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Bar-YARIへようこそ!白銀の鏡平で槍を望む(テント泊)

鏡平( 北アルプス・御嶽山)

パーティ: 4人 (Yamakaeru さん 、ほか3名)

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行程・コース

天候

1日目:晴、2日目:明け方に雪、のち晴れ

登山口へのアクセス

マイカー
その他: カーナビに「新穂高ロープウエイ」をセット。
バスターミナル近くの無料駐車場を利用。夏などは深夜でもいっぱいになるがこの時期であれば停めやすい。

この登山記録の行程

【1日目】
無料駐車場・バスターミナル(05:13)・・・登山口ゲート(05:49)・・・笠新道登山口・・・わさび平小屋(07:14)・・・小池新道入り口(07:49)・・・鏡平(テント泊)(13:08)
【2日目】
鏡平(06:39)・・・小池新道入り口(09:33)・・・わさび平小屋(10:00)・・・笠新道登山口・・・登山口ゲート・・・無料駐車場・バスターミナル(11:50)

コース

総距離
約18.7km
累積標高差
上り約1,396m
下り約1,439m

高低図

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登山記録

行動記録・感想・メモ

平成から令和への切り替わり目。10連休の前半を使ってのGW恒例の雪中キャンプ。今回のチョイスは鏡平。難易度は高くないが、この時期、鏡平小屋はまだ厚い雪の下で閉店休業につき、食料等は全て持ち込みとなる。涸沢の様に雪原の中で生ビールを飲み干す贅沢さにも惹かれるが、しかし、鏡平には別な贅沢がある。今回は、その贅沢を満喫しつつ、雪山で大宴会をすべく各々、好きな酒と食材を持ち寄って山へと登る。
いつもだと日帰り楽勝の新穂高も関東方面からのアクセスとなると、さすがに距離があってシンドイ。幸い、連休初日は移動日に設定したので、朝7時に家を出て途中、観光や買い出しもしつつゆっくり新穂高へと向かう。
群馬から長野への県境越えでフロントガラスに雪が舞った。そこそこ高度があるとはいえ、この時期に雪が舞うなんて。
21時少し前に、新穂高のバスターミナルに到着。別ルートで向かっている山仲間の到着をここで待つ。車のエンジンを止めると一気に気温が下がる。手前の安房峠付近にあった温度計で既にマイナス1度だった。きっとこの周辺はもっと低いのかも知れない。12時間かけて運転してきたので、少しでも体力復活のため眠ろうとするがが、車中が寒くて足の指先が痛くて眠れない。駐車場でこんな状態でとは。鏡平へは万全な防寒対策が必要か。
仲間と合流し、明るくなると同時に行動開始。久しぶりのテント装備と大きなザックが、肩と腰にずっしりとのしかかってくる。
登山口ゲートのところで登山届けを提出。林道歩きがしばらく続くが、路面には昨晩薄っすらと積もった雪がついていた。10分ほど歩くとそれも全面雪景色へと変わっていく。今年の冬は雪が少なく雪景色の記憶が乏しかっただけに、冬に戻ったようでようでテンションがあがる。固めの雪に、「ザッ、ザッ」と音を立てながら歩いていく。アイゼンはまだなくても大丈夫だが、凍った雪解けの水が滑りやすく注意が必要だった。奥へ進み積雪が増えるに従い、所々で雪崩が発生していた。道一杯を埋め尽くすデブリを乗り越えながら進んでいく。
笠新道の登山口へ到着。一見、登っていく足跡は見当たらなかったが、残雪期でもきっと登っている人はいるに違いない。夏の暑い日にここで大汗をかいたことを思い出した。
笠新道の登山口までくれば、最初の目標、ワサビ平も近い。程無くしてワサビ平に到着。夏にもなれば、小屋前の桶には冷たい水に浸かった野菜などがプカプカ浮いていて実に涼しげで、常に登山者で賑わっている。が、今は小屋も閉まっていて雪の中でひっそりとしていた。ここで、アイゼンを装着して先へと進む。
小池新道の入り口に到着。林道は橋を渡って先へと続いているが、ここからは小池新道に沿って雪原歩きとなる。川には雪解けの水がゴウゴウと音を立てながら流れていた。白山などでもそうだが、雪解けの水は本当に不思議なほど透き通った青い色をしている。
大規模な雪崩跡が目立つようになってきた。三途の川の様にデブリがあちこちに広がっている。そんな三途の川を半本か乗り越え雪原を進むと、右手前方に槍ヶ岳が見えてきた。鋭くとんがった槍の横に小槍もはっきりと確認できる。いつも遥か彼方にあった槍が今は目前にある。存在感がひしひしと伝わってきて、テンションも上がってくる。早く鏡平から真正面でその姿を捉えたい。そう思い足にも力が入るが、秩父沢を越えた付近からの急斜面がハードにのしかかってくる。秩父沢を埋め尽くすような大きな三途の川(デブリ)を避けながら急斜面へと取りつく。夏道でもこんなに急だったのかと思える斜面に、ザックの重さが半端なく、思わずへこたれそうになる。ふと、今は斜面が立ちはだかっているが、先ほどまで槍があった方角の空が、気のせいか淡く紫色に染まっている。「何だろう?」と思いつつ歩いていると、その数分後、仲間の「うぉー」という声とともに判明する。先ほどの方角を見上げると、太陽を囲むように2つの大きな虹の輪っかが出現している。ブロッケン現象だ。急いでカメラを持ち出してシャッターを切る。うまく写ってくれるといいが。ブロッケン現象はその後も長く続き、最後にもう一度空を虹色に染めて消えていった。
秩父沢から急斜面を登りきると再び大きな雪原に出る。鏡平はその雪原の突き当りにある壁を乗り越えた先にある。雪原の周囲は壁に囲まれているため、今は眺望がないが、鏡平に入った瞬間、最高の景色が飛び込んでくるはずだ。そろそろザックの重さで疲れも出始めているが、それを楽しみに足を前へと送り出す。
が、壁と表現した最後の斜面が思いのほか、しんどかった。新雪が沈み込んで、踏ん張る力が逃げていくため、必要以上に体力を消耗する。よくよく考えると、ここまで予想していた以上に時間を要してしまったので、昼時をすっかり逃してしまっている。いわゆるシャリバテだ。
「休みてぇー」と叫びたくなった時に、いよいよ斜面の最上部が見えてきた。周囲の視界が開けていくのが分かるが、あえて登り切るまではと、視線を足元に集中して周囲の景色が目に入らないようにする。足元が完全に水平になるかならないかで、心の高まりが抑えきれず、「1、2、3」と数えながら顔を上げる。
一瞬の沈黙の後に遅れて「うぉおおおっ」と声が漏れる。本当に感動した時は声を出すことさえ忘れてしまう。道中で見た槍も近かったが、こちらはまるで手が届くようだ。しかも、真正面に威風堂々とそびえている。感無量。来てよかった。
落ち着いてからテントの設営に入る。鏡平の名物、逆さ槍が映る鏡池も今は雪原となっていて、地面と池の境目もつかない。設営場所を探してウロウロしていたら、雪の中に一部だけ露出した朱色の人工物を見つけた。近寄ってみるとどうやら屋根の角らしい。それもよくよく見て屋根と気づくレベル。あの2階建ての大きな鏡平小屋がすっかり雪に埋まっているということか。地上にはすっかり春が来ているというのに鏡平はまだまだ分厚い雪の世界だ。
場所を定めてテントを設営。雪景色の中にあるテントと槍の構図がかっこいいので写真を1枚。同じような構図なのだが、槍が見えるだけでつい嬉しく写真が増えてしまう。
テント設営後に弓折岳へアタックする予定だったが、到着がすっかり遅くなってしまったので、アタックは明日の早朝に再セットとした。そうなるとあとは宴会モードだ。さっそく、スコップを持ち出して、雪を掘りテーブルと椅子を作成。テーブルに鍋敷きとコップを並べると、ものの10分ほどでBar-YARIが完成した。
持ち寄ってきた水餃子や鍋料理に舌鼓を打ちつつ、ワインで会話も弾む。去年の同じ時期にも妙高でBarを開催したが、やはりこの時期の雪中キャンプは最高だ。気が付くと、酔いが回ったのか、はたまた雪焼けか、みんなの顔が真っ赤になっていた。
いい感じでお腹もいっぱいになったころ、夕方も迫り気温が下がってきたので、早めの就寝とする。空には雲がせり出していたので、今日の星空は残念ながら期待できないだろうとか考えながら夢うつつとなる。
前日の駐車場での野宿があまりにも寒かったため、防寒着を余計に持ち込んできたが、意外にもテントの中は快適でぐっすりと熟睡できた。
明け方、トイレに行きたくなり目を覚ますと、パラパラと音が聞こえた。どうも雪が降っているようだ。積もる気配はないが、少し風も交じっている。3時半に起床して弓折岳を目指そうと思っていたが、暗闇の中でトレースの無い状態ではさすがに危険かと思い、明け方までシュラフに潜り込むことにした。
4時頃、ほんのりと空が明るくなってきた。いつの間にか雪もやんだようなので外に出てみる。テントの中にしまい忘れた靴ががちがちに凍っていてうまく履けない。
ファスナーを開けてテントを飛び出ると、明るくなりつつある空に鋭くとがった槍のシルエットが見えた。槍の左横がひときわ明るさを増している。まさにそこから太陽が顔を出そうとしている証拠だ。
いつの間にか、全員がテントを這い出して、日の出を今か今かと待ちわびている。
振り返ると、弓折岳の山頂が陽が射して来た。頂が赤く染まっていく。モルゲンロートだ。そして、遅れて槍の横から眩しい光とともに太陽が顔を出してきた。一日が始まる。太陽の光が弓折岳の山頂から駆け降りてきてテント場の鏡平まで届くと、先ほどまで肌寒かったにに一気に暖かくなる。太陽の力はつくづく偉大だ。小屋を埋め尽くすほどある雪もこれから夏にかけて一気に溶けていくのだろう。
昨日の鍋のあまりを使って、朝食をとる。コーヒーを飲みながら、名残を惜しみながら槍を眺める。名残惜しいが、名残惜しいからこそまた来たくなる。また、いろんな山に登りいろんな風景を見たくなる。山はやっぱりいい。次回の山旅に思いを馳せて鏡平を後にする。

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装備・携行品

みんなのコメント

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  • Yamakaeruさん、初めまして

    苦しい斜面を一歩一歩登り、視界が開けた時の感動を追体験させていただきました。
    暈や環水平アークは、北アルプスでも見られたのですね。

    私もこの日、関東で太陽柱を見ることができました。

    仲間と憧れの山々に囲まれて雪中キャンプなんて素敵だなあ

  • すてぱんさん、コメント有難うございます。夏とはまた違った違った鏡平からの槍ヶ岳の風景。仰る通り双六や北穂等名だたる山に囲まれて幸せな平成最後の登山でした。

  • あんなに寒かったのに、あんなに辛かったのに、また行きたいと思ってしまう今日この頃ですね。

  • アイゼンの手入れをしながら同じ事を思っている今日この頃です、、笑

  • 最高のロケーションでの雪上キャンプ本当に楽しかったです。来年も雪上キャンプよろしくお願いします(^^)

  • 想像していた以上の景色でした。最高の景色と最高の仲間と最高のご飯。もういう事ないですね。しかし、ここ最近、体力が落ちているので、トレーニングします。^_^

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