日光白根山
栃木県と群馬県との県境にそびえる、日光火山群に属する溶岩円頂丘(石英安山岩)である。
日光火山群のなかで唯一噴火の記録のある火山で、最後の活動は1889年といわれているが、現在は活動を停止している。
西側にある菅(すげ)沼、丸(まる)沼は白根火山の溶岩流によって堰止められたものである。
全国各地に白根山という名の山があるが、それぞれの地方の名前を冠して呼ばれている。
この山も日光白根山、奥白根山などと呼ばれ、座禅山(ざぜんやま)、五色山、前白根(まえしらね)山などの2300mを超す山々に取り囲まれ、その内側にはコバルトブルーの水をたたえる五色沼、弥陀ガ池などの美しい湖沼や凹地があり、高山植物の宝庫でもある。
夏から秋のシーズンはいつ訪ねてもたくさんの花に会える山の1つである。シラネの名を持つ植物も多く、特に有名なシラネアオイは、古くは江戸時代の天保年間に発行された『日光山志』の中にも記され、弥陀ガ池周辺の群落は実に見事だったが、シカの食害などにより激減し、昔の面影はない。
白根山は山麓から見えにくいことなども手伝って、男体山や女峰山をはじめとする表日光連山の山々に比べると、かなりなじみの薄い山である。
しかし、周辺の高山から望むとき、関東以北の最高峰として、日光連山の盟主にふさわしい威厳と重厚さを兼ね備えた山容を誇る。白根山頂はさながら周りを絶壁や空堀で守られた古代の城塞を思わせる。二等三角点のある山頂からの展望はさえぎるものがなく、男体山をはじめ日光の山々、尾瀬、会津、上越の山々、皇海(すかい)山、遠く富士山など360度の大パノラマである。
また、この山は男体山(二荒山)の奥ノ院ともいわれ、大巳貴命が祭られ、峰修行の夏峰のコースでもあった。
深田久弥の『日本百名山』によれば、白根山の表口は上野(こうづけ)側であろうといわれており、地図上にも不動尊、六地蔵、大日如来、賽ノ磧などの信仰登山に由来する地名が残されている。しかし、現在はこのコースをたどる人は少なく、群馬側からの登山は菅沼を起点とするものがほとんどで、弥陀ガ池を経由して山頂まで3時間。
日光側からは、難コースではあるが、湯元温泉から外山尾根、前白根経由がこの山の最も魅力的なコースで、冬山登山にも利用され、山頂まで4時間30分。湯元温泉から中曽根、五色山、弥陀ガ池経由も同じくらいの時間を要する。また金精山(こんせいざん)、五色山経由のコースもあり、いくつかのコースを往路、復路で組合せてみるのも楽しいプランと思われる。
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