまった・・・。そんな経験がある人のために、山で熟睡するためのコツを考えてみました。

 

山小屋で眠れません。

質問:
山小屋での宿泊では、他の人のイビキなどの音や、歩く気配などが気になって眠れません。翌日の行動に差し支えることも多いのですが、安眠できる方法があれば教えてくださ。

 

無神経を自認する僕でも、実は中学生の純情な頃は、気分としては「一睡もできなかった」感じで朝を迎えることもあったほど山で眠るのは不得手でした。

テントやツェルト泊では、外の風の音や雨の気配などが気になります。山小屋に泊まると、他の人のイビキや夜中にトイレに行く人の気配、さらには寒かったり暑かったりなど、変わらぬ枕と布団で寝る自宅のようにはいかないのが一般的です。

余談になりますが、最近では年齢と共に自分がイビキをかくことが多いらしく、朝になるとテントの中の全員が「うるさかった」と睨まれる事もあります。こればっかりは、対策はないよなぁ(笑)。

環境の変化と共に、山小屋で眠れないことの原因として有力なのが、高度に慣れていない問題もあるでしょう。標高が上がれば、意識していなくても酸素濃度は下がり呼吸は浅くなり、眠りも浅くなります。すると、ちょっとした刺激や物音に反応するのは仕方がありません。

納得のいく睡眠を得るには枕元に水とヘッドランプを用意し、目が覚めたら乾きを感じていなくても水を飲んで昼間の汗や呼気による脱水を補給しましょう。目覚めてすぐには眠れない時には、意識的に呼吸を深くして動悸や呼吸を落ちつかせる・・・、こんな事しか思いつきませんが、参考にしてみてください。

ほかにも、神経質な人は山小屋の布団の湿気を避けるために布団の襟元に日本手拭いをかけると良いらしいと聞いたことがあります。また、夕方以降は日本茶や紅茶、コーヒーなどのカフェインの強い飲み物は避け、深酒も控えた方が良いでしょう。
よく「眠れないので睡眠薬などを使う」という人もいますが、普段から使っている人であれば問題ありませんが、「山だから」と慣れない薬剤を使うのはオススメできません。慣れていないと気分が悪くなったり、不快で危険なこともあるようです。

それでも山で眠れないと悩む人へのアドバイスとして、「慣れない環境では眠れないのが当たり前。気にしないのも大切」と伝えることも多いです。そして「脳の神経の休息には『眠る』ということが大切だけど、しっかりと食べて水分を補給して横になっているだけで、身体の疲れは大半がとれるから大きな問題はない」と言うようにしています。

眠れない夜、考えるのは明日の行程だったり天候への不安だったりします。僕たちの仲間にイタル君という若手がいますが、彼は「横になって、瞬きしたら朝だった」という超お気楽山仲間です。「明日はアタシの風が吹く」くらいの楽観主義が、最大の安眠の薬なのかもしれません。

 

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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