剱岳
剱岳は剱・立山連峰と呼ばれるように、北アルプス北部の立山三山や大日岳と同じ山域にある。地籍は富山県中新川郡立山町と上市町。
北アルプス南部の盟主、穂高連峰と同じように、いかにも日本アルプスの名にふさわしい岩峰で飛騨系閃緑(せんりよく)岩や斑糲(はんれい)岩が氷雪で削り出された氷食冠帽である。氷河の痕はU字谷が稜線を削ってできた「窓」と呼ばれる地形にも見られる。三ノ窓、小窓、大窓などだ。もちろんカール地形も剱沢などに見られる。
登山史としての初登頂は1909年、吉田孫四郎パーティにより長次郎谷から行われているが、その2年前に、すでに陸地測量部の柴崎芳太郎たちが測量のため登頂している。
前人未踏の岩峰と思われていた頂上で、彼らは思いがけない発見をした。槍の穂と錫杖、古い焚火の跡などであった。奈良時代のものらしい。隣の立山とともに修験道の霊場だったのだろう。
現在の一般登山道、別山尾根は、1913年に木暮理太郎、田部重治パーティが初トレースしている。日本でもトップクラスの岩峰でロックゲレンデとして超一流なので、それ以後はバリエーション・ルートをねらう多くのアルピニストにより、さまざまな登路、登攀ルートが開拓されてきた。1923年には今西錦司、西堀栄三郎などの京大パーティによるチンネやクレオパトラ・ニードル登攀など、未開拓の難ルートが登られてきた。豪雪地帯だけに豊富な残雪とすっきりした岩峰群の人気は高く、戦後の登山ブームも加えて多くのクライマーを迎えてきた。それだけに事故も多く、1966年に日本で初めて積雪期登山の届出条例が発令されている。
ロッククライミングの対象として人気の高い三ノ窓や小窓、池(いけ)ノ谷(たん)、東大谷(ひがしおおたん)などにはチンネ、ジャングルム、クレオパトラ・ニードル、小窓ノ王、ドームなどと名づけられた岩壁や岩塔がクライマーの血を躍らせてくれる。
一般登山道は別山尾根。別山乗越から行っても剱沢から入っても一服剱(いつぷくつるぎ)で合流する。前剱を越え、途中、カニのヨコバイ、カニのタテバイなど岩壁を行く所があり緊張する。所要3時間30分。
もう1つは剱岳へ西から突き上げる早月(はやつき)尾根。標高差が大きく、途中の早月小屋で泊まる健脚向。馬場島(ばんばじま)から早月小屋へ7時間、早月小屋から山頂へ所要3時間30分。
裏剱の展望台、仙人池へは剱沢、仙人新道経由で所要6時間。仙人池から仙人谷を下って黒部峡谷の阿曽原(あぞはら)から水平歩道を欅平へは所要7時間。
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