ヤマケイオンライン 山と溪谷社

青木 達哉

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エルキャピタンをフリークライミングで登りたいとか、ヒマラヤの大きな壁も登りたい

これはミスですね。アイススクリューがあたれば、なんであれ切れてしまいます。しかし、壁に肩をこすりつけ、全身を使ってチムニーを抜けたあとも、ジャケットもパンツも切れた箇所以外はちっとも摩耗していなかったんです。あれだけチムニーに身体を押し付けて登ったのに。これには驚きました。
 動きやすさを追求すると生地がしなやかになり、軽さも必要です。けれど、アルパインクライミングには、耐久性も重要。その相反する要素が見事に両立されていて、このウエアは安心して使えるなと思いました。
 今回発表になったアイガーコレクションの新作は、おそらくこの冬のシーズンインで着用することになりそうです。だいたい12月ごろ、八ヶ岳など登りなれたところで足慣らしをするのが常です。いまから、新作のアイガーコレクションを着用して冬のルートを登るのが楽しみです。

この先、どんなクライミングをしていきたいですか。

 周りにすごい人たちがたくさんいるので、以前は「早くみんなと同じレベルで登りたい」と夢中になっていました。けれどいまは、もう少し気持ちが落ち着いています。誰かがあのルートを登ったから僕も、というのではなく、自分が見てカッコいいなと思えるルート、山を登りたいですね。そういう山を、自分で見つけられたら幸せです。
 具体的に思い描くものもあります。エルキャピタンをフリークライミングで登りたいとか、ヒマラヤの大きな壁も登りたい、5.14を登りたい、トラッドもやりたいとか。あれもこれもやりたいと思うタチですが、どれもひとつのところへつながっていくと思っています。経験を積んでいくのは、たやすくないし、時間もかかります。けれどひとつひとつの経験が僕のクライマーとしての土台を作ってくれ、やがてもっと大きな壁に登れるようになるのかなあと考えています。

若くして、K2最年少登頂、ピオレドールというビックタイトルを取り、いったい青木さんというのはその後、どんなクライミング人生を送っていくのだろうと思う周囲もいたはずだ。けれど、彼は少しも変わらなかった。ぶれることなく、ただただ淡々と登り続けてきた。それがクライマーなのだと思う。
大先輩である馬目さんを尊敬する。彼の構築した支点を脳裏に焼き付け、キャシャールを下降した。ピオレドールよりも何よりも、彼の財産となったものだ。喪った仲間もいるが、パートナーを組んだ皆から、色んな影響を受けた。停滞して登れないときもある、けれど焦らずまた山に向かう。夏はフリーを中心に、冬になると山に戻る。
アルパインクライミングというのは、経験を積むのが難しい。条件がそろわなければ登れないし、突っ込んで死んではおしまいだ。最悪の失敗は回避しなければならないが、がんばらないと登れない。その匙加減も、自分自身のことも、山のことも、登るなかで少しずつわかっていくのだろう。
「アルパインクライマー」という肩書があるとしたら、それはひょっとしたら、生涯かけてなるものなのかもしれない。そう簡単にはアルパインクライマーにはなれない。けれど間違いなく、青木さんは一歩一歩、アルパインクライマーの道を歩んでいる。

青木 達哉が語る、マムート最高峰ライン「アイガーエクストリームコレクション」

NORDWAND PRO HS
HOODED JACKET MEN

絶対的な安心感のあるハードシェル。チムニーの登攀など岩との擦れも気にせず使える点も心強い。「アックスを大きく振り上げても、裾が上がらないのもありがたい」と青木さん。両手を挙げた状態でパターンを起こしているため。裾の上がりは、アックスを振り上げることが続くアルパインクライミングにおいて致命的。外気が入り込み体温が奪われたり、不快感も大きい。ジャケット裾内部に取り付けられたフラップは取り外し可能。縁に滑り止めのゴムが配置され、パンツとの相性もよい。外気やラッセル時の雪の侵入を防ぐ。

価格 : 100,000円(+税)

ULTIMATE EISFELD SO
HOODED JACKET MEN

動きやすさが抜群のパターンとストレッチ素材を採用。軽量である点も特筆。GORE® WINDSTOPPER®を搭載し、吸汗速乾性、撥水性、防寒・耐風性を備えたソフトシェル。
春先の好天のなかや夏のヨーロッパアルプスでのアルパインクライミングなどでぜひ使いたい。「動きやすいことは重要」と青木さんも強調するアルパインクライミングのシーンでは欠かせない存在。シンボルカラーのオレンジは、アイガーコレクションにのみ使用することを、GORE-TEX®と契約したオリジナルカラー、視認性も高い。

価格 : 58,000円(+税)

EIGERJOCH ADVANCED IN
HOODED JACKET MEN

550gと軽量ながらも850フィルパワーの良質なグースダウンを使用し、高い保温性を確保。PrimaLoft® Gold Activeを採用している。ヘルメット着用も考えた大きなフード。「アルパインクライミングで厚着をするとしたら、長いビレイの時とビバーク時」と青木さんはいうが、シーンを選べばビレイジャケットにもなる。写真はグレーであるが、内側はアイガーコレクションのオレンジを採用。シーミングやファスナーフラップのデザインなどにもアイガーコレクションのシンボルであるXの形を採用し、全体のイメージを図っている。

価格 : 60,000円(+税)

6年ぶりに完全リニューアル。マムートの最高峰ライン「アイガーエクストリームコレクション」いよいよ登場。