夏は憧れの3000m峰へ――、ですが、「あと少し」の山も魅力的です!

標高2999mの剱岳を望む(写真:super_nopposanさんの登山記録より)

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難易度・存在感は3000m峰オーバーな、3000未満の山々

国内に3000mを越える山は、いくつあるかご存じだろうか? これは数え方や考え方によって変わるが、21座とも、27座とも言われる。

富士山を筆頭に、北岳、奥穂高岳、間ノ岳、槍ヶ岳、悪沢岳・・・。登山愛好者にとって、これらの標高3000mを越える山は、ひとつの目標となっている人が多いだろう。一般的な登山者にとっては日本百名山と並んで、好きな山・登ってみたい山の筆頭に挙がるケースが多い。

3000mを超える山が連なる穂高連峰(写真:skier さんの登山記録より)

そんな3000m峰の多くは、一般的な登山者にとっては夏山のごく短い時期のみが登山適期となるため、登るなら夏である今しかない。夏を逃すと登頂は一気に何度を増すからだ。

一方、これら3000mに惜しくも仲間入りできなかった山も多い。それぞれ、立派な風格を持った山ばかりだ。もちろん難易度だって3000mと変わらない。

迫力、存在感は3000m峰以上、惜しくも3000mに満たない甲斐駒ヶ岳(写真:カモネン さんの登山記録より)

最も惜しい標高3000m以下の山の剱岳(2,999m)をはじめとして、登山者から一目置かれる存在の山ばかり。むしろ3000m峰よりも難易度が高く、登りがいのある山が揃っている。

そこで今回は、この夏に登ってみたい、あと少しで3000mの山をピックアップする。

南アの貴公子、甲斐駒は標高2,966m

全国に20座以上あるといわれる駒ヶ岳の中で最高峰となるのが南アルプス・甲斐駒だ。標高2966mと、あと34mほど3000mに満たないが、周囲にそびえる仙丈ヶ岳や北岳などの3000m峰に勝るとも劣らないに存在感を放っている。

三角錐の美しい山容と、雪のように白い山頂は異彩を放ち、周囲からすぐに同定でき、南アルプスの中でも屈指の存在感を誇る。実際に訪れてみると、真っ白な花崗岩とハイマツの緑に覆われた山頂に立てば、達成感を満喫できること間違いない。

白い花崗岩に覆われた山頂部は独特の景観を見せる(写真:山旅人 さんの登山記録より)

北沢峠を起点に登るのが最も近く、北沢峠からが往復で6時間強で往復できる。しかし脚力自慢なら「日本三大急登」の1つに数えられる、黒戸尾根から登ってみると山の大きさが実感できる。もちろん日帰りでは難しいので、1泊以上で楽しんでほしい。

ほかの「約3000m峰」に比べると、比較的積雪が少ないうえに、黒戸尾根上には通年営業の七丈小屋もあるので、冬でも登られることが多い。

行程・コース

【1日目】北沢峠から仙水小屋へ
■総コースタイム 40分、標高差+160m、-60m
北沢峠(08:00)・・・長衛小屋(08:10)・・・仙水小屋(08:40)
【2日目】甲斐駒ヶ岳に立ち双児山から北沢峠に下山する
■総コースタイム 6時間30分、標高差+979m、-1097m
仙水小屋(07:00)・・・仙水峠(07:40)・・・駒津峰(09:10)・・・甲斐駒ヶ岳(10:40)・・・駒津峰(11:40)・・・双児山(12:20)・・・北沢峠(13:30)

高低図

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縦走コースから少し外れた最奥の名山・水晶岳:標高2,986m

日本百名山にも数えられる水晶岳は標高2986mと、あと14mほどで3000mとなる山だ。標高3000mを超えているのではないかと議論される名山だ(双耳峰の三角点のない頂は3000mを超えていると噂されたが、北峰がが2977.9m、南峰が2986m)。その一方で、見逃されてしまうことも多い山でもある。

水晶岳分岐方面から望む水晶岳(写真:s.fuji さんの登山記録より)

これは裏銀座縦走路から少し外れているのが大きな要因だ。縦走路から往復1時間の距離は、遠くはないが近くはない。百名山登頂目当てでないと迷う距離感で、通過する時間や疲労具合によっては、パスするのも頷ける。

しかし、北アルプスの最奥に位置し、一般的な計画であれば短くても2泊3日は要する。この頂を目指して計画を立てて望みたい。

行程・コース

【1日目】新穂高温泉から鏡平を経て双六小屋へ
■総コースタイム 7時間5分、標高差+1667m、-214m
新穂高温泉(08:00)・・・笠新道登山口(09:00)・・・わさび平小屋(09:20)・・・小池新道登山口(09:40)・・・秩父沢出合(10:50)・・・シシウドが原(12:05)・・・鏡平山荘(13:05)・・・弓折乗越(14:05)・・・双六小屋(15:05)
【2日目】三俣蓮華岳を経て水晶小屋へ
■総コースタイム 6時間15分、標高差+1068m、-722m
双六小屋(07:00)・・・双六岳(08:00)・・・三俣蓮華岳(09:25)・・・三俣山荘(10:05)・・・鷲羽岳(11:25)・・・ワリモ北分岐(12:25)・・・水晶小屋(13:15)
【3日目】水晶小屋から読売新道を奥黒部ヒュッテへ
■総コースタイム 6時間40分、標高差+462m、-1858m
水晶小屋(07:00)・・・水晶岳(黒岳)(07:40)・・・赤牛岳(10:20)・・・奥黒部ヒュッテ(14:20)
【4日目】奥黒部ヒュッテから湖畔の道を黒部ダムへ
■総コースタイム 5時間40分、標高差+279m、-369m
奥黒部ヒュッテ(07:00)・・・平ノ渡場(09:00)・・・平ノ小屋(09:10)・・・ロッジくろよん(12:10)・・・黒部湖駅(12:40)・・・黒部ダム(12:50)

高低図

標高2900m超の、中央アルプスの最高峰と鋭鋒を一挙に登ろう

日本アルプスの1つである木曽山脈・中央アルプスは、3000mを超える山は存在しないが、木曽駒ヶ岳(2,956m)と宝剣岳(2,931m)があと少しで3000mを超える山となる。中央アルプスの盟主2座を一挙に狙う計画は、決して難しくはない。

中岳から鋭鋒・宝剣岳を望む(写真:一本の矢 さんの登山記録より)

千畳敷まではロープウェイが利用できるので、日帰りで登頂できるのも魅力だ。中央アルプスの最高峰から、周囲の山々を眺めるのは壮観だ。木曽駒ヶ岳だけなら、ファミリーでトライする姿も多い。

一方、木曽駒の南側にそびえる宝剣岳は鋭い岩峰が魅力の山。とくに南陵側は鎖場の連続なので注意は必要だが、スリルと岩登り気分を味わうことができる。1日で2座を目指すことは可能だが、せっかくなら日帰りではなく、中央アルプスにある氷河地形の濃ヶ池まで巡って1泊2日で中央アルプスの核心部を楽しみたい。

行程・コース

【1日目】千畳敷から木曽駒ヶ岳へ
■総コースタイム 1時間55分、累積標高差 +410m、-100m
千畳敷(08:00)・・・乗越浄土(09:00)・・・宝剣山荘(09:05)・・・中岳(09:25)・・・木曽駒ヶ岳(09:55)
【2日目】木曽駒ヶ岳から千畳敷へ
■総コースタイム 4時間10分、累積標高差 +343m、-652m
木曽駒ヶ岳(07:00)・・・濃ヶ池分岐(08:10)・・・濃ヶ池(08:25)・・・駒飼ノ池(09:00)・・・宝剣山荘(09:30)・・・宝剣岳(09:55)・・・三ノ沢分岐(10:35)・・・極楽平(10:45)・・・千畳敷(11:10)

高低図

白馬3山縦走で、あと少しを3山制覇しよう

北アルプス・白馬岳も、あと少しで3000m峰の代表的な山田。白馬岳の2,932mを筆頭に、白馬三山はそれぞれ、3000mにあと少し(鑓ヶ岳は2903m、杓子岳は2812mと続く)。

鑓ヶ岳手前の美しい稜線を歩く(写真:hi-yamakei さんの登山記録より)

この3山の縦走コースは、雪渓あり、お花畑ありとバラエティに富んでいて、危険な岩場は比較的少ないので、難易度もさほど高くはない。白馬鑓温泉で温泉に入れるのも楽しく興味深い。3000m峰への挑戦の入口には、ピッタリなコースだ。また、白馬岳からは大雪渓を下るなど、さまざまなコース取りも楽しめるので、地図とにらめっこしながら、自分に適した登山計画を立ててほしい。

行程・コース

【1日目】栂池自然園から白馬大池を経て白馬岳へ
■総コースタイム 6時間30分、標高差+1315m、-305m
自然園駅(08:00)・・・天狗原(09:10)・・・白馬大池山荘(11:00)・・・小蓮華山(12:50)・・・三国境(13:20)・・・白馬岳(14:20)・・・白馬山荘(14:30)
【2日目】白馬山荘から杓子岳、鑓ヶ岳を経て鑓温泉へ
■総コースタイム 4時間35分、標高差+398m、-1223m
白馬山荘(07:00)・・・村営頂上宿舎(07:15)・・・杓子岳分岐(08:15)・・・鑓ヶ岳(09:35)・・・鑓温泉分岐(09:55)・・・白馬鑓温泉小屋(11:55)
【3日目】鑓温泉から小日向のコルを経て猿倉へ
■総コースタイム 4時間、標高差+140m、-910m
白馬鑓温泉小屋(07:00)・・・小日向のコル(09:00)・・・猿倉(11:00)

高低図

最も3000mに近い山と言えば、言わずと知れた剱岳

3000mに満たない山で、最も有名な山と言えば、標高2999mの北アルプス・剱岳だろう。あと1mで3000mであるうえに、難易度は3000m峰以上。多くの登山者の憧れの山の1つだ。そんな剱周辺の情報は、他の記事や書籍・雑誌を参考にしてほしい。

★関連リンク:憧れの剱・立山連峰、どこを歩く?何を楽しむ?

いつ眺めても絵になる剱岳(写真:aoto さんの登山記録より)

紹介している別山尾根のルートは、剱岳への最もポピュラーなルートの1つだが、高度感のある急峻な岩場が続く。岩登りの基本技術はもちろん、十分な経験は必須。

また、標高差2000m以上を一挙に登る、長く急峻な早月尾根から登るのも人気が高い。いずれのルートも厳しいルートだが、一般登山者のあこがれの山。天候と体調を見ながらトライしたい山だ。

行程・コース

【1日目】室堂平から別山乗越を経て剱沢へ
■総コースタイム 3時間45分、標高差+599m、-506m
室堂ターミナル(08:00)・・・ミクリガ池(08:15)・・・エンマ台(08:20)・・・雷鳥平(09:05)・・・別山乗越(11:05)・・・剱澤小屋(11:45)
【2日目】剱沢から別山尾根を剱岳へ
■総コースタイム 7時間10分、標高差+878m、-878m
剱澤小屋(07:00)・・・剣山荘(07:30)・・・一服剱(08:10)・・・前剱(09:20)・・・平蔵のコル(10:10)・・・剱岳(10:50)・・・平蔵のコル(11:20)・・・前剱(12:10)・・・一服剱(13:00)・・・剣山荘(13:30)・・・剱澤小屋(14:10)
【3日目】剱沢から新室堂乗越を経て室堂へ下山
■総コースタイム 3時間40分、標高差+506m、-599m
剱澤小屋(07:00)・・・別山乗越(08:00)・・・雷鳥平(09:20)・・・エンマ台(10:20)・・・ミクリガ池(10:25)・・・室堂ターミナル(10:40)

高低図