花の季節の前奏曲、カタクリの花が咲く山へ
早い場所では3月中旬から咲き始めるカタクリ。カタクリ群生地がある山を全国から8山紹介する。今シーズンは花期が早い可能性もあるのでご注意を。
構成=山と溪谷オンライン
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種から7年目でようやく花咲く、春を告げる山の妖精
早春の山を最初に彩る花の一つが「カタクリ」だ。赤紫の花びらを、下向きに大きく広げながら咲く姿は、多くの登山者から愛されている(花びらの色は白いものも稀にある)。
その名前のとおり、片栗粉が取れる植物としても知られ、球根は良質のでんぷんを多く含んでいる。
カタクリの生態は実にひたむきで、応援したくなるような生き方をしている。ブナ林などの落葉樹林の林床で、冬の間は落ち葉の下で寒さにじっと耐え、まだ樹木が目覚める前の早春に芽を出して葉を出し、花を咲かせる。
春が深まり周囲の草木や樹木に葉が生い茂り光が差さなくなると、葉を落として再び土の中で眠りにつく。そして体力を温存しながらじっと春を待つ。まさに早春限定の草であり花なのだ。
そして種から花が咲くまでに、最短でも7年もかかることも応援したくなる理由だ。1年目は芽を出すのみで地上部は枯れる。2年目~6年目は春に葉を1枚だけ出すのみ。7年目にようやく葉を2枚出して花を咲かせる。7年かけて、じっくりと球根に栄養をためて、花を咲かせる準備をするそうだ。
花をつけた翌年にも必ず花が咲くとは限らず、栄養が足りなければ葉だけを1枚出して、さらに次の年に備えるという。そんな、ひたむきで可憐な花なのだ。
カタクリは、かつては里山であれば簡単に見つけることができたそうだが、現在はその姿を見る場所は少なくなっている。林業と共存することで生息地を広げていたものの、森林の荒廃でササなどの別の草木に生息域を奪われたという。さらに乱獲も手伝って、群生地は少なくなっている。
場所によっては絶滅危惧種の指定を受けていて、植生地を整備することで守られている場所も少なくない。
そんな貴重なカタクリ群生地がある山を紹介する。
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奥多摩では浅間嶺や海沢など数ヶ所でカタクリの群生地を見ることができるが、登山者に最も人気のあるのは御前山だろう。4月上旬から咲き始め、見頃は4月中旬~下旬。
咲く場所は大ブナ尾根の御岳山~御前山あたりで、可憐な花を多く見かける。シーズンの週末には山頂付近はカタクリを見る登山者でにぎわう。
なお、カタクリの咲くころは、山麓ではサクラやツツジの花が美しい時期で、春の花を満喫できる山となっている。
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