| 戸隠小舎
2017.09.26
標高2.000m程度で徐々に紅葉が始まっています。山の上では10月初旬~中旬が見頃かと思います。
全国各地の山には、さまざまな民話が残っている山も数多い。実際、山の名前が、その昔話や民話に基づいて名付けられたというものも少なくない。
そこで今回は、伝説・悲話・昔話の舞台となった山をピックアップ。「読書の秋」ということで、ぜひ関連する山の民話・物語を読んで・確認して、登山の計画を立ててみてみたい。または、登ったあとに山に思いを馳せながら物語を確認してみるのも良いだろう。
ところで、山に残る物語を確認してみると、いくつかのパターンが存在する。山の形成に対して残っている伝説、山に怪物などが棲みついたという例、または山が舞台の物語があるという例などだ。
以下に紹介した山に限らず、山にはさまざまな伝説が残っている。山に登る前には、ぜひガイドブックなどで山の名前の由来や、山にまつわる物語を紐解いて、登ってみたいものだ。
長野県にある黒姫山の「黒姫伝説」は山にまつわる民話の中でも、最も有名なものの1つだ。
領主の娘・黒姫に恋し、求婚した「大沼池の黒竜」に対して、非礼と裏切りで追い返した領主。その怒りに村に洪水を巻き起こす黒竜に対し、その怒りを鎮めるために姫が許しを請うと、黒竜は姫を乗せて黒姫山の頂へと飛んでいった――。
伝えられる民話の内容は微妙に違いがあるが、山頂の西側にある大池こそが、黒竜が黒姫を乗せて棲んだといわれる池だ。山頂へは東斜面から登るルートが早いが、大池を経由するなら南西側からが便利だ。
高低図
| 戸隠小舎
2017.09.26
標高2.000m程度で徐々に紅葉が始まっています。山の上では10月初旬~中旬が見頃かと思います。
山名から連想できるとおり、化け猫伝説が残るのが福島県・猫魔ヶ岳だ。
化け猫伝説にはいくつかあるようで、猫に殺された婆様の仇を犬の首玉で見事やっつけた話や、鉄砲名人の百姓六三が化け猫を倒して殿様の奥方を救い出した話などがある。
化け猫が棲んでいたと言われる場所が、山頂から西へ15分ほどの場所にある猫石付近で、化け猫が棲んでいたために「石の下には草木も生えず、掃除したように塵も埃もない」そうだ。
高低図
宮城県にある七ツ森は、その名のとおり7つの山の総称で、対峙する笹倉山とあわせて七ツ森と称される場合もある。
七ツ森のそれぞれの山は、朝比奈三郎という巨人が弓の的山のために造り、対峙する笹倉山に座って弓を射たという話が残る。
七ツ森には各山頂に祀られている薬師如来石像を1日でお参りして最後に笹倉山に登って確認を受けて終了する「七薬師掛け」が今でも受け継がれていて、踏破すると無病息災が叶うそうだ。
紹介しているコースは七ツ森の一部を縦走するコースとなっている。実際に七薬師掛けを行うとなると通常は8時間はかかる健脚向けな荒行となるので、脚に自信のある人はぜひ試してほしい。
高低図
童話の金太郎の舞台として知られるのが金時山だ。童謡にも歌われる金太郎の話については今さら説明するまでもないと思われるので省略するが、金時山の麓には「金太郎の生家跡」「金太郎遊び石」「金太郎が産湯となった夕日の滝」などが存在する。気になるのは、金太郎は実在したのかどうか、である。
童話では「金太郎の勇姿を見たお侍様が家来にした」としている。一説では、このお侍様こそが平安時代中期の武将の源頼光で、金太郎はのちに坂田金時と名乗り、頼光四天王の一人として活躍したとされているが・・・。
なお紹介しているコースは、金太郎ハイキングコースと名付けられている、金太郎の足跡をたどるコースとなっている。
高低図
福井県、岐阜県、滋賀県の県境付近にある夜叉ヶ池は、夜叉姫伝説として知られる場所だ。泉鏡花の戯曲や映画にもなったことで、訪れる人も多い山である。
夜叉姫伝説とは――、「雨を降らせてくれたら、どんな願いでも叶える」という村人の願いに、雨を降らせた竜神。その生贄として、郡師の娘の夜叉姫はひとり竜神の待つ池に嫁ぎ竜へと姿を変える、という悲哀の物語だ。
夜叉ヶ池は伝説だけではなく、自然豊かな風光明媚な場所としても有名で人気が高い。岐阜県の名水50選や飛騨・美濃紅葉三十三選 、さらには希少生物ヤシャゲンゴロウ生息の地としても知られる。
高低図
南アルプスのさらに南、静岡県・京丸山周辺は「京丸牡丹」の民話が残る場所だ。
京丸牡丹とは、京丸という平家の隠れ里に迷い込んだ若者と集落の長の娘との悲哀の物語で、村の掟を破って恋仲となった2人は谷に身を投げて絶命。その後、命日になると2人の魂は大きな牡丹となって谷間を彩るようになった、という内容だ。
「牡丹ではなく実際にはツツジ(アカヤシオ)」「牡丹は60年に1度咲く」など、伝説には諸説は多いが、隠れ里とされる京丸の里の跡は今もしっかりと残っている。
高低図
琵琶湖の西側に連なる比良山系。その中でも特に賑やかなのが「びわ湖バレイスキー場」のある蓬莱山周辺だ。その蓬莱山のさらに奥にひっそりと水を湛えるのが小女郎ヶ池だ。
小女郎ヶ池の悲哀伝説とは――、池の主の大蛇に魅入られてしまった若い夫婦の女房「お考」は、乳飲み子を家に残したまま夜な夜な池に通うようになり、最終的には「赤ん坊が乳をほしがったらしゃぶらせてほしい」と自分の左目をくりぬいて池の中に姿を消した、という悲哀物語だ。
ロープウェイのを使えば4時間もあれば往復できる距離にあり、琵琶湖の眺望と神秘的な池を楽しめる。
高低図
富山県と岐阜県の県境、合掌造りで知られる岐阜の白川郷と富山の五箇山の間にそびえている山が人形山だ。春先になると、手をつなぎ合った姉妹の人型の雪形が山の斜面に現れることから、この山名が付いているが、この雪形には悲しい物語が残っている。
母の病気を治すために、権現様のお告げにならってお参りを続けた姉妹は、病気の回復のお礼に山上の権現堂にお参りに行くと、吹雪に巻かれて帰らぬまま雪型となったという悲哀の物語は、日本昔ばなしなどでもおなじみなので、この山に登るなら一度は確認しておきたい。
なお、人形の雪が現れるのは6月中旬頃で、富山県側からとなる。
高低図