MOUNTAIN CLIMING 御獄岳登山について

山岳信仰と高山植物の聖地、
北御嶽を一泊二日でトレッキング

古くから山岳信仰の聖地として知られるが、同時にカモシカやライチョウなどの野生動物に出会ったり、コマクサや御嶽山が名前の由来のオンタデなどの高山植物を楽しめる。2014年にあった噴火の影響で、噴火口から半径1kmは立ち入り禁止だが、三の池や四の池、継子岳など、北部の山域を中心に歩けるエリアはかなり広い。江戸時代に開けた濁河温泉からのルートを使って、山小屋に1泊しながら、雲上の世界を巡る。

協力=岐阜県 モデル=相吉いずみ、浪崎香織 文・写真=吉田智彦 衣装協力=コロンビアスポーツウェアジャパン、エイアンドエフ デザイン=アートボード

濁河温泉登山口から登った稜線にある飛騨山頂付近は、高山植物の女王と呼ばれるコマクサをはじめ、御嶽山の固有種のオンタデなど、知る人ぞ知る高山植物の群生地で、三ノ池や四ノ池の湿原などがあり、変化に富んだ自然を楽しめる。前日のシャワークライミングに続き、ガイドの熊崎さんと山上を目指した。

長野県側から登られることが多い御嶽山。今回は岐阜県側の濁河温泉登山口から登る。

岐阜県のこの山域では登山者届けが義務化されている。登山口にあるポストに投函した。

御嶽山の厚い信仰を伝える、沿道に並んだ石碑群。

小雨が降る中、レインウェアを着て出発。登山道を辿って森に入ると、なんとも言えない甘く清々しい匂いが辺りに立ち込めた。

「シラビソの樹液の匂いです。虫除けにもなるんですよ」と熊崎さんが教えてくれた。登山道の両脇には、さまざまな種類の苔が岩や木々の根元を覆って、ふたりは撫で回したり、頬ずりしたりと忙しい。

御嶽の冬は豪雪地帯。雪の重みで捻り曲がったダケカンバが3人の頭上を横切る。

高度を上げ、森林限界線を越えると植生がハイマツに変わり、雨は、粒子の細かいミスト状になった。展望は望めないかなと思っていると、雲の間から摩利支天へ続く尾根が顔を出し、斜面一面に咲くコマクサが現れた。そして、稜線にある五の池小屋まで来ると、尾根の反対側にある三ノ池は晴れていて、太陽の陽を浴びた紺碧の水面が輝いて見えた。いづみさんが「ここまで自分の足で歩いてきたからこそ、この景色が見れたんですね」と清々しい顔をしながら言う。

濁河温泉登山口から登り詰めたところにある飛騨山頂。無事に登れたことを感謝して、社に手を合わせる。

鈴なりに花をつけたコマクサ。

清らかな水を湛える三ノ池。龍が棲むという言い伝えもある。

五の池小屋に到着。異様にテンションが高いふたり…。

小屋では軽食も提供されていて、昼食を取る。

小屋の軽食メニュー、ラーメン。山上は気温が低いことも多く、温かいメニューがありがたい。

飛騨山頂、継子岳間は緩やかな台地状尾根を行く。

継子岳へ向かう途中にある、針の山。

ハイマツの枯れ枝と石でおどけて見せるふたり。「これしたかったんだよね」といずみさん(笑)。

まだ、日没まで時間があったので、飛騨山頂の社にお参りしてから、御嶽山上の北端、継子岳までハイキングすることにした。針の山と呼ばれる、岩が剣のように林立した場所を越えて継子岳にたどり着くとライチョウが顔を出し、雲がかかっていた最高峰の剣ヶ峰も姿を現した。絨毯のように敷き詰められたハイマツがなだらかな山肌を覆い、窪地に湿地があるかと思うと、尾根には荒々しい岩場が続き、山上の反対側にそびえる剣ヶ峰へと繋がっている。その雄大な景色を目の前にして、登山初体験の香織さんは、感慨深げにこう言った。

継子岳から見えた御嶽山最高峰の剣ヶ峰。

継子岳に着くと視界を遮っていた靄が晴れ、稜線は雲上の回廊となった。

「街にいると、いろいろな物がありすぎて自分と外の境界線が曖昧になって落ち着かない時があるんだけど、ここでは自分の存在が際立ちますね。なんだかほっとします」

そんな山の力に少しずつ気づき始めたようだ。

熊崎さんがサプライズで用意してくれた、地元の名店「ジークフリーダ」のクレームブリュレ。

小屋の前でクレームブリュレを頬張るふたり。大好評で、下山後、作っている「ジークフリーダ」へ行く事になる。

小屋へ戻ると、ゆっくりと日没を眺めながら夜を迎えた。山の景色がダイナミックに変わる夕暮れと日の出。このふたつを見なきゃ、せっかくの山登りがもったいない。ふたりが、雲海の向こうに沈む夕日をじっと眺めていると、鮮やかな瑠璃色の空に、ぽっかりと月が昇った。

日没の時間。山は日中とは別の美しい表情を見せ始める。

ランプを点した「ぱんだ屋」で、食後のひとときをゆったり過ごす。

翌朝、四の池越しにご来光を拝む

ギャラリー


この日泊まった宿

木曽と飛騨に跨がる御嶽山。その飛騨側登山道の九合目にある山小屋。2000年に地元の木材を使って建て直されたばかりで、小屋の内部は白木の木肌が美しい。エントランスは「ぱんだ屋」という薪ストーブがあるカフェになっていて、手作りのシフォンケーキやピザなどが食べられ、これを食べるのが目的で登ってくる登山者もいるとか。宿泊したふたりも、夕食後に薪ストーブで焼いたピザもいただいて、すっかり上機嫌だった。

小屋のカフェ、ぱんだ屋。味ばかりでなく、上質でセンスのよい設えが人気を呼んでいる。

ぱんだ屋人気NO.1の手作り「シフォンケーキ」。

夕方、歩き通しだった一日を振り返りながら夕食をいただく。

夕食は、鍋を中心にしたボリュームたっぷりのメニュー。

薪の優しい暖かさで守られた山上のカフェは、登山者にとって極上の宿り木だ。

夕食後に薪ストーブで焼いた熱々のピザがオーダーできる。

お世話になった小屋番さんと記念撮影。

薪ストーブは暖や調理する熱を取るほかに、揺らめく炎が安らぎをくれる。

五の池小屋
主人・市川 典司さんに聞く
御嶽山の今

 2014年の噴火から3年。まだ山頂(火口から1キロ圏内)への立ち入りは規制されているが、2017年8月22日に噴火警戒レベルは「2」から、最も低い「1」に引き下げられた。登山客は去年より増え、以前の御嶽山に戻りつつあるものの、登れるかどうかの問い合わせは今も多い。
 「山頂に入れなくなった山だからこそ、頂上に立つだけではない登山の楽しみ方を提案したい」と言う五の池小屋の主人、市川さん。「五の池小屋を、自然と登山文化を考える場所にしたい」と語ってくれた。

5の池小屋 インフォメーション
営業日
例年6月1日〜10月15日まで営業
6月のみ、宿泊は完全予約制。収容人数は100人。
住所
〒506-0821 岐阜県高山市神明町3-26-1
Tel
090-7612-2458
※業務用携帯
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恵みたっぷり 夏の飛騨を歩く