| 燕山荘
2024.03.15
2024年度宿泊のご予約は3/14から
いよいよ夏山のシーズンの幕開けだ。夏山シーズン前半の楽しみの1つが高山植物だが、夏山らしい高山植物の代表としては、チングルマ、ミヤマキンバイ、コイワカガミなどが挙がるだろう。
そうした中でも存在感の際立つのが、「高山植物の女王」として知られるコマクサ(駒草)だ。他の植物が生息できない砂礫地に単独で自生し、美しく可憐なピンクの花を咲かせる孤高の姿は女王の名にふさわしい。
また、花季は1~2ヶ月と長いことも他とは異彩を放っている。群落地では夏の間ずっと楽しめる花でもある。
コマクサは、その可憐な姿とは裏腹に生命力に溢れている。例えばその根は地中深く・広くまで伸ばしている。これは、痩せた土地でも水や栄養分を取るためだけではなく、雪解け水などで砂とともに流されないためでもあるという。
また、パセリのようなきめ細かい葉は、空気中の水分を集めるためで、霧などから水分を集めて根元に補給するのだという。
力強い生命力を秘めたコマクサが自生する群生地は、行ってみればわかるが、風化した砂礫地帯や火山の噴火口付近など、殺風景で見るからに痩せた土地であることがわかる。
砂漠地帯のような荒れ地で、風雨に耐えながらも映えるコマクサ。今週は、そんな対象的な風景が楽しめる、コマクサが咲く山を7つピックアップする。
コマクサの大群落地として最も知られている場所の1つが、北アルプス・燕岳だ。山頂付近の風化した花崗岩群に点在するコマクサ群落は、一見の価値がある。
コマクサの時期は、ライチョウのヒナがハイマツから顔を出す時期でもある。東斜面は、お花畑も広がるので、夏山らしい・北アルプスらしい山旅を楽しめる。
なお、燕岳の花季は例年は7月中旬から8月中旬。近年はかなり早めに開花していて、7月初旬には、すでに咲き始めていることも多い。
高低図
| 燕山荘
2024.03.15
2024年度宿泊のご予約は3/14から
国内で随一のコマクサ群生地として知られるのが岩手山だ。岩手山は言わずと知れた火山の山で、火山礫地はコマクサの成育に適した場所。
山頂のお鉢巡り付近や、焼走りコースの第一噴出口跡~ツルハシノ別レ間などで、とくに大群落を形成していて、日本一の群生地とも言われるほどの株数を誇るうえに、一株の花数も多い。
コマクサは花季が長いので、7月初旬~8月中旬であれば見逃すことはまずないほど、株数は充実している。独特の赤茶けた火山礫地に彩るコマクサの群落を楽しんでほしい。
高低図
八ヶ岳の稜線では、コマクサを多数みることができる。硫黄岳周辺の火山礫地が広がる場所、具体的には、横岳から硫黄岳の間や、硫黄岳大ダルミから台座ノ頭あたりまでの西斜面が、コマクサの大群落地として知られる。
また、少し北部にいった根石岳~箕冠山のコマクサ群落も有名なので、この時期に縦走すると、コマクサをたくさん見ることができる。
花季は7月中旬~8月中旬で、例年は8月初旬がピークとなる。
高低図
| オーレン小屋
2023.06.28
梅雨入りし、大気が不安定です。遅くとも15時には目的地に到着できるよう早出早着を心掛けましょう
| 硫黄岳山荘
2023.12.24
積雪は標高2500m付近で5~20cm前後、夏沢鉱泉周辺で5~10cm。冬山登山装備が必要です
先に紹介した燕岳とともに、北アルプス随一のコマクサ大群落の地として知られるのが蓮華岳だ。輝石安山岩の砂礫に覆われた斜面が広がる山頂近くは、ふだんは殺風景な斜面となっているが、7月中旬~8月中旬は打って変わって一面コマクサの花に覆われる。
蓮華岳山頂ら北葛岳方面へ向かう稜線も、コマクサの大群落地だ。蓮華岳山頂からの下り道、通称・蓮華の大下りは、岩場・ガレ場の急斜面が続く厳しい道だが、上部ではコマクサの中を歩くほどの株数を誇る。
賑やかな夏の北アルプスの中では静かな山旅も楽しめることもポイントだ。蓮華岳までの道のりは針ノ木岳方面から来ても、船窪岳方面から来ても遠いが、静かな北アルプス縦走と共に楽しみたい場所だ。
高低図
北海道・大雪山では、コマクサだけではなく、日本では大雪山系だけに生息するウスバキチョウを見ることができる。
ウスバキチョウはアゲハチョウの仲間で、氷河時代にコマクサとともに大陸から渡ってきたとされる。幼虫はコマクサだけを食べて育ち、国内では一万年前の氷河時代と似た環境だった大雪山だけで生き残ったそうだ。
幼虫はコマクサの花と茎の付根の部分を好んで食べるので、花季に幼虫を探してみるのも良い。
大雪山系では7~8月の期間は様々な場所でコマクサを見られるが、大群落地として知られるのが銀泉台登山口~赤岳間にある場所、その名も「駒草平」。広範囲に、コマクサが咲き誇る。
高低図
秋田県を代表する山、秋田駒ヶ岳は、コマクサの大群落の山として知られる。横岳の南側に伸びる火山礫に覆われた幅広い尾根はコマクサの群生地で、保護柵の先にたくさんの花を見ることができる。
コマクサの時期は7月初旬で、この時期の秋田駒ヶ岳は競うように高山植物が咲き乱れる時期。8合目まではバスでアクセスし、山頂付近の箱庭のような火山地形の登山道を周遊すれば、3時間ほどの登山でシャクナゲ、ニッコウキスゲ、ハクサンチドリ、イワカガミ、チングルマなど、夏の高山を代表する花を満喫できるだろう。
高低図
湯の丸高原近く、池の平湿原の先にある三方ヶ峰の山頂付近および隣の見晴岳付近は気軽にコマクサを楽しめる場所だ。池ノ平湿原入口からなら、1時間程度でコマクサ群生地まで行くことができる。
コマクサは三方ヶ峰の山頂付近の砂礫地に保護されながら咲いていて、保護柵越しとなるが、すぐ近くでコマクサを鑑賞できる。
コマクサの時期は6月中旬頃から7月下旬、この時期は池の平湿原周辺は前半はさまざまな高山植物が楽しめる時期。早い時期はレンゲツツジ、中盤にはアヤメ、ウスユキソウ、ハクサンチドリ、シャクナゲ、さらに後半はニッコウキスゲなどさまざまな花が同時期に楽しめる。
ピークハント派は篭ノ登山への登山を含めたいが、ゆっくり湿原を散策するのも良いだろう。
高低図
3000mを超える厳しい環境となる高山にもコマクサは力強く咲く。北アルプスの南端にそびえる3000m超の乗鞍山は、冬は雪も多く風も強い場所だが、コマクサが群落する山として知られる。
コマクサの群落が見られるのは畳平周辺が多く、魔王岳方面の斜面、富士見岳~大黒岳の登山道沿いなどで見ることができるので、畳平バス停から30分程度の散策で楽しめる。
花季は7月中旬から8月中旬。自然保護のため近づけない箇所も多いが、ファインダーにその姿を焼き付けてほしい。
高低図