行程・コース
天候
晴れ
登山口へのアクセス
マイカー
その他:
カーナビには「氷ノ山国際スキー場」をセット。
この登山記録の行程
氷ノ山国際スキー場駐車場(05:05)・・・氷ノ山国際スキー場・国際ロッジ(06:27)・・・逆水総合公園の登山口(東尾根コース)(06:35)・・・東尾根避難小屋(07:08)・・・一の谷休憩所(07:42)・・・氷ノ山・山頂(08:37)(休憩~09:00)・・・こしき岩(09:12)・・・氷ノ山越避難小屋(09:51)・・・赤倉山(10:03)・・・天狗岩(10:17)・・・布滝頭(10:40)・・・大平頭・大平頭避難小屋(11:15)(昼食~11:38)・・・小代峠(12:16)・・・高丸山(12:24)・・・鉢伏山(13:05)・・・氷ノ山国際スキー場駐車場(15:10)
高低図
登山記録
行動記録・感想・メモ
氷ノ山の名前には次のようなステキな神話が残っている。
『むかし、天照大神の一行が東征の際、ふもとの村で一夜を過ごされました。
・・・翌朝、天照大神は、木々のこずえに朝日がそそぎ、まるで宝石の様に輝く様子を見て思わず、 “日枝の山・・・” とつぶやかれたといいます。
その後、日枝の山は、いつしか氷ノ山と呼ばれるようになりました。』(氷ノ山登山ガイド則さんの日記より「https://sirakaba55.exblog.jp/2201330/」)
兼ねてより加藤文太ゆかりの山として興味があった氷ノ山。
せっかく遠征するのであれば、がっしり歩きたいと思っていたところ、氷ノ山から鉢伏山までを周遊する「ぶん回しコース」なるものがある事を知った。夏を予定していたが、ふと冬でもOKか?と思って調べてみたら、偶然にも先週歩かれた方のレポートを見つめた。レポには、天照大神を魅了した輝くばかりの樹氷に加え丸々太ったスノーモンスターと、よだれが出るような写真がずらりと並んでいた。これはもう、行くしかない。
3時過ぎに氷ノ山国際スキー場駐車場に到着。少し仮眠をとって5時きっかりに行動開始。
歩き出すものの雪が1mmもない。まさか、たった1週間で溶けきってしまったのか?信じたくはないが、今週は2桁代の気温が続いたため、その可能性は十分ある。今年の異常気象のおかげで、雪山欲求不満症候群になってしまいそうだ。
しかし、頭上には月明かりに照らされて、ほんのりと白く氷ノ山の頂きが浮かび上がって見えているので、それに期待することにする。
舗装された林道を登って行くと徐々に雪が見られるようになってきた。そのうち、路面一面になり、消えかかっていた期待感も再び湧いてくるが、体感でもはっきり分かるように、完全に明け方前の寒さではない。そのため踏み込む度に、スボッズボッと膝まで入り込んでしまう。今日は、ワカン無しでも大丈夫だろうと車に置いてきたのが悔やまれる。
一歩一歩に時間がかかり、林道を登りきる前にすっかり明るくなってしまった。大汗を拭い、山を見上げると真っ赤に染まった雪山が見えた。「おおっ」、最初のご褒美だ。
営業準備をしている氷ノ山国際スキー場の横を抜け、逆水総合公園の登山口(東尾根コース)でアイゼンを装着。この付近からようやく雪が締まり歩きやすくなってきた。ここまでの遅れを取り戻すべくペースを上げて登って行く。
登り始めから暫くは若干登りにくい斜面が続くが、東尾根避難小屋のある尾根に出てしまえば、そこから先はなかなか素敵な稜線歩きが楽しめるようになる。
だいぶ登ったところで振り返る。遠くにいくつもの山が重なり合うように見えた。その山々の間を埋めるように雲海が広がっている。ただ、見慣れた純白で濃厚な雲海ではなく、繊細なまでに薄く希釈され、透き通るような雲海。そこに、今日始まったばかりの真新しい太陽の優しい光が差し込み、幻想的なグラデーションを作り上げている。おそらく写真にはこの景色を取り込むことはできないだろう。それほど神秘的で繊細な風景が目の前に広がっていた。今日、この時間、この瞬間に立ち会えたことに感謝だ。
時折振り返りながら雲海の変化を楽しみつつ、スロープのような尾根を登って行く。
下から見上げた際に山頂手前に見えていたピークまで登ってきた。氷ノ山から連なる鉢伏山までの景色がよく見渡せた。氷ノ山の山頂から時計回りに、まるでお椀の縁のように細い稜線が延びていて、その終点にラスボスのごとき白い頂きの鉢伏山が見える。お椀の内側にはいくつものスキー場(コース)がある。おわん型の形状はどことなく立山に似ていて、ちょうど別山あたりから室堂を見下ろしているようなイメージだ。
樹々の間を縫うように雪原を進んで行く。おそらくこの辺から樹氷ポイントではないかと思う。しかし、視界に入ってくるのは茶色い枝ばかり。着雪したものは一本もない。参考にした先週のレポとは大違いだ。氷ノ山によく通われているという方に聞くと、先週末はたまたま積雪があって樹氷も楽しめたが、この陽気で一瞬だったとか。やはり恐れていた通りか。
でも、それほどガッカリはしていない。先ほどの繊細な雲海といい、それをカバーしてもなお余るほどの絶景。見上げれば文句のないブルーの空。加えて、特筆すべきは山頂付近の雄大な景色。樹林帯を抜けると丸くなった雪の丘に山頂の避難小屋が見えた。氷ノ山の避難小屋はどれも似たような形をしていて、三角形の屋根がサザエさんのエンディングに出てくる家のようで可愛らしい。更に丘を登りきると、山頂からの雄大な風景と奥に白く雪を冠した成端な山が目に飛び込んでくる。強いオーラーを放っていて、中国山脈を代表する山であることが一目でわかる。大学生時代、初めて登山を意識した山で、ある意味初恋的な思い入れのある山、大山だ。
山小屋でエネルギー補給をしたのち、ここより本格的にぶん回しに入って行く。山頂からコース全容を見渡すと、改めてスケールの大きさを感じる。20km程度とタカをくくっていたが、思っていた以上に大変かもしれない。^_^
山小屋の脇から登ってきた方向とは反対の斜面へと降っていく。いきなりの急斜面。アイゼンを効かせながら降っていくのが楽しい。
先程、鉢伏山まで、お椀の淵のような稜線が続くと表現したが、実際歩いてみるとなかなかのエッヂで、痩せ尾根には雪庇が育っている。雪庇を服込まないように注意しながら歩く。実に雪山ーって感じが楽しい。
だだ、喜んでばかりはいられない。かなり雪が緩くそろそろ雪崩が危険だなと思っていたら案の定、あちこちに大きな亀裂が走っていた。今年は全般的に気温が高いため、早い時期から注意が必要だ。
氷ノ山越避難小屋からコースは赤倉山をトラバースして次の山へと向かうようになっているがなかなか立派なピークだったので、迂回するのはもったいないと登ってみる。登った甲斐があり、赤倉山からもまた一味違った大山が見えた。ところどころ大山を眺めながら周遊できるなんて、なんて贅沢なコースか。
赤倉山から布滝頭を抜け大平頭避難小屋までのルートは雪崩の兆候があちこちにあり、特に注意が必要なエリアだった。
大平頭避難小屋でお昼ご飯とする。快晴で日差しが暖かいとは思っていたが、もはや初夏の日差し。黒い手袋が熱を持つほどに暑い。ここまで来ると、遠くに見えていた鉢伏山を正面に捉えることができ、だいぶゴールまでの距離感がつかめるようになってきた。それでもまだ距離はかなり残っているが、逆に氷ノ山が遥か彼方になり、だいぶ歩いたという実感が沸いてきた。
先輩の1人が、体調がすぐれないと言うことで、小代峠の手前で、二手に分かれることになった。「気をつけて下山してください!」とお互い手を振って別れたが、まさかそのあとその先輩にとんでもないことが起きるなんて、その時は知る由もなかった。。。
小代峠からは雪が激減で山の地肌があちこちで露出していた。アイゼンを外そうかとも思ったが、目前の鉢伏山にはたっぷり雪が残っていたので、しばらく我慢してそのまま進むことにする。
鉢伏山の手前から再び雪モードとなるが、この辺から雪の緩みもMAXになり、踏み抜きが多くなってきた。大丈夫かと思えば、スポッと膝まで入る。この繰り返しは流石に歩きづらい。ここに来て、ペースダウンでタイムアウトになるのはなんとか避けたい。
頑張ってペースを維持しながら進む。ようやく鉢伏山にたどり着いた。結構な斜面が待ち構えていた。登っていくとハチ高原スキー場のコースやリフトがいくつも見えた。あんなにスキーヤーが沢山いるのに山頂からどうやって降ればいいのだろうかと不安がよぎる。
鉢伏山の山頂手前は、更に急登でそそり立つような斜面だった。雑木を上手く使いながら、よじ登ったりトラバースしたり。これは、夏に歩くときっと藪で大変だと思う。
藪を抜けると視界が開け、その先にリフトと青い空が見えた。ついに山頂到着。
登って来た反対側にもリフトがあり、山頂には両方から登ってきたスキーヤーで賑わっていた。派手なウエアーを着込んだ若者たちの間に、ザックを背負った異色な登山者。ちょっと居心地が悪い。しかし、誰も予想だにしないだろう。リフトにも頼らず自分たちの足だけで、遥か彼方に見えている氷ノ山に登り、そして峰々を伝ってここまで周遊してきたなんて。人間の力はほんとに凄いものだ。
山頂で、記念写真を撮り、さて、問題の下山ルート。
スキーのコースを降りるわけにはいかないので、コース外の斜面を降りていく。斜面と言っても感覚的に垂直な崖に近い。雪が緩いのでアイゼンが微妙に効かない。滑落したら止めることは至難な状況につき、注意深く降っていく。途中、トラバースで危険個所を避けながら最終的には藪漕ぎになったが、なんとか安全なところまで降ることができた。林を抜けると緩やかなゲレンデが広がっていた。山頂付近と違い、下の方はファミリー層のスキーヤーで賑わっていた。ゲレンデの脇を邪魔にならないよう降らせてもらう。スキー場を抜けると、あとは林道を使ってスタート地点に戻るだけ。林道に出て気を許したのか、痛恨のミスで逆の方向に降ってしまった。ただでさえ苦手な林道歩きに、余計な距離が加わってしまった。
駐車場で、先に分かれた先輩と合流して日帰り温泉合格の湯(天然温泉まんどの湯)に立ち寄って汗を流す。
お湯につかりながら、氷ノ山を振り返る。いつか必ず行きたいと思っていた憧れの山だったが、今回、実際に登ってみて改めて氷ノ山の素晴らしさが実感できた。ぶん回しコースはそれなりの距離があるため、日ごろから登っている人でないと厳しいかも知れないが、エスケープルートはあちこちにあるので、ぜひ部分的につなげながらでも多くの人に楽しんで欲しいと思った。
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