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西穂高岳~ジャンダルム~奥穂高岳 ワンデイ スクランブリング 上高地発・着

西穂高岳、ジャンダルム、奥穂高岳( 北アルプス・御嶽山)

パーティ: 1人 (加藤キーチ(モンターニャ) さん )

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行程・コース

天候

曇天。正午まで雲量は多いものの高いため展望あり。以降はガス、16時半ころに回復。

利用した登山口

上高地バスターミナル  

登山口へのアクセス

その他: ■行き(前夜20日)
渋谷マークシティ22:00(アルピコ交通2551便)~翌05:20上高地バスターミナル
■帰り(翌日22日)
上高地バスターミナル07:50~08:55新島々駅09:22~09:55松本駅10:10(あずさ12号)~12:33新宿駅

この登山記録の行程

上高地バスターミナル(05:56)・・・田代橋・・・西穂登山口・・・上高地・焼岳分岐・・・西穂山荘(07:40)[休憩 40分]・・・西穂独標(08:48)[休憩 10分]・・・西穂高岳(09:46)[休憩 20分]・・・天狗のコル(12:02)[休憩 20分]・・・ジャンダルム(13:50)[休憩 15分]・・・奥穂高岳(15:24)[休憩 10分]・・・最低コル[休憩 10分]・・・紀美子平(16:55)[休憩 10分]・・・岳沢パノラマ[休憩 10分]・・・岳沢小屋(18:44)[休憩 10分]・・・河童橋[休憩 5分]・・・上高地バスターミナル(20:20)

コース

総距離
約15.7km
累積標高差
上り約2,245m
下り約2,245m
コースタイム
標準19時間
自己11時間44
倍率0.62

高低図

標準タイム比較グラフ

GPX ダウンロード KML ダウンロード

登山記録

行動記録・感想・メモ

(20210802 追記)
>昨日おなじコースを歩きなおして、当記録がいかにいい加減かを実感しました(笑
ルートの細部に関してはまったくアテになりませんから参考になさいませんように。ただ、初心者ハイカーが穂高の山々に挑む緊張感だけはこのとおりかと思います。<

山登りを再開したとき、ジャンダルムをひとつの目標にした。基本になる山体力をつくること、足さばきと重心の移動をスムーズに行えるようになること、岩場に慣れることを念頭において2月から毎週のように山行を繰り返した。いっぽうでwebの記事や動画を参考にして山行のイメージををつくりながら、「イメージから外れたケース」への対処も考えた。
夜行バスのチケットはずいぶん前に取ってあり、しかし梅雨時にプランを決行できるかどうかはわからなかったが、直前の複数の予報が「曇天だが大きくは崩れない」と出たため準備を整えて出発した。
これまで山行はすべて「ハイキング」に分類してきた。けれどデイ・ハイカーが穂高の山々の胸を借りるのに「ハイキングに行ってきます」はさすがにない、だろう。北米では、ロープは必ずしも必要ではないが部分的に手を使わなければならない山行を「スクランブリング Scrambling」と呼ぶそうで、今回はそれに倣うことにした。
https://ymtours.exblog.jp/26402046/
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【アプローチ】
○ 渋谷マークシティ発のアルピコ交通2551便「さわやか信州号」の運行は、じっさいには東急トランセ。おそらく車体が古くサスがへたっているのか、路面の段差を拾って振動がひどかった。歩いてバス乗り場まで行けるので便利だと思ったのだが、次回の選択はない。
○ 05:20上高地バスターミナル着。ハードな山行に備えて荷物を軽くするため、帰りの着替えなどを上高地の手荷物預かり所で預かってもらう。営業は06時からとあるが、20分前には開いていた。市営の売店と食堂もおなじころに営業を始めている。
https://www.kamikochi.or.jp/article/show/45
○ 上高地から西穂山荘まではごく一般の登山道であり、1時間40分ほどで着いた。軽く食べ、ここが最後となるトイレを済ませ、カメラをヘルメットに装着したりしながら最終の準備を行う。
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【プロローグ】
○ 山荘から丸山を経て独標へ。山荘から独標もしくは西穂をピストンしたのだろうか、多くの女子を含む複数の団体さんとすれ違い、独標のピークで一緒になる。全員ヘルメット着用、若い人が多い。おそらくこの日、当方がこの稜線上ではいちばんの年寄りだったろう。
○ 独標から先がやや険しくなる。独標を11峰として8峰がピラミッドピーク、4峰がチャンピオンピークと数を減らしながら小ピークを越えあるいは巻いてゆく。初心者らしい女子をサンドイッチにしたハーネス着用の3人パーティの後ろにしばらくついて、足の運び方の勉強をさせてもらった。
○ 西穂高岳には09時46分到着。ソロ男子が3人先着しており、しばらくして3人パーティも上がってきた。少しおしゃべりしながらこの先の稜線を眺めるが、人影がまったくない。みなさんここで引き返すと言う。「奥穂まで7時間とか10時間とか聞きますよ。この時間じゃあ」。そのとおりで、まあしかし、他人の計画は他人にまかせ、自分は自分のプランを実行しよう。そうは思いつつも後ろ髪を引かれる思いで間ノ岳方向へ降りはじめると「おっ!」「お気をつけて!」と声をかけてもらった。
○ 多くの記録は西穂までが序盤であり、そこを離れて間ノ岳へ向かうところから核心部が始まると記述している。しかし間ノ岳までは、独標から西穂までと難易度がなんら変わらない、というのが実感だった。間ノ岳山頂に10時50分着。この稜線上では唯一のパーティとすれ違う。いかにも山慣れした感じの男性は朝5時に奥穂を出発したという。「もう一人、上がってきますから。ジャンダルムで長めにお茶をしちゃって」ずいぶん時間がかかっている、とのことだった。しばらくして女子が大きなザックを背に上がってきたが、顔にまったく表情がない。相当疲労しているようであり、この先の困難が思いやられ、こちらもひどく緊張した。
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【核心部】
○ ここから先の記述には、曖昧な点や時間的に前後することがあるということを了承のうえでお読みいただきたい。単独山行でありかつ狭い岩稜帯の通過が多かったから、手はもっぱら岩をつかむのに忙しく記録を取りにくかったこと、なんといっても緊張感のギヤがいつもとは違うレベルに入っていたことが大きい。
○ よく難所のひとつとして紹介される「逆層スラブ」だが、特に問題はなく難所の印象はない。ペンキマークの矢印にしたがって鎖場下部に移動し、鎖と若干のホールドをたよりに上がることができた。
○ 天狗ノ頭からの下り、天狗のコルまでが非常に悪かった印象が強く、これが他の記憶を圧倒している。ペンキマークが稜線を外れて巻く方向につけられ、導かれると岩壁の上に出る。まさかここを降りるんじゃないだろうと確認すると、岩壁下にもペンキマークが見える。ここがルートだ、と言っているらしい。頼りの鎖がない。どっかにあるはずだろうと角度を変えて確認するが、ないものはない。ここまで鎖があって、ここに鎖がないって冗談でしょ~、と緊張をほぐすつもりで口に出しながら、見える範囲でホールドとスタンスの目処をつけ、降りはじめてからは4点確保のまま体をひねって次のスタンスを探し、3点確保の姿勢で片足をおろす。こうした下降が記憶の限りでは2回か3回ほどあった。うち一回は天狗ノ頭からの降り以前、間ノ岳からの降りにあったかもしれない。×どれも高さはそれほどないのだが○どれもそれなりの高さがあるうえに(※訂正しました。20190921)、ハイカーはふだんクライムダウンなる姿勢をとることがほとんどないから非常に緊張した。
○ GPSのログを地図に落としてみると、天狗ノ頭からジャンダルムを越えるあたりまで、ずいぶんルートを探して迷っている形跡が残る。これも印象に残っているので書いておく。まず、ペンキマークは豊富にある。30秒間、ペンキマークが見えなかったら進行ルートを疑ったほうが良い、というくらいにたくさんある。にもかかわらずどう間違うかというと、たとえばこうだ。「ゴジラの背中のような」稜線を、直立した平べったい岩をひっつかんで進んでいる。途中まで丸印があったのに、しばらく進んでも次があらわれない。岩をひっつかんで戻ると、飛騨側の下方に踏み跡やペンキマークを見つける。巻き道への下降地点のペンキマークを見落としたのか、そもそもなかったのか記憶に残っていない。こんなこともあった。飛騨側を巻き気味に進んでいると、畳2枚ほどのひらべったい岩が2枚、重なっている場所にでる。飛騨側を巻いてきたんだから、引き続き巻くんでしょ、と横を進んでも次のマークがあらわれない。行きつ戻りつしながらもしやと思って岩の上によじ登ってみると、ペンキマークは信州側に進むようにつけられていた。
○ 浮石、動く岩にも要注意だ。ゴジラの背の、軽自動車のドアほどもある平べったい岩をつかむと「ゴトリ」と音をたてて数センチ動く。動くな!きみは動かんでいいから!と声を出して笑ったが、こうでもしていないとやってられない。
○ 散々に苦労しながら13時43分にジャンダルムの基部にたどり着く。「オクホ」へは鎖で少し登ってから信州側を巻く、「ジャン」へは飛騨側へ進む。このペンキマークにしたがい、あとは適当にルートをとってジャンダルムの頂に立った。13時50分。ここまで西穂からちょうど4時間かかっている。
○ GPSのログによれば、ジャンダルムからおなじルートを降りてふたたび基部に立ち、こんどは信州側の巻き道をたどって奥穂に向かっているが、100メートル進んだところでルートを探して20分ほどうろついている形跡がある。が、前述した道迷いのひとつなのか、どこをどう迷ったのか定かではない。
○ 15時06分、奥穂への最後の難所「馬の背」にたどりつく。動画サイトではさかんに「墜ちたら死ぬ~」とか「怖いよ~」と大騒ぎしながら通過しているムービーがあるが、そんな悪場ならここまで山ほど体験している。馬の背は進路が明確でホールドもスタンスもわかりやすく、むしろ筋が良い。「逆層スラブ」に次ぐハテナつきの難所だと思ったが、高度感があるのはたしかなので3点確保で着実に進む。
(【馬の背通過】参考動画)https://www.youtube.com/watch?v=XzEnPq2ijQY
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【エピローグ】
○15時24分、奥穂高岳山頂着。西穂から5時間20分。ガスでまるきり展望がない。視界がないなかで見かけたのはロープ装備のペアと空身の男子ひとり。静かな山頂で風の音を聞きながら、これからどうするかを考えた。
プラン1、奥穂高山荘へ降る。30分ほどの距離だし、運が良ければ夕食にありつけるのではないか。まず常識的に考えてそうすべきプランだ。だがこれは選択しない。
プラン2、吊り尾根から紀美子平を経て重太郎新道を下り、岳沢小屋へ。標準コースタイムで4時間弱、「要予約」としている小屋だし夕食は無理だろうが、カップめんと缶ビールくらいあるだろう。明日いちばんのバスで松本まで出ることもできる。
プラン3、岳沢小屋を経てさらに上高地まで下る。途中でヘッドランプをつけることになるだろうが、岳沢小屋からはそれも難しくなさそうだ。
○ むかしむかし偉い人が「男ならたとえドブの中でも前のめりに斃れたい・斃れるべきである」みたいなことを言ったとか言わないとか。デイ・ハイカーなら一歩でも家に近づくように努めるべきではないか。
結局、プラン2と3を折衷して歩きはじめる。岳沢小屋に明るいうちに着くことが第一、小屋で様子を確認してOKなら上高地まで下りることにする。吊り尾根に入ってすぐ、二羽の雷鳥と追いかけっこをする。登山道上をずっと逃げ続けるので5分近くもユーモラスな姿を後ろから眺めることができた。最後は短く飛翔して谷側に逃げていった。
https://www.youtube.com/watch?v=QyMKToNqQ-0
○ しばらく下るとガスが切れ、谷側の眺めがすばらしい。岳沢小屋から梓川までが遠望できる。ところどころ高度感があり、ガレているのでスピードは上がらないし、緊張を強いられる岩稜ルートをやり終えて頭が疲れてしまっているのでモチベーションも湧いてこない。事故をおこさないよう心がけて、淡々とゆっくり足を動かす。
前穂高岳がずいぶん高いところに見える。紀美子平ではほとんど頭上はるか上にあるように見えるのだが、「奥穂より前穂のほうが難しかった」というどこかの山行記録を思い出した。紀美子平から前穂までコースタイムは30分とあるが、これは非常に疑わしい。いずれにせよ、今回は残念ながらピークを踏むことを諦めねばならない。そんなことをしていると本当に遭難する。
○ 16時55分、紀美子平。重太郎新道を降りはじめる。この道は傾斜がきつく、梯子や鎖がとても多い。テント装備で上り下りするのはさぞかし大変だろうと思う。途中でジグザグに下るようになり、近くに見える岳沢小屋は夕食が終わって消灯前なのだろう、小屋外のテラスで談笑する人たちさえ見えるのになかなか近づかない。小屋手前の水場の水がとても冷たく、生き返ったような気分になった。18時44分、まだ十分に明るいうちに小屋着。上高地まで「ヘッドランプの灯りでも問題ないはずですよ」と小屋番さんから確認をとり河原の石の頭を跳びながら歩き続ける。赤旗を目印に登山道に入り、19時過ぎにヘッドランプを点ける。道に迷うような場面は一箇所もなく、風穴の前をとおり、やがて木道が多くなり、遊歩道に出る。
○ ホテルのダイニングのきらびやかな灯りの中で、客たちがワイングラスを傾け黒服がきびきび立ち働くのを眺めながら、かっぱ橋を渡って20時20分に上高地バスターミナル着。この時間、外との出入りを遮断された上高地に人の気配はない。店も終わり、街灯ひとつない。一台きりの自販機で飲み物を買い、非常食のカロリーメイト4本を食べてから、適当なベンチに横になった。真っ暗闇で鳴く鳥がいる。どうしてこんな時間に鳴くのだろうと不思議に思いながらも頭の芯から疲れを感じ、ずいぶん深く眠った。

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装備・携行品

【その他】 サレワのトレランシューズ。テスラのタイツ、ユニクロのショートパンツ。行動中は全行程マウンテンハードウェアの長袖、滑り止めのついた軍手、ペツルのヘルメットにはOzmo Pocket装着。ザックはロウアルパインの22リッターに、雨具・ロールペーパー・ヘッドランプ・バッテリー充電器と予備電池・カロリーメイト2パック・トレイルミックス300g・ココヘリ発信機・地図・ユニクロのライトダウンなど。キャメルバックのハイドレーションに薄めのアクエリアス2リッター(残量250cc)。スタート時重量7kg。

みんなのコメント

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  • 西穂高岳山頂でお会いしました!「気を付けてー!」といった本人です。
    単独で間ノ岳方面に向かわれたので心配しておりましたが、無事奥穂高まで越えられたんですね、荷物少ないなーと思ってましたが、まさかの日帰りだったんですね@@;
    このコースを日帰りで周回されるとは、凄い健脚です!

    次回、西穂高行くときは私もジャンダルムにチャレンジしてみようと思います!
    記事参考にさせていただきます!^^

  • >明日から本気出す! さん
    おお!
    西穂の山頂で声をかけてくださってありがとうございました! 一人のうえ難コースだし稜線に人影はないし、なのでじつはかなり心細かったのですよ。励ましに押されてなんとかジャンダルムを越えることができました。
    記事にも書きましたが、天狗ノ頭からジャンダルムを越えるまでがルートを求める上でも岩稜の登り降りにしてもたいへん難しかったです。ご参考になれば幸いです。
    またどこかでお会いしましょう!

  • モンターニャさんのジャンダルム手記、とても参考になります。自分も50代、奥穂から西穂縦走を目標としているデイハイカーです。モンターニャさん目指して精進し、何とか来年ぐらいには挑戦したいと考えております。

  • >シャドウさん
    参考になるのでしたらとてもうれしいです。歩き通す基本は山体力=速さにあるかと思います。
    同世代とのこと、計画は緻密に・現場では大胆に行動してはいかがでしょう。この稜線はやはり別格でした。

登った山

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